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第54話 「手・紙・思・惑」

尾上くんの一件や、愛生ちゃんとのやり取りもあって、今回は悪夢を見ることが無かった…。私の中にあった嫌な気持ちが見事に吹っ飛んでいったみたい…みんな、愛生ちゃんのおかげだね!


そんな愛生ちゃんとの関係はと言うと…今まで通りで特に変化はなかった。相変わらず愛生ちゃんは意地悪で、私がいつも怒ってたりするんだけど…それはそれですごく心地良いと感じていた。中学で離れかけていた距離感が元に戻り、私はそれで満足をしていた。多分、愛生ちゃんもそう感じていると思う。今日も普段通りに登校してきて…ホームルームまでの間、愛生ちゃんと雑談をしていた…。



「瑞樹~ちょっとこれ見て…」


「ん!?何?」


愛生ちゃんが握った右手を私の方に伸ばしてきて、手を開く…え!?手の平に大きなクモが!?


「きゃあぁぁぁぁ!クモ!クモーー!!虫いやあぁぁぁぁー!!!」


「あははー瑞樹、良ーく見てごらんよ?」


「いやあぁぁー!近づけないでよぉ!!……へ!?」


その大きなクモをよく見てみると…動いていない?しかも…だんだんオモチャの様に見えてきて…。


「……これって、オモチャ…なの!?」


「うん、良く出来てるだろう?面白グッズ第2段!クモのおもちゃ…スパイダーくんだ!!」


また面白グッズなのね…相変わらずネーミングはそのままだし!何のために持ってきているのよ…そのオモチャは!?…しかし、良く出来ているよね、このオモチャは……すごくリアルで見てるだけでゾワゾワするよ!触りたくもない。


「わっ分かったから!そのクモのオモチャ近づけないでよ-!!気持ち悪いーー!!」


「あははー」




相変わらずの2人のやり取りを見て…はぁ~いつも何をしてるんだか……やっていることは、子供のじゃれ合いだよ!…植草くんとそんな話をしながら、お互いため息をつく。

中学から何も変わっていない…いつもと変わらない2人。2人が仲良いのは、とても良い事ではあるんだけど…お互いに性別が変わったことで、何らかの進展があると期待をしていた…だけどね。


「しかし…あれだな。ホントに何も変わっちゃいねーな。」


「ホントだよね……今まで進展がなかった2人じゃない?この機会に…うまくいって欲しいよね。」


「何て言うか…お互いに鈍いって言うのか、あまりに近づきすぎて…そう言う対象に見えてないんだろうな。」


「…かも知れないね……そう考えると幼馴染みってさ、すごく面倒くさい関係なのかもね。」


「そうだな……俺ら外野が、とやかく言えないしな……まぁ俺らはあいつらの味方だし、何があっても応援と手助けはするつもりだけどな。」


私は「うん」と小さく頷く。……そうだよね、私たちができることはあの2人を見守る…事だけ。何かあれば親友として手助けがで出来れば…それで良いと私は思う。植草くんもきっとそう思ってくれている…うん、2人とも頑張って欲しいな~。




それから一週間が過ぎた…尾上くんと屋上で出会った以来、彼とは何もなかった…。廊下で出会っても挨拶をするだけ…それ以上は話しかけてはきませんでした。あの時の尾上くんとの会話は…いったい何だったんだろう?…それ以上は私も気にしなくなっていた。今日の授業が全て終わり…。


「今日のホームルームはこれで終わります。…みなさん、気をつけて下校をするように。」



若林先生がそう告げて、教室を出ていく…放課後となった。今日の宿題は出されなかったので、明日の予習でもしておくかな?予習に必要な教科書とノートを鞄の中に詰めて…自宅に帰る準備はOKだよ~。今日の晩ごはんは何だろう?家に帰ってからの事を、あれこれと考えていると……ん!?何か…殺気を感じる!そう感じた私はその場から離れた!!


「む!?やるな~瑞樹!」


愛生ちゃんが右手に…スラちゃん!?だっけ?それを持って、私にそーっと近づいていた。また危なく首元に置かれるところだったよ!それ冷たいし、プ二プニしてるから…びっくりするしー!!


「むーまた私をびっくりさせようとしてたでしょ!?それに…それすごく冷たいから、びっくりして変な声がでるから嫌ー!恥ずかしいし!!」


「ふふ~ん!まだまだ面白グッズはあるよ……スラちゃんとスパイダーくんだけじゃないからね!!」


と2人で睨みあって、その場で相手の出方を伺う……って私たちは何しているんだろう!?バカらしくなった私は、力を抜いて…。



「…愛生ちゃん、私疲れたし、もう帰ろ~。」


「はいよー帰ろ帰ろ。」


何もなかったように…鞄を持って帰る私たち……その様子を見ていた俊介と華奈さんは、なぜか苦笑いをしていたと思う…。

そんな他愛もないやり取りをしながら…靴箱のある昇降口へ。自分の靴に履き替えようと、靴箱を開けると…1通の手紙が入っていた。


「あれ!?…何だろう、これ?」


「ん!?どうしたのさ瑞樹?早く帰ろうよー。」


「私の靴箱の中に、手紙が入っていたの」


私はその手紙を取り出して、愛生ちゃんに見せる。それを見た愛生ちゃんは、何故か目をキラキラと光らせながら、私に近づいて来て…。


「お~それはラブレターと言うものでないのかね?やるな~み~ずき~。」


そう言いながら…愛生ちゃんは自分の左肘を私の右腕に押し付けて、ぐりぐりとしてくる。痛い!それマジで痛いですから!!


「ちょっちょっとやめてよ!痛い!痛いってばー!!」


私が涙目になりながら、そう叫ぶとやっと止めてくれたよ……ホントに加減と言うものを知らないのかな?マジ痛いんですけど!そんな私の気持ちなんて上の空で、愛生ちゃんは手紙の内容が気になるのようで…。


「…で?手紙の中身は、何て書いてあるのさ??」


ワクワクしたような目で、私に早く手紙の中身を見せてほしい!と言わんばかりのそぶりだよ…。でも、本当にこの手紙は何なんだろう?私も気になるので開けてみることに…。


「ちょっと待って…」


手紙の中には…1通の便せんが入っていた…。何も変哲の無い、無地で白い便せんが1つ、そこに綺麗な文字が短い文章が書かれていた。それを読んでみると…。



『朝比奈 瑞樹 様  話したいことがあります。放課後、屋上まで来てくれませんか?お待ちしております。』



たったその文章だけで、それ以外は何も書いていなかった…その文章から少し離れて…下の方に、差出人の名前が書いてあった…。

『尾上 蒼汰』っと…。え!?尾上くん??何故??どうして??…こんな出来事は今まで無かったことで…まったく意味が分からないよ…。尾上くんは、いったい何がしたいんだろう!?…そう、私は頭を悩ましていたら、愛生ちゃんは、私とは真逆で…すごくワクワクした顔をしながら…。


「このシチュエーションは……告白かな?……尾上くん、大人しい顔して、意外と大胆なんだね~。」


え!?こっ告白??…何故??どうして私のところに??…尾上くんとは、ただの同級生だし!……もしも告白だとしても、私は付き合うとか…そんな気持ちはないし、この出来事を愛生ちゃんは、どんな気持ちでいるのだろう……すごく気になる。


「どっどうしよう!?愛生ちゃん、私…どうしたら良いか分からないよ…。」


私はそう答えて、愛生ちゃんの反応を伺うように…目を向ける。愛生ちゃんは真剣な顔しながら…。



「屋上に行ってきなよ、瑞樹。」


「え…!?えええーー!!」


え!?どういう事??何故に愛生ちゃんは、尾上くんに会いに行けって…勧めてくるの??『会いに行く必要は無い』…とか私を止めてくれないの??そう思って、愛生ちゃんを睨んでみたんだけど…。


「…尾上くんも勇気を振り絞って、瑞樹に手紙を出してきたんだから……その気持ちを無下には出来ないでしょ?話だけでも聞いてきたら??その場で返事する必要はないんだし。」


愛生ちゃんは…また真剣な顔をして、私にそう言ってきた……そんな事をはっきりと言われてしまうと…私は何も答えられなくなるよ…。どうして良いのか分からず、顔を俯いて悩んでいると…愛生ちゃんはこう言ってきた。


「…んじゃ、ボクは先に帰るね~。明日、話の結果を教えてね!」


そう言うと愛生ちゃんはさっさと靴に履き替え、そのまま帰ってしまった。笑顔で手を振りながら…そんな行動に私は呆気に取られて…。


「へ!?…私は、行くとも…何も言ってないんだけど……って行っちゃった…。」



愛生ちゃんは私の視界から完全に消えてしまった…。これって行かないとダメなパターンだよね!?…はぁ~私はまだ女の子としての自覚が出来ていないのに…これ以上、悩みの種を増やしたくないのに…何でいつもこうなるんだろう…。

何時までも、この場所に突っ立てても仕方ないから…私は、手紙に書かれていた屋上に向かうことにしたのでした…。

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