第53話 「日・常・変・化」
お昼を取って、みんなと少し雑談した後…私は1人、食堂を抜けてきた。たまに1人になりたい時があり、自分のお気に入りの屋上に来ている…。愛生ちゃんたちはいつもの事だ、と特に気にしていない…私はこの時間が好きだった、私たちが住んでいる街並みを見ながら、1人で色々と物思いにふける。
昨日の一件以来、私は少し心が落ち着かない……このままだと愛生ちゃんたちに心配をかけてしまう…。ここはゆっくりと自分の中を整理したかった。
(私の中で、あの2人組は…かなりのトラウマになっているみたい。ほとんど悪夢の原因は、すべてあの2人組の所為だと思う。街中で見ただけで、悪夢が蘇ってくるんだもん…また見かけることもあるかも知れない……みんなに悟られないように…私がしっかりしなくちゃ!)
私はそう思いなおし、改めて屋上から見える、街中の風景に目をやる…。爽やかな風が突き抜け、私の頬を柔らかくかすめていく。私の悩みなんて、この風景の素晴らしさを前にすれば、ちっぽけな悩みなんだーっと考えさせられる…そう、私を励ましてくれるようなそんな錯覚さえを覚える。
なんか元気が出てきた…午後からも頑張るかな?そろそろ教室に戻ろうかと思っていたら、突然、誰かに声をかけられる…。
「朝比奈…くん…だよね?」
「え!?」
声をする方に振り返ってみると…同じ学年の男子生徒が1人立っていた。確か…中学で同級生の…。
「えーと…今は、朝比奈…さんと呼ぶべきかな?久しぶりだね…僕の事は覚えているかな??中学の同級で1年間だけ同じクラスだった尾上だよ、尾上 蒼汰」
「…うん、久しぶりだね、尾上くん」
中学2年の時に、同じクラスでクラス委員をしていた尾上くん。すごく真面目で物静かな彼、勉強はすごく出来て、学年で常にトップを取るぐらい優秀な人だったはず……尾上くんなら…もっと優秀な高校へ通えるはずなのに…何でうちの高校にいるのだろう…?そもそも何で私が『朝比奈 瑞樹』って分かったんだろう??尾上くんとはクラスが違うから、私たちの事情は知らないはずなのに…。
「私が、朝比奈って…何で分かったの!?クラスが違うから、私がこうなった事情を知らないはずなのに…」
「朝比奈…さんと和泉さんの事は、他のクラスでも話題が持ち切りで、かなり有名になっているよ…知らなかったのかい?画像とか動画がネットに流れていて、僕もそれを見て知ったし。」
「え!?うそ!!……全然知らなかったよ…いつの間に写真とか撮られていたんだろう…。」
「…匿名で投稿されていたから分からないけど……その投稿サイトでは『ただの空想の作り話だ』とか『釣りなんじゃないか?』とかで、誰も信じずネタ扱いにされているみたいだけどね…」
「え!?そうなんだ…それなら良いんだけど…」
若林先生との話で、原因不明な病気として、嘘を突き通す約束にはなっているし…そんなに大きな問題になっていないから、あまり気にしなくて良いのかな?…でも、愛生ちゃんには報告しておこう、あまり話題になるのは私も嫌だし。
「尾上くん…えっと色々と教えてくれて、ありがとうね?わざわざそれを…私に教えてくれたんだ」
「いやーそういう訳じゃないんだけど……それよりもさー朝比奈さん、すっかり女の子らしくなったよね?中学の頃の雰囲気が全然無くて…びっくりしたよ!今日声かけるのもさえ、かなり戸惑ったし」
「え!?そっそうかな…確かに見た目はかなり違うし、あの…女子の制服を着てるから、見た感じの雰囲気は、違うかも知れないけど……私は…私だよ?」
「言葉遣いは変わったし…前みたいにおどおどした感じはなくなったよね?少し明るくなったんじゃないかな?朝比奈さん、すごく可愛くなったよ!」
え!?えええーー!!尾上くんは突然、なっ何を言い出すのかな?…わっ私の事が…可愛い!?
尾上くんとは…中学の時、そんなに会話もしたことはなく、クラス委員として話をしたぐらいで、お互いの面識はそんなになかったはず…。愛生ちゃんや他のみんなから言われる『可愛い』よりもすごく恥ずかしく、どう反応して良いか…まったく分からないよ!!私がオロオロとしていると…。
「中学の頃とそう言ったところは全然変わってないな…朝比奈さんは。…和泉さんは確か…今は男の子になったんだよね?和泉さんとは付き合ってたりしてる??君たちは昔から仲良かったし」
「え!?愛生ちゃんとは…ただの幼馴染…だよ?その…付き合ってとか…ないし、あの…そんなんじゃないし…」
「へぇ~和泉さんとは、ただの幼馴染なんだ…」
もう分からない!尾上くんが私に話しかけてくる意味が分からない!!頭がショートしそうだよ!!!私はそれの空気に耐えきれなくなって…。
「あの!尾上くん?わっ私、用事を思い出しちゃった…から、その…教室に戻るね!!」
そう言い終わる前に、私は屋上の出入口のドア目指して走り出した!尾上くんが私に向けて何か言っていたようだけど…そんな言葉を聞く余裕がなかった…。ごめんね!尾上くん!!
「逃げられちゃったか…少し急いで話をしすぎたかな?……まぁ良いか、あの子が朝比奈くんと分かった事だし」
誰もいなくなった屋上で、1人頭をかきながら、僕は屋上を後にした…。
放課後になって愛生ちゃんと一緒の帰り道で、私は今日の昼に屋上であった出来事を愛生ちゃんに話をした。尾上くんに久しぶりに会って話しかけられたこと、私たちの画像と動画がネットに流出していること。
「ふ~ん、尾上くんって…あの真面目で物静かなクラス委員をしてた人だよね?結局、瑞樹に何が言いたかったのかな??」
「…知らない。ネットの件はすごく有り難かったけど…突然、私の事を可愛くなった!とか言うんだよ?…尾上くんとはそんなに親しくなかったし…まったく意味が分からないよ!!」
「へぇ~可愛いとか言われたんだ?…それで、瑞樹はそう言われて…どう思ったのさ??」
「え!?そっそんなの…えーと、そう!嬉しくなんかないよ!!いきなり言われて…その、恥ずかしいだけだし!!」
うん、嬉しくなんかないし!……愛生ちゃんに言われたら……その、嬉しい…とか思っちゃうかも。
「じゃあ…ボクが瑞樹の事を『可愛い~』とか言うと、どう?嬉しくなんかないの??」
「え!?…とっ当然じゃん!その…恥ずかしいだけだし!!あの…嬉しいとか…そんな事ないし!!」
「へぇ~そっかそっか!瑞樹は可愛いもんな~すごく可愛い!!たまらなく可愛いな~!!」
「バッバカ!愛生ちゃんのバカバカバカ!!もう知らないーー!!!」
「あははー」
いつもの会話に戻って、今日色々とあった出来事が全て吹き飛んだ…。愛生ちゃんはすごく意地悪だけど、すごく優しい…そんな優しさに救われた、そんな一日でした。
あっ!因みにネットの件については、愛生ちゃんのおばさんに相談することになって…1週間もしないうちに、ネットから私たちの画像と動画が全て削除されていたのは言うまでもなかった…。
今回もあまり進みませんでした…(>_<)新キャラを出しておきながら(笑)
なんか最近、イチャついている2人…書いてて楽しいから良いかー!( *´艸`)




