第52話 「温・情・大・切」
朝ごはんの用意と、私と愛生ちゃんのお弁当の用意も済ませた。來海と母さんのおかげで、朝からのすごく嫌な思いは消えていて、何時もの私に戻っていた。私はいつも誰かに助けてもらってばっかり…もっともっと私自身が強くならなきゃだね!
愛生ちゃんにメッセージを送っておいた。『そうか、良かったよ!元気になって』と言うメッセージと、イイネ!をしてくる猫のスタンプが送られてきた。うんうん、この猫のスタンプはいつ見ても可愛い~♪ありがとう!とお礼をする同じ猫のスタンプを送り返した。
何時もの登校、愛生ちゃんと合流して、愛生ちゃんが心配そうに…。
「瑞樹、おはよう!…ホントにもう大丈夫!?」
「愛生ちゃん、おはよう!…うん!もう大丈夫だよ。心配かけちゃったね、ごめんさない」
私がそう、元気よく答えたので愛生ちゃんはホッとしているみたいだった…うん、良かったよ、愛生ちゃんに悟られなくて。これは私の問題であって、愛生ちゃんや他のみんなには関係のない事……私が強くなれば良いだけの話なんだから。そんな事を考えていると…私の右手に暖かく包まれる感覚が……え!?手を繋がれている??愛生ちゃんの方を見てみると…。
「そうやってまた、1人で悩み考えているね…それは瑞樹の悪い癖だよ?ボクもいるんだし、少しは頼ってよ。何があったのさ??」
私の手を握りながら、少し不満そうな顔をしていた。ごめんね、この事は言うわけにはいけないから…愛生ちゃんを心配させたくない。だから私は…。
「…ううん、ホント大丈夫だから。ただ気分が悪くなっただけだから。」
そう答えると、愛生ちゃんが私の首元に何かを置いた。え!?何これ?冷たい??
「ひゃぁぁぁーー!え!?え!?何これ??きゃっ!冷たい!?何かぷにぷにする!?」
冷たくて何故かぷにぷにする謎の物体を触りながら、動揺する私を愛生ちゃんが大笑いしている。
「あははー瑞樹の反応、面白すぎー!あはははーー!!」
「そんなこと言ってないで、これ取ってよー!気持ち悪いよーー!!」
私が涙目になりながら、そう訴えると…やっと愛生ちゃんがその謎の物体を取ってくれた。その物体を愛生ちゃんは手の平に乗せて、私に見せてくる……青くて…透明な…ゼリーみたいな物!?何これ??
「昨日、雑貨屋で買った面白グッズだよ。スライムのおもちゃ…スラちゃんだ!」
スライムって…ゲームでよく出てくる、ぷにぷにした敵!?だっけ?…しかも名前を付けているし、スラちゃんって、そのままだし!
「そんなくだらない物を買って、どうするつもりなの!?突然、首元にそんなものを置かれたらびっくるするよ!!愛生ちゃんの意地悪ー!!」
そう私が怒っていると、愛生ちゃんはそっと微笑み…。
「うん、何時もの瑞樹に戻ってよかったよ。」
「え!?……もう、愛生ちゃんのバカ…」
そんな事を言われ、急に恥ずかしくなって、下を向いて伏せていると…。
「お!?夫婦漫才はもう終わりか?今日はいつもより増して激しかったな~。…なぁー、榎本ちゃん!」
「そうね~私としてはもっと…イチャついてくれても良かったんだけどね~。…ねぇー、植草くん!」
いつの間にか、俊介と華奈さんが、私たちの側にいて…ニヤニヤしながらこちらを見ていた。え!?何?この状況は??来ていたんだったら、愛生ちゃんを止めてくれてもいいじゃない??みんなして酷いよーー!!それに何か…2人の息が妙にぴったりなんですけど?何なのこれ??私の中で色んな感情が渦巻き、訳が分からなくなっている様子を見て、華奈さんがそっと耳元で囁いて…。
「まぁまぁ、瑞樹ちゃん?愛生ちゃんは瑞樹ちゃんの事を心配しての…行動なんだからね?そんなに怒らないの。」
「…うん、それは分かっているんだけど……愛生ちゃんのやる事が、いつも極端なんだもん…。」
「それは分かるー愛生ちゃんって…ホント子供だもんね~中学と何も変わってないし」
華奈さんとコソコソ話していると…俊介が突然、大きな声を出して。
「やべっ!話し込み過ぎたな、このままじゃ遅刻すんぞー!!走ればまだ間に合う、急げー!!!」
そう言って走り出す私たち…。いつの間にか嫌な気持ちや悩みが吹っ飛んで…またみんなに助けられてちゃったね、ありがとう…。そう感謝しながら教室に向かうのでした。
あっという間に授業が終わり、昼休みを迎えていつもの食堂へ向かう私たち。何時もの様に弁当組が席を確保して、俊介が買い出しに行って戻ってくるのを待つ。私は、トートバックから自分のと愛生ちゃんのお弁当箱を取り出して、愛生ちゃんの分のお弁当箱を渡す。そのお弁当箱を見ていた華奈さんが…。
「あれ!?愛生ちゃんの…いつものお弁当箱じゃないよね?買ってきたの??」
「うん、昨日街へ行ってて、いつもの雑貨屋さんで買ってきたの。愛生ちゃんが選んだものだから…ちょっと地味なんだよね。ホントはもっと可愛くて、カラフルの買いたかったんだけど…。」
「瑞樹!地味とは失礼なー!!シンプルなのが一番良いんだよー。そうな事を言うんだったら、瑞樹が選んでくれたら良かったのに…ボクは最初に言ったよね?『瑞樹に任せる』って!」
「そうなんだけど…愛生ちゃんが使う分だから、愛生ちゃんに決めさせたかったんだもん!」
「じゃあ!これで良いじゃない?文句を言われる筋合いは無いと思うけど??」
「そっそれは…そう…なんだけど……」
そんな私たちのやり取りを静かに見守っていた華奈さんが、間に入って両手で私たちを制しながら…。
「まぁまぁ2人とも、夫婦喧嘩はこれぐらいにして…それよりも!昨日は2人で出かけてたの?街に??……それってデートじゃない??」
と言いながら、華奈さんはすごく期待した顔をしている…。え!?デートだなんて…私たち幼馴染なんだし、出掛けるなんて当たり前な事なんだし……私はそう思って答えた。
「え!?…デートじゃ…ないよ?愛生ちゃんと街に出掛けてた…だけだし、普通に…遊びに行っただけだよ?」
「それは普通、デートって言うんじゃないの?男女2人が出掛ける事って」
「え!?そうなの??」
そんなやり取りをしていると俊介が帰ってきて…。
「ただいまっと!…んっ!?何の話で盛り上がってんだ??俺にも聞かせてもらいたいもんだな…」
「植草くん、お帰り!…何かね~この2人さ!昨日デートだったんだって!!」
「まじか!?それは詳しく聞かせてもらいたいもんだな!!」
また朝と同じで、2人とも息がぴったりなんですけど!何だか2人が、私に期待した目を向けてくるんだけど…私はどうすれば良いの!?愛生ちゃん助けてよー!!
そう思って、愛生ちゃんの方を見てみると…お弁当を先に1人で食べている…何!?私は何も関係ありません!っみたいな雰囲気は??『いただきます』もしないで勝手に食べ始めないでよー!!
私がお弁当を食べ終わるまでの間、2人から昨日の出来事を、根掘り葉掘りと聞かれるのでした……もう!誰か私を助けてよーー!!
話を進めるつもりが…いつものような日常を書いてしまいました(>_<)
次回は話を進めます!もう脱線しません(笑)




