第04話 「愛・生・変・化」
夢を見ていた……。
ボクと瑞樹の幼い時の記憶だ…また瑞樹が同級生の男の子にいじめられてる…。
ボクが助けなきゃ!!
男の子なのに、また泣いちゃって…。
ホント、ボクがいなきゃ瑞樹はダメなんだから…。
いいよ…ボクがずっと瑞樹を守ってあげるね…。
さぁ…瑞樹…一緒にお家にかえろ…。
『愛生ちゃんが…男の子だったら良いのに…』
「ん~よく寝たっと!おはよう!瑞樹。おはよう!ボク。」
体をゆっくり起こして体を伸ばしてみる……。
カーテンからこぼれる朝日がとても眩しい、今日もいい天気だ!
ん!?何か視界が違う…いつもより視点が高くなってる…。
それに声…。ボクってこんな低い声してたっけ!?
なんかとても違和感がある、何だろう?
自分の腕を見てみる…あれ?なんかたくましくなってる??
もう少し細かったような…何かゴツゴツしてるし。
それに胸にも違和感が…そんなには小さくない胸が…。
確認するように胸を触ってみる…あれ?ない。
変わりにたくましい男の胸板がある…嘘でしょ?
はっ!まさか!!股間に手を伸ばす。
……あるはずのない物がボクに付いてる…。
…やばい事になってる。ボク、男の子になってる!?訳分かんないよ!!
コンコン
突然部屋のドアがノックされた…ママだ。
「愛生ー起きてる?入るわよ」
まずい!ママが部屋に入ってくる!!
どうしよう…隠れなきゃ!!ってどこに??
そんな時間もなく、仕方なく布団の中に潜り込んだ。
ガチャ!
ドアが開き、足音がボクのベットに近づいてくる!
どうしよう!どうしよう!どうしようもないけど、ホントどうしよう!!
ボクは背中に冷や汗を感じながら、布団の中に隠れるしかなかった。
「なにやってるの?朝ご飯が出来てるから、起きて食べなさい」
やばい!やばい!ママが近づいてくる!!
「布団かぶって何やってるの?起きなさい!」
がばっ!
布団を取られてしまった…やばい!見られちゃったよ……。
どうしよう…この沈黙がすごく辛い。
ママはボクの顔を見たまま固まっていた…ボクは引きつった顔で口元をヒクヒクさせていた。
誰か助けてよ!ホントマジで!って叫びたくなったのは何とか我慢した。
それからどれぐらいの沈黙が続いたのか、そんなことも考えられないほど
時が止まってた感じだよ、マジで辛い!
ふとそんなことを考えていたら、ママがポツリと言葉を発した。
「…あなた…誰?」
まぁそれが普通の反応だよね…自分の娘が寝ているベットに
知らない男が寝ているんだから…警察を呼ばれても仕方ない場面だよね、これって。
ドラマかよ!ってツッコミを入れたくなる!
あれこれ考えて言葉にしても言い訳にしか聞こえないだろうし、
ここは本当のことを言おう!ボクの言葉を伝えれば、ママは信じてくれる…はず!
ベットにうずくまってる格好から正座をして、ママを真っ直ぐ見て
こほんっと咳をして、ボクは覚悟を決めた!
「信じられないかも知れないけど…ボクだよ」
「朝、起きたらこうなってたんだよね…あはは…」
いろいろと考えたけど、ボクらしい言葉を発したと思う。
何かメンドクサくなってきたし…なんといってもボクらしくないから!
それを聞いてママは何か納得した感じで、こう言ってきた。
「そう…でも男になっちゃったんだから、仕方ないんじゃない?」
はっ?何それ!?こっちは男の子になった事の驚きと戸惑いでパニック状態なのに…
ママは簡単に受け入れられるんですか??この現実に。
「ママは軽すぎだよーボクはまだ信じられなくて、頭の中パニックなのに…」
「だってねぇーママは男の子欲しかったから、嬉しいんですけど!」
ママは満面な笑顔でこう答えてきたよ…何か腹立つ!何それ!?
これって、ママのせいでこうなっちゃったじゃないかと思ってきたよ!!
無性に腹立つし!順応しすぎ!!今日が土曜だから良いものの…。
「またそんな事を言って…今日と明日は学校が休みだから良いんだけど、月曜からどうするんだよ!」
「そんな事はママに任せておきなさい!こっちで何とかしますから」
そう言って誇らしげに胸を張っているママの姿。
すごく不安なはずなのに…ママなら何とかしてくれそうと思ってしまう自分が怖いよ!
何かあれこれ悩んでるのがバカらしくなってきた…すごく疲れたし。
でもこう言った雰囲気で場を和ませてくれるママにはホント感謝だよ!
口には絶対しないけどね!!何か負けた気がするから…。
ふと思っていると、ママが少し困った顔をしてこう言ってきた。
「でも困っちゃったわね…瑞樹ちゃんには、どう説明するつもりなの?」
あ…すっかり忘れてた。瑞樹には黙ってるわけにはいかないよね…。
言って信じてくれるかどうか…これはちょっと困ってきたぞ。
朝比奈 瑞樹。ボクの幼馴染で昔から仲良かったから
高校も同じ場所で同じクラス、お互いの家が近所ってことで相も変わらず連れ添っている。
そうなるとこの姿で会わなければならないわけで…誤魔化せるわけがない。
「…説明しても信じてくれるかな…」
瑞樹を疑っている訳じゃない…けど、面向かって話をするまでが怖かったりする。
もしもって考えてしまう、自分がすごく臆病者だって事は少しは自覚ある。
そんな考えをあざ笑うように、ママは軽く言ってくる。
「瑞樹ちゃんなら信じてくれるわよ、昔からあなた達、仲良かったし」
ママのこの自信は、どこから来るのか知りたいよ…ホントに。
でも、その言葉にボクは少し勇気をもらったことは間違いではなかった。
…ホント、ママには敵わないよ!
「う~ん…どのみち、ばれるしね……うん、相談してみる!」
いきなり電話するとびっくりするだろうし…声が違うからね!
ここは、スマホのチャットアプリを起動して…チャット相手を瑞樹にセットして
詳しく書いてもあれだし…簡単に「相談したい!」って書いてっと!
これで送信!ポチっとな!!
…なんか慣れてくると…瑞樹がどういう反応をしてくれるか楽しみだ~♪