第44話 「仮・装・暴・走」
『暴走』シリーズです。
さてさて…どうなる事やら…。
愛生ちゃんのおばさんがクローゼットの中にある衣装を触りながら、どの衣装にするのか選んでいるように見える…。そもそも、そのクローゼットに立て掛けてある数々の衣装は、何の為に並べているの!?…おばさんは何だか嬉しそうに微笑んでいる。
(うふふ…瑞樹ちゃんに今日着させる衣装は、実はもう決まっているんだけどね~♪…瑞樹ちゃんの今の表情を見ているだけで手に取るように分かるわ~♪すご~く不安になっているようね…ホント弄りがいのある子……すごく興奮するわー!!)
「…うふふ、ふふふ」
「え!?おっおばさん、その…大丈夫ですか?」
「あら!?ごめんなさい、ちょっと考え事をしていただけよ?気にしないでね~」
「…あの、おばさん?それで、その…この部屋で何をするんですか?それにその衣装も気になるし…」
「瑞樹ちゃん!!」
「はっはい!」
「よ~く聞いてくれました!この衣装たちは……瑞樹ちゃんのために…用意したものなのよー!!」
「えええ!?わっ私の、ためですか?」
もう何が何だか意味が分からないよ!…おばさんに料理を教えてもらえると思って、今日ここへ来たのに…いきなり、この衣装が私の為にあるって言われても…あわわわ、理解不可能だよ!!
(うふふ…瑞樹ちゃんたら…相当焦っているみたいね~そろそろ今日のミッションを始めましょうか…MIKAプロジェクト、ミッション1!…名付けて『瑞樹ちゃん!和泉家のご奉仕メイド嫁になる!!』よー♪)
「そうよ~今日は…この衣装を、瑞樹ちゃんに着てもらいます!」
そう言いながら、おばさんが手にした衣装は…え!?これって俗に言う…『メイド服』って言うものじゃ無いんですか??それを…私が着る!?…何故?どうして??
「あの…おばさん?私、おばさんの言っている意味が、その…分からないんですけど??」
「ふふ~ん♪メイド服…それを着る人は『メイドさん』と呼ばれるわね?その人たちのお仕事は、献身的に家事をこなしているわ…そう!料理は愛情なの!!…その衣装を着て…愛情を込めて作る料理は、どんな料理にも負けないわ!…瑞樹ちゃん、愛生を虜にするには、絶好の格好だと思うの!!」
え!?おばさんの言っていることは、すごく無茶苦茶な事を言っているはず!なのに…「料理は愛情!」…それはすごく分かる、最近、家事を始めだした私でもそれはすごく感じている。今日だって、ここに来たのも…「愛生ちゃんの為に」もっともっと料理を覚えたかったわけだから…でも、虜にする…なんて…その、そんなつもりは…なくて…でも、あの…すごく恥ずかしいよ~!!
(瑞樹ちゃん、コロコロ表情が変わって、見ていてすごく飽きないわ~♪ホント可愛い~!…これはもうひと押しね!!…よ~し。)
「そうね~瑞樹ちゃん!?これは現実の世界ではなくて…仮想の世界だと思って考えてみてね?大好きな旦那さまの為に日々、献身的にご奉仕をするメイド妻…それが今のあなたなの!…そのキャラになりきってみたら、その気持ちが分かってくるかもよ?…『誰かの為に、何か出来る事をする』…私はこのイメージがすごく大事だと思うのよ!!」
誰かの為に…何か出来る事……うん、そうだ!私は昔からずっと…「愛生ちゃんの為に、何か私に出来る事」それをずっと模索してきた…それをようやく掴めるのかもしれない。…そう思うと、その「メイド服」を着るのも恥ずかしく無くなってきたかも!
「…うん、分かった、おばさん!私、その服を着てみるよ」
「…分かってくれたのね、瑞樹ちゃん…いいえ、瑞樹!それから…私の事は『おばさん』ではなく、『お母さま』と呼んでね!!」
「はい!お母さま!!」
「じゃあ…瑞樹!早速、この衣装に着替えてね!!それから朝ごはんの準備、掃除や洗濯もあるのだから…あなたのお仕事は、まだまだいっぱいあるわよ?」
「はい!お母さま!!…私、頑張りますー!」
それから、私はおばさん…いいえ、お母さまに手伝ってもらって、メイド服に着替える。黒のロングのワンピースをベースに、白のロングエプロンにカチューシャ、黒のタイツを身に着けて、ブラウンの網掛けロングブーツを履く…先ずは着替えは完了~!…最後の仕上げに、お母さまから軽く化粧をしてもらって…どこからどう見ても、「メイドさん」の出来上がりでした。
「…よし!これで出来上がりよ~さぁ見てみて、瑞樹?これであなたは…正真正銘のメイド妻よ!」
そう言われて、大きなスタンドミラーの前に連れてこられて、その鏡の中の自分を見てみる……え!?これが…本当に私なの??
「…うそ!?これが…わっ私…なの?」
「そうよ!瑞樹。…あなたはもっともっと、素敵な女性になれる可能性を秘めているのよ?今日は、その第1歩なのよ!!」
「はい!お母さま!!」
(…完璧だわ。瑞樹ちゃん、あなたはいま、とても輝いているわ!…それにこのメイド服…やはりロングじゃないとダメね!!ミニは認めないわ!上品かつ清楚な雰囲気…可愛い瑞樹ちゃんと見事にマッチして……ヤバイわ、興奮しすぎて…鼻血が出そうだわ!!ここは我慢をして…)
「さぁー瑞樹!愛する旦那さまの為に、お食事を作ることにしましょう~♪」
「はい!旦那さまの為に…愛情を込めて作ります!!」
私とお母さまは、朝食を作るため、台所に行くのでした…。
朝食は、私の家は和食がメイン、愛生ちゃんの家も和食がメインだった。それは昔から分かっているので、特に苦労することもなく、準備をすることになった。ご飯はすでに炊けているので、後はみそ汁と焼き鮭、ほうれん草のお浸しを作ることに…。基本は母さんに、しっかり叩き込まれているので、手順は特に問題はないかな?問題は味加減…私の家と愛生ちゃんの家とでは味付けが違うと思うから…私はそれを一番知りたかった。
おばさんが…(ううん、今はお母さまね!キャラになりきらなきゃ!!)順序良く、私にアドバイスしながら味付けをしていく…。私はメモをしつつ、少しつまんで食べ、味を確認していく…私の家より、少し濃いめの味付けかな?分からないところが出てきたら、お母さまに聞いて確認していく…あれよこれよ雑談もしながら朝食を作り終えました…やったね!!…後は愛生ちゃん…ううん、旦那さまに食べてもらうだけだよ~♪
そう考え事をしていると…突然、扉が開いた。
ガチャッ!
「ふぁ~よーく寝たよ…ママ~朝ごはんできてる?そろそろ準備しないと、瑞樹が家に来ることになってるし」
あー!旦那さまが起きてきたよ~ご挨拶しなきゃ!!私は、お辞儀をして…。
「おはようございます!旦那さま!!」
「……え!?」
あれ!?旦那さまが口を開けたまま、何か固まっているみたい…何かあったのかな?どうしたんだろう??私に指を指しながら…。
「…えーと、どちら様…ですか?」
ごめんなさい!ごめんなさい!
暴走が愛生のママだけで止まらず、瑞樹や作者の私まで影響が及びました…。
恐るべし!MIKAプロジェクト!!(笑)
今までの雰囲気をぶち壊すノリになってしまいました…反省です(>_<)
次回からは、普通に戻る…はずです(笑)




