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第57話 「愛・生・疾・走」

今回は、尾上と愛生それぞれの視点で書いています。読む時はご注意ください!

はぁはぁはぁ……僕は屋上から逃げるように走っていた…。

朝比奈くん1人を…あいつらの目の前に置きざりにしてしまった…。僕は…何て事をしてしまったのだろう……自分の事だけを考え…自分だけが助かろうとして…あいつらの言葉を信じ…朝比奈くんを陥れようとしてしまった……何て愚かで最低な人間だ。それを分かっていながらも…朝比奈くんがすごく危険な状態なのに…それを分かっていながら、助けに行こうとはしない。…ただ、その場面から逃げているだけだった。


走ることに疲れて…足を止める。廊下の壁に背中を預けて、その場に蹲って……。


(ごめん…ごめんよ、朝比奈くん…。僕には…何の力もない……何も出来やしない…。こうやって…逃げる事しか…。)


僕は、悔しさと虚しさ…朝比奈くんへの謝罪の気持ちでいっぱいになり、涙がこぼれる…。



……だめだ、このままだと…何時もの僕のままだ!…朝比奈くんのように…そうだ、朝比奈くんが明るくなったように、僕も変わらないといけないんだ!!

僕は、朝比奈くんの事が羨ましく思っていた…『女の子』になった朝比奈くんが、日に日に笑顔が増えていき、明るく可愛くなっていく姿を…遠くからで眺めていて……いつの間にか…嫉妬へと移り変わっていた…。中学の…あの時の朝比奈くんがいなくなって、僕だけが取り残された気持ちになってしまって…。


(朝比奈くんには、取り返しのつかない事をしてしまった……今更だけど、何か僕に出来る事はないだろうか…急がないと!)


そう考えると、疲れているはずなのに…僕は再び走り出していた。朝比奈くんの教室、『1年B組』を目指して…。





(今頃、瑞樹は尾上くんと、どうなっているのかな?…う~ん、ホントに告白だったら……あり得ないな~あの尾上くんから…告白に至るまでの展開が予想できないな、うん。)


そんな事をあれこれ想像をしながら、ボクは自宅へ向かって歩いていた。久しぶりの1人での帰り道…いつも左側にいるはずの瑞樹がいないのは、少し寂しく感じてしまう……中学の頃は、そんな事を少しでも考えた事はなかったのに…何だろう?この気持ちは。



(尾上くんの手紙だったからな~知人だし大丈夫だと思って、瑞樹を1人にしてしまったけど……話の内容は何だったんだろう?気になるな…、一緒について行けばよかったかな?…うーん、今からだと行っても終わってるかも知れないしな…まぁ、明日、瑞樹に聞けば良いか。)


右手に持っているスマホで電話なり、アプリなりで瑞樹から聞くのは簡単だけど…『明日教えて!』って言ったしな~モヤモヤするけど…自分から言った事だし!そう思って、スマホを鞄の中にしまい込んだ時に…。



『……愛生…ちゃん』


ん!?今、瑞樹がボクを呼ぶ声が聞こえた気がするんだけど……辺りを見渡してみる…他の学年の生徒やサラリーマンの人はいるけど…瑞樹は見当たらない、ボクの気のせいだったかな?…瑞樹の事を考えていたから、呼ばれたような気になっていたのかも…ボク疲れているのかも。立ち止まっていた足を再び、動かして歩きだそうとすると…。



『…愛生ちゃん!』


はっ!?今度は、はっきりとボクを呼ぶ瑞樹の声が聞こえた。その瞬間、ボクの周りから、人が…建物が…風景が、色がなくなっていく…カラーからモノクロに変わっていき、さっきまであった周りから聞こえる人の声や歩く音が、街中の音がまったく聞こえなくなっていた。しかも誰も動いておらず…まるでボク以外の時間が止まったかのように…。


「え!?何だろう…これは!?……いったい何が起きたんだよ…。」



いきなり目の前の変化に頭が理解が出来なくて…キョロキョロと周りを見渡してみても、相変わらず時が止まったように、ボク以外は誰も動いていない…とても静かだった。うーん、どうしたものか…そう途方に暮れていたら、ボクの頭の中に…瑞樹や他の人の声では無く…どこかで聞き覚えのある女性の声が響いてきた。


『……あ…き…愛生…。』


その声と同時に目の前で、光に包まれている女性の姿が現れ始めた。…何だろう、一度も会ったことも話したこともない…はずなのに、何故かこの女性を見た覚えがある…話したこともある……だめだ、思い出せない…無理に思い出そうとすると…頭が痛くなる。そんなボクの姿を、その女性は優しく微笑みながら…。



『…愛生、今は、そんな事を考えている場合ではありません。』


「え!?どういうこと…って……何!?これは!!」


そう答えようとすると、頭の中に映像が送られてきた……空から地上を見下ろすような…まるでテレビカメラで撮っている映像のような感じで、徐々に映像が地上へと近づいていく…。

これは…ボクらの高校の屋上だよね?…あれは?瑞樹が見える…何故か屋上の隅で、その場に座り込んでいて…すごく怯えた顔をしている!?

え!?どういう事だよ…尾上くんは瑞樹に何をしたというのだろう…。そう考え込んでいると、映像の視点が瑞樹から瑞樹の目の前に切り替わる…。2人の姿が見える…誰だ?尾上くんでもない…。よく見てみると…え!?…こいつらは確か!!中学で瑞樹に色々とちょっかいを出していた不良組…。何で、この高校にいるんだよ??まったく今の状態が理解ができなくて、唖然としているボクの頭の中に…。



『…助けて!愛生ちゃん!!』


瑞樹が…ボクに助けを求める声が…頭の中に響いた!このままだと…瑞樹が危ないよ!!


『…愛生、瑞樹が…あなたの一番大事な人が、とても危険な状態にあります…。早く助けに行ってあげて!瑞樹を救えるのは…あなたしかいないのだから…。』



ボクの一番大事な人……そうだ、瑞樹は、ボクのもっとも大切で大事な幼馴染だ!ボクは大きく頷き…。


「任せてよ!瑞樹は…ボクが必ず助けるから!!……教えてくれて…ありがとう。」


ボクは、目の前の女性に頭を下げてお礼をする。そんなボクを優しく暖かい眼差しで微笑みながら、その女性が右手を空へ向けて上げると……ボクの頭上から光が降り注いできて…何だろう?その光はすごく暖かく…何だか力が沸いてくる感じがするよ!



その光が消えると同時に、周りの風景に色が戻っていく…人々の声や足音、すべての音が戻ってきた。目の前にいたはずの、光に包まれた女性も最初からその場所にいなかったのではないか?まるで夢を見ていた感じだった。…でも、先程の光を浴びた感覚は忘れていない…何所からかすごく自信があふれてくる!これなら何とかなりそうだ!!急がなくては!!!


ボクは、高校の屋上を目指して走り出した…。体が軽い…いつもより速く走れている…これならすぐに着くはずだ!待ってて、瑞樹!ボクが必ず助けてみせるから!!

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