第56話 「事・件・発・生」
尾上くんは私に近づくも…ある程度の距離を置き、誰かを待っているようだった。時折、屋上の出入り口の方に顔を向け、確認をしているようだった…。
突然の出来事に頭が混乱してしまい、私はその場所から動くことが出来ずにいる。…何故、こんな事になってしまったのだろう…私はどうなってしまうのだろう…。頭の中では『ヤバイ!逃げろ!!』と私に危険信号を出し続けているのに…恐怖と絶望の渦の中で、もがき苦しんでいるようだった。そんな私の様子を見て、尾上くんが…。
「…朝比奈くん、君は知っているのかい?あの2人がこの高校に在学してることを。」
「……え!?」
私は尾上くんの言葉に耳を疑った…この高校に入学して一月経とうと言うのに、一度も会った事も見たことが無い…。てっきりあの2人は、別の高校へ行ったのだとそう思っていた…私は解放されたのだと…あの恐怖の呪縛から。
「見たことないから、てっきりいないと思っただろう?僕はあの2人と同じクラスだからね……名前を見て絶望したよ。詳しくは知らないけど、入学当初、先輩たちに目をつけられて、ケンカになったらしい。かなり壮絶なケンカだったらしく、お互いに大きな怪我をして入院とその後、反省の意味を込めての自宅謹慎だったらしい…担当の先生がそう説明していたからね。」
私はあまりの衝撃な尾上くんの言葉を聞いて、何も言葉を発することが出来なかった…。淡々と喋る尾上くんの顔を見てみると…少し寂しそうな目をしながら…。
「…しばらくは平和だったさ…あの2人から少しでも解放されていたからね。でも、君と屋上で出会った日の事を覚えているかな?あの日から一週間前に……帰ってきてたのさ…あいつらが!」
「…え!?……でっでも、私…見たこと…ないし」
「…そうだろうね。学校に来ていても、授業はサボっていて…いつの間にかいなくなったりしてたからね…同じクラスの僕らでさえ、会わない日はあったぐらいだし。…でも、僕だけは違っていた……あいつら…学校へ来るたびに、僕だけを屋上に呼び出して……未だに根に持っているんだよ!中学での僕の行動が…気にいらないって!!」
「……」
私はどうしたら良いのだろう……尾上くんの語る状況が頭の中で理解してしまって、何も答えることが出来ない。こんなにも傷ついている彼の事をどうすることも出来なくて…。
この人も私と同じなんだ……中学の時からの時間が止まってしまっている…あの2人のおかげで、何も変わらず、前へ進んでいない事に。そう考えてしまうと…私の口から。
「…あの…ごめん…なさい……私の…せいで…その……」
「…僕は、朝比奈くんに謝ってほしいわけじゃない!……僕は解放されたいんだ…あいつらから!!だからお願いしてみたのさ、あいつらに…『中学の僕は、少しおかしかった…あの時の行動を間違っていたから、許してほしい』っと。」
「…え!?」
「あいつらは何処で情報を仕入れてきたのか…朝比奈くんの今の状況に興味を持っていたよ…アイツらが出してきた条件は……朝比奈くんを1人で屋上に連れてくること…だったんだよ。」
「そっそんな…」
「苦労したんだよ?…君は常に和泉さんと一緒だし、近くには植草くんや榎本さんがいるし…1人になるチャンスと言えば…屋上に1人で来ることぐらいだからね。…屋上で話しかけたのも、本当に君が、朝比奈くん本人かどうかを確認をしたかったからさ。」
「……」
早くここから逃げ出さないと……そう思うのだけど、体が…足が動かない。心臓は五月蠅いぐらいに鳴り響いているし、眩暈や動悸も酷い。
「…逃げようとしても無駄だよ、朝比奈くん。」
尾上くんがそんな言葉を告げたと同時に、屋上の扉が開いた…。
ガチャッ!!
「おい!尾上!!連絡遅すぎだぞ!?待ってる間、暇すぎて帰るところだったわ!!」
「…すみません、少し時間がかかりまして。」
「まぁ良い…それで、あの女が…そうなのか?」
「…はい。彼女が…朝比奈くんです、間違いありません。」
私の方を指差しながら、尾上くんと話をする2人組……もっとも私が一番会いたくなかった…不良の2人組。中学の頃の…あの恐怖が蘇ってくる…怖い…怖いよー!!
「それにしても…中学とは全然変わったな?これは…言われないと見ただけでは分からないぞ??」
「だな!この高校に、おかま野郎がいないと思ったら…そりゃ分かる訳はないわ!」
そう言いながら私に近づいてくる2人……いや…こっちに来ないでー!!
「しかしなんだな…高校生に見えないな?どう見ても中学だろ?この体形は。」
「ホントは男のままじゃないのか?女装してるとか…気持ち悪いだけだろ?」
「まぁそれは…見てみれば分かる事だろ?そのつもりだしな…。」
「そうだな、へへっ!これは…楽しみだな!!」
私の目の前まで近づいてきた2人…もう逃げられない!…私は怖くなって思いっきり目を閉じて蹲ってしまった。
「ちょっちょっと待ってください!矢城さん、葦原さん。」
そんな尾上くんの声がして、そっと目を開けてみると…尾上くんが2人に近づいて言い争っている。
「あ!?何だよー尾上!まだいるのかよ?早くどっか行けよ!!俺たちの楽しみを邪魔するのか?」
「いや…そうじゃなくて、やッ約束したじゃないですか?朝比奈くんを一人で屋上に連れてきたら…僕を許してくれるって。」
「そんなこと言ったか?…覚えてないな~矢城、そうだったか?」
「俺は一言も許すとは言ってないぞ?『考えてやる』とは…言ったけどな!くくく…」
「え!?そんな……約束が…違うじゃないですか!」
「五月蠅いぞ!?尾上!ぶっ飛ばされたいのか!?あー??早くどっか行けよ!!」
「ひぃぃー!?」
青い顔をしながら、尾上くんは…屋上の出入り口へ走り去っていった…。私は1人、屋上に取り残されたままで。
「さーてと…久しぶりだな、おかま野郎。今は違うのか?…まぁそれは調べれば分かる事だな」
「…いやっ…いやっ…こっちに…こないで…」
「どうもホントみたいーだな、この口ぶりこの震え方…あのおかま野郎…本人だな!」
「まぁそんなに恐がるなよ…今日はお前が女かどうか確かめるだけだからな!」
そう言いながら、座り込んでいる私に手を伸ばしてくる…。怖い…怖いよー!涙が止まらない…助けて!愛生ちゃん!!
申し訳ありません…ようやく話の展開が決まり、書くことが出来ました。
時間がかかってしまい…お待たせして、ホントにごめんなさいです!
最後までしっかり書き上げていきます!応援のほどよろしくお願いします!!




