表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/17

一難去って、また一難

グチュ、グチュ・・・ギィッ、ギィッ


妙な音と、甲高い鳴き声で目を覚ます。


・・・ここは?


確か、僕はワームに飲まれて・・・助かった?


視界が悪く、身体が圧迫されている感覚の中、僕は思考を続けた。


僕を圧迫している何かを押してみても、弾力に跳ね返される。


少しの間押し続けていると、一番脆い、柔らかい部分を発見した。


ぐっ、ぐっ、と、何度も押し、身体を圧迫していた何かが破けるようにして、開いた。


そして、目の前に広がった光景は。


アリのような、僕の身体よりも大きな軍勢が。


僕を今まで圧迫していたモノ、ワームを貪っていた。


ひっ・・・と、喉から声を上げる・・・感覚に、陥った。


喉があれば、バレていた。口の無い身体で、助かった。


大量の冷や汗を流しているのではないか、という程に心臓の鼓動が高まる。


気分が悪くなり、眩暈がしてきた。


だめだ、だめだ。落ち着かないと・・・!


何故、何故こんなに絶望的な状況が、続くのだろう。


弱い自分は、食べられるしかないのか。


今はまだ、何とかバレていない。このアリたちは何匹かは胴体を齧っているものの、ほとんどは頭や尻尾のほうを重点的に食べている。


そして音から察するに、僕の上、ワームの上にも、アリが乗っかって、ワームを食べている。


自分の運の無さに泣きたくなりながらも、ゆっくり、バレないように、自分の身体がこの破れたワームの身体から抜け出せるくらいまで、ワームの身体を破っていく。


そして。バレているのか、バレていないのかは分からないが、通れるかな、と思った瞬間。僕は一気に動き出した。


冷静さが消え、焦り、恐怖等の感情に思考が埋め尽くされていくのが分かる。


速く、一刻も早く、ここから逃げ出したい。


振り返るな、振り返るな、道中のアリに意識を向けるな、と、一心不乱に駆け抜けた。


横から、アリが僕の身体を齧った。


人間部分でいう、腕が千切られたかのような、激痛。


その余りの痛さに倒れこみそうになるも、何とか踏ん張り、駆け抜け続ける。


脳裏に浮かぶ、一筋の不安。


アリの巣。アリの巣とは、迷路のようになっている。


行き止まりが幾つも存在し、最悪・・・女王蟻の居る部屋へと入ってしまえば、それはもう地獄。アリの大群が、存在しているのだ。


この状況で、行き止まり、もしくは・・・女王蟻の部屋に突入してしまったら・・・


それはもう、完全に、どうしようもなく、死の運命しか待っていないだろう。


目があれば泣きたい。口があれば喚きたい。手足があれば、暴れまわりたい。


今まで感じたことも無いような、このぐちゃぐちゃな感情を孕んだまま、僕はただ、生きるために・・・駆け抜けた。











フラフラと、何かが、飛んでいた。


いや、浮かんでいる。


落下したと思えば、再び浮き上がり・・・


それはまるで、弱りきっている蝶、虫のような、動きだった。


白い靄のような存在、丸かったその身体は、最早ボロボロで、動きを止めてしまえば、生きているのかさえ分からなくなる程。


そう、僕は。死の一歩手前で、何とか、アリの巣から逃げることが出来たのだ。


幸い、行き止まりにいく事もなく、女王蟻の部屋に突入することもなく、一直線に巣を抜けることが出来た。


まっすぐ進んできた訳ではなかった。


進もうとすれば、猛烈ないやな予感が身体を駆け巡り、強引に身体を右方向へと進めたり。


本能に身を任せて、無心で、我武者羅に、進んできた。


そうして、脱出することが出来たのだった。


植え付けられた、死の恐怖。


虫とは、こんな過酷な世界で生きていたのか。


朦朧とする頭で、そんな事を考え・・・地面に落下していき、着地する。


ああ、逃げ場が、もう・・・無い。


空へと浮かぶ力さえ、失ってしまった。


アリが、蜘蛛が、ワームが・・・その他諸々、見たことも無いような生物まで、この森を闊歩している。


どこに隠れれば、見つからない。


どこに逃げれば、安全なのか。


何が襲ってきたとしても、ソレに勝つ力は・・・僕が万全の状態であったとしても、無い。


人間だった頃なら、目を向けたとしても、すぐに興味を失ってきた。


小さな、小さな存在。気づかぬ内に踏んでしまい、意図も容易くその生命を奪ってしまう程に、小さな存在。


そんな存在が今・・・こんなにも、大きくなっている。


そして、今だからこそ、分かる。


虫たちは・・・そこら中に、存在しているのだ。


草に擬態しているカマキリのような虫。


それを上から狙うトゲをもった蜂のような虫。


数匹のアリと奮闘しているワーム。


大きな虫を運んでいるアリの軍勢。


糸を張って獲物を待ち構えている、蜘蛛。


それだけでは、無い。


ここには、それよりも更に巨大な生物が居る。


鳥や、魚、そして僕を簡単に殺せる虫たちを、遊び心で踏み潰せる程の存在、動物が、存在している。


死の運命しか待っていないような、この森で。


僕はどうすれば、生き残れるのだろう。


自分の力量すら分からない。把握するために何かに挑む勇気等、有りはしない。


一目見ただけで、戦意が喪失するのだから。


相手の力も、分からない。弱い虫であっても、群れをなせば、自分の身体よりも遥かに大きな獲物を、狩るのだから。


単独で動くような虫に、勝てる筈が無い。


単独で動くような虫が、弱い訳が無い。


なのに、弱い僕は、独りこの世界に。この森に、存在している。


フラフラと動きながら思考を続け、何とか。


放ったらかされた死骸の前へと、たどりついた。


力を付けるために、食えと。本能が、僕に言う。


食べれば、力が手に入るのか。


それは、分からない。


けれど・・・この身体の本能・・・いや、遺伝子が、そう言っているのだ。


兎に角、生き残りたいのであれば。強くなりたいのであれば。あらゆるモノを、食い続けろ、と。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ