第49話 「愛・生・陰・謀」
お弁当箱の会計を済ませて、お店を出た私たちは、次の目的である駅前ビルに向かっていた。お店を出た瞬間、愛生ちゃんから…
「瑞樹はとろいし、ボクとはぐれるといけないから…」
っと言われて、手を繋いできた…私はそれに応える。…とろいって言葉がすごく不満なんだけどね!私はとろくはないよ!!とりあえず心で叫んでおいた。
愛生ちゃんのお弁当箱は買ったから、もう一つの目的である夏服のチェックしに来たのだけど…。私はファッションにとても疎い。來海と雑誌やスマホで確認しながら、色々と話はするんだけど…実際に見て確認してみないとうまくイメージが出来ない。愛生ちゃんの意見も聞きたかったのもあって、誘ったのもあるんだけどね。早速、愛生ちゃんに聞いてみる…。
「ねぇ、愛生ちゃん?私ってどんな服が似合うと思う??」
「んーそうだな~瑞樹のイメージとしては、控えめで落ち着いた感じのが良いかな?派手なのは似合わないと思うな~」
「うん、私もそう思う。でも控えめで落ち着いた感じって…どんな感じなんだろう?…地味系??」
「う~ん、そうも取れるかな~でも地味って言うか、少し明るい感じがいいんじゃない?淡いピンクとか」
う~ん、なかなかイメージがうまく出来ないよ…。色々と試着してみないと分からないかも。そう考えていたら、愛生ちゃんもそう思ったのか。
「考えるのと実際に見てみるのとではイメージが違ってくると思うから…納得するまでトコトン試着するしかないよ。」
「…うん、そうだよね!愛生ちゃん、手伝ってくれる?」
「そのためにボクを連れてきたんでしょ?…良いよ、手伝う」
私には相談できる友達が少ない…特に女友達は愛生ちゃんと華奈さんだけだし。來海と母さんの情報だけでは、好みが偏ってしまう…家族とは違う人の目から色々と教えて欲しかった。今度は華奈さんにも相談してみよう、そう思うと楽しみになってきたよ~♪今は、愛生ちゃんとの時間を楽しもう。
愛生ちゃんと色々と話しながら、駅前ビルの中に入り、2階にある衣料品店が集まっているフロアを歩く…。いろんなお店が並んでいて、どのお店が良いのかさっぱり分からない。フロアを回りながらオロオロしていたら、愛生ちゃんが「瑞樹、こっち」と言いながら私の手を引いて、一つの店の前に来る。派手さはなく、可愛い感じのお店で、10代の女の子たちにとても好まれそうな品揃えをしている。
「わぁ~可愛い服がいっぱい並んでるよ~♪」
「瑞樹のイメージからだと…このお店の服が良いと思ってさ」
「愛生ちゃん、ここによく来るの?」
「華奈ちゃんと何回か…でも、2人とも趣味が合わないから、この店では買わないけどね~。でもチェックには来ている感じかな?何事も見てみないと分からないからね~♪さぁー瑞樹、中に入るよ。」
愛生ちゃんに手を引っ張られて、お店の中に入っていく…。私には何もかもが初めての体験であり、目に入ってくる情報が何もかも新鮮だった…。あわわわ、どうしよう…何が良いのか情報が多すぎて、頭がパニックだよ~!見かねた愛生ちゃんが…。
「兎に角、気になる服は全て試着するよ?んーこれも良いな~これも瑞樹に合いそうだよ~♪」
そう言いながら買い物かごの中に、気になる服をポンポンと入れていく…愛生ちゃん、すごいよ…。私だと一つ決めるだけで、どれだけの時間がかかる事か…。ここは愛生ちゃんに任せて、私はついて行く事にした。ある程度の服をかごに入れたら、愛生ちゃんが立ち止まり…。
「んーとりあえず、瑞樹はこれを持って、試着室で着替えててよ。ボクはもう少し服を見ておくから…」
「え!?私1人だと…すごく不安だよ。愛生ちゃん、近くにいてよー!」
「…仕方ないな~じゃあ、試着室に行こっか!」
「うん!ありがとう!!」
私は嬉しくなって、愛生ちゃんの手を引っ張って、試着室に向かった。時折、愛生ちゃんは「そんなに急がなくても…」と何か慌てているみたいだけど、私は愛生ちゃんに早く見てもらいたくて、急ぎ足で向かうのでした。
私は早速、試着室に入り、外では愛生ちゃんが待ってくれている。渡された買い物かごから一つの服を手に取って見てみる……あれ!?このワンピース、丈が短い…。え!?他の服を見てみるとミニスカートとか丈の短いスカートしか入ってないんですけど……私は嬉しさのあまり、かごの中身を全然チェックしていなかったよ…どうしよう、愛生ちゃんを無理やり引っ張って来て、今更、着れないとか…断れないよ!そんな事を悩んでいると…。
「瑞樹、大丈夫?服の着かたが分からないとか…無いよね??」
「え!?ううん、大丈夫…だよ、着替えるから…少し待ってて」
こう言ったからには…覚悟を決めるしかない。制服のスカートと同じ!…うん、そう思えば何ともないはずだよー!!手に持っていたワンピースを壁のフックに掛けて、私は服を脱ぎ始めた。
うん、とりあえずは成功かな?…瑞樹には、もっともーっと『女の子』としての自覚を持ってもらわないと。女の子の身だしなみはもちらん、恥じらいや女の子としての周りからの認識を改めないと…これからの人生はとても大変だよー!このままだと瑞樹が傷つき、立ち直れなくなってしまいそうだ…。ボクが常に側に居るとは限らないから…瑞樹には強くなってもらわないと!!
…でも、ここのお店の服は冗談抜きで、今の瑞樹には似合いそうだよ~♪ボクと華奈ちゃんには可愛すぎて…似合わないからね。それにボクはミニスカートというかスカートを穿くのは大嫌いだったし…その分、瑞樹にはおしゃれして欲しいな~せっかく瑞樹は可愛いんだし、可愛い服を着てもらいたいしね!すごく楽しみだな~♪
何とか着替えました…壁に立てかけてある、姿見の大きな鏡を見てみる。このワンピース、すごく丈短いし…その上、スカートはひらひらだし、動くだけで下着が見えちゃうよ!すごく恥ずかしくなって、試着室から出られない…そーっと、試着室のカーテンを少し開けて、愛生ちゃんに声をかけた。
「あの…愛生ちゃん?着替えたんだけど、その…私、はっ恥ずかしくて…」
「ん!?どうしたの??」
愛生ちゃんがそう言うと、カーテンを思いっきり開けた。えー!?うそ!?いきなり開けるかな??愛生ちゃんが私の事を見つめている…何これ!?すごく恥ずかしいよー!!どう反応したら良いのか分からなくて…モジモジしていたら、愛生ちゃんが何も言わずに、試着室に入ってきて…カーテンを閉めた。え!?どういう事??私は後ずさりながら…。
「え!?あの……愛生…ちゃん??」
「うん!瑞樹には、やっぱり似合うと思っていたよ、すごく可愛いよ!!」
そう言いながら、私のスカートに手を掛ける…え!?ちょっちょっと!!私はスカートを両手で抑えながら…。
「あっ愛生ちゃん!何しようとしてるの?」
「…あっ!?あまりにも瑞樹が可愛かったから、つい悪戯したくなったよー。ごめんごめーん!!」
むー絶対、心から謝っていないし、またスカートを捲ろうとしてたし!可愛いって言葉に誤魔化されるところだったよ!腹が立ってきたよ!!
「…愛生ちゃんのバカ!エッチ!!ここから出てけーー!!」
そう言って、思いっきり両手で愛生ちゃんの体を押し退ける。愛生ちゃんは「あははー」と笑いながら試着室を出て行った…。もう恥ずかしいのやら悔しいのやら…わけが分からないよ!!…それから私たちは、こんなバカなやり取りを何回も繰り返すのでした…。このお店に恥ずかしくて2度と来れなくなるよーホントにもう!!
やっと書き上げました…今回は体調が悪くて、せっかくの連休が寝て過ごすことに…(>_<)
季節の変わり目であります、皆様もどうか体調管理にはお気をつけてください!




