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姫様、魔王様!  作者: 煌黒星
1/5

プロローグ

「くっ!どうやら一筋縄じゃいかなみたいだね......どうするものか。」

今の俺は、魔王城の外壁の中にいる。

ここへ来た原因は一つだけ、攫われないようにさっきにやつけることだ。誰を?そりゃあ魔王に決まってんだろ。昨日の朝、届いてたんだ、魔王からの手紙がな。


「じきに来るだろう、王女が攫われることを......気長に待つがよい、王様よ。」


ふん!ふざけやがって。誰がアンタなんかに攫われるのか。

俺は、この俺「プリスティン=クリティフス」はそう簡単におめぇのような臆病者に攫われねぇよ!

「誰だ、そこの者!」

「くっ、バレたか!」

俺としたことか、まさかバレてしまったとは......致し方ない、殺すか。

「これはこれは、プリスティン姫じゃありませんか。」

ん?やけに友好的じゃん、これなら最初から潜入しなきゃよかったかもしれないね。

「そうよ、プリスティン=クリティフスだ。魔王に会わせろ。」

「それはできません、どうかご了承を。」

「なんでだ、俺を攫いたいくせに。俺が直々に来たんだぞ、攫う手間を省けたじゃねぇか。」

「それはうれしいでございますが......」


ーー!

シュッ!兵士の右ストレートを避けた。

危なかった、あれに当たったら俺の玉肌がどうなることか......まぁ、肌とかあんま気にしてないが。

「どういうつもりだ。」

「どういうつもり?簡単なことだ。ここであなた方をーー」

「ふん!」

シュッ!ズブッ。手にしてたダガーで兵士の体を刺した。

俺をどうしたいかはわからないが、先にやらなきゃ戦士としては失格だ。

「ブハッ!」

血を吐いた彼の首に、さらに一撃を。

......

「これで良し、かな。」

あれを片付いてから、俺は魔王城の中に潜入しようとした。

と、そこで気づいた。こいつの鎧着ればいいのではないかと。

サイズはあんまり合わないが......まぁ、何とかなるだろう。どうせ夜だし、あんまり見えないはずだ。

「おいお前、そこで何をしている。」

「お前?」

着替えが完全に終わる前に、別の兵士が俺の存在を気づけた。

「口を慎め、俺は王女だぞ!」

さっきの兵士の剣を取って、斬りかかった。


「いたぞ、こっちだ!」

なんということだ、台無しじゃねぇか、何もかも。

最初は静かに潜入して、ささと魔王を殺して帰ろうとしてたのに、大騒ぎになってしまった。

「邪魔だ、魔王に会わせろ!」

「クフル様に合わせる訳ないだろ、曲者が!」

キン!キン!剣と剣が斬り合って、音を響かせた。

曲者だと?なんと無礼なものだ、俺は王女だぞ!

それに、お前らが攫おうとしてた王女が直々に魔王に会いに来たのだ、感謝してほしいものだ。

「俺は曲者じゃねぇよ!」

「黙れ!曲者め、成敗してやる!」

「俺は王女だぞ、口を慎め!」

ブシャーと、首から血が大量に噴出した。

まったく、今頃の若者は......王女に対してなんて態度だ。

やれやれと、首を横に振ってる間に、それが起きた。


ーー!

「さすがはクリティフス族の王女様だ、よく避けれた。」

「魔将軍グランバール!」

俺に斬りかかった者がグランバールとは、これは驚いた。まさかあの名高きグランバールがこんな小癪な手を使うとは。

魔将軍グランバール、うちでは闇の騎士様とまで呼ばれた存在だ。そんな「騎士様」が俺のようなか弱い女の子に剣を振るうなんて。

「クフルに会わせろ、それか俺を攫おうとした理由を教えろ!」

「それは無理なご相談だ、どうかご了承してください。」

「なぜだ。」

「これも機密なので、ご了承くっ」

「はーー!」

シュー、カン!

「なっ!?」

剣が、はじかれただと!?

「話を聞いてください、姫様よ。」


ちっ!

なんて屈辱だ、まさかただ防いだだけとは!

「なぜ切らない!」

「あなた様には大事な役目がございますので。さぁ、剣を納めて、話を聞いてください。」

「言わないのがそっちだけど?」

シュー、カン!

また!?

「これは......少々痛まないと話を聞いてくれそうにないな。」

「痛まないと話を聞かない?すまんな。」

シュー、タ。

距離を取って、また剣を構えた。

「何されても話を聞くつもりはねぇよ。かかってこい、このクズが!」

「やれやれ、致し方ありませんね。」

そして、あいつも剣を構えた。


......


「はぁ、はぁ、はぁ...」

くそ、いてぇな、まさか左腕が斬られたとは。

あいつの強さは尋常じゃない。さすが魔将軍といったところか。

とにかく、運よく倉庫に逃げ込んだから、しばらくここで......

「誰ですか?」

「ッ!」

ここは倉庫......いや、違う、ここは!

暗闇の中で一人の少年がキャンドルを灯って、俺のそばに来た。

ここはたぶんこの少年の寝室だろう。外は大騒ぎなのに、よく一人で居られるな。

「近づくな!」

手を振り上がりたいが、どうも力が入らない。切られた左腕から血が流れ出してる。

「ヒ、ヒドイ怪我!ど、どうしよう......」

「近づくなっていってるだろうが、これ以上近ついたらーー!」

「光の聖霊よ、我が盟約に従い......」

「詠唱するな、このっ!」

......いや、待て。

光の聖霊?こいつが?こいつは角も生えてる、背中にも魔族の翼がある。どう見ても魔族なのに光の聖霊と契約を......?俺でさえできない、光の聖霊と契約を?

「腕がーー!」

生えってきた。文字通り、左腕が生えた。まだ力が入らないが、これで少し......

「お前は何者だ、少年。」

「僕ですか?僕はラス!ラス=クフルです!お姉ちゃんは?」

「俺は誰でもいいだろ、どうせお前はすぐ死ぬさ。」

「え、死ぬの?なんで?」

剣を掲げて、振り落とそうとしたが振り落とせなかった。

ラスと名乗ったこいつは怯えながら、こっちを見てる。

「僕を斬りたいの?なんで?僕、何かしたの?」

......

こいつが俺を攫おうとした魔王とは思えない。だけど、ラス=クフルはこの魔王城の主のことは間違いないはずだ。

でも、こいつが?こいつが俺を攫おうとしてたの?今も泣き出しそうなこいつが?ありえないとしか思えない。

じゃあ......一体......


「クフル様、大丈夫ですか!」

扉が破られて、兵士どもが入ってきた。

「ちっ!」

「逃げるぞ、少年!」

「え、なんで?なんで逃げるの!?お姉ちゃん悪い人だったの!?」

「いたぞ!こっちだ、クフル様の部屋だ!」

「皆助けてーー!」

何をやっているのだ、俺は。

なぜこいつを連れて逃げ出そうとしてる?

なぜこいつを抱えて窓から飛び出そうとしている?

なぜこいつ......ほっとけないのだ?


「うわああああああああ、助けて皆!」

「うるせぇよ、騒ぐな!」

「僕なんかしたの?どうしていじめるの?いじめないでよ、うわあああああああああ!!」

「いいか、小僧。」

「小僧じゃない、僕はラスだ!」

「うるせぇ黙ってろ!」

「ヒッ!」

「今日からてめぇは俺のものだ、文句を言うな。」

「いやだよ、返してよ!うちに返してよ!」


そして、なぜだ?

なぜ王女である俺が、魔王であるこの小僧を攫ったのだ?

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