第35話 「愛・妻・弁・当」
プルル~プルル~♪
ん!?晩ご飯の準備をしていると、テーブルに置いてある、私のスマホから音が流れている。
この音は…電話だね、誰からだろう?スマホの画面を確認すると愛生ちゃんからだった。
受話器のアイコンをタッチし、スライドさせる。
「もしもし、愛生ちゃん?どうしたの??」
『瑞樹、いきなり電話してごめんね?…今、話しても大丈夫??』
「うん、晩ご飯の準備しているところだけど、今は大丈夫だよ、それで、どうしたの?…あっ!もしかして、体操服の件??」
『そうそう、その件で。あれから早速、ママに相談したんだけど、何時ものごとく、ママに任せて大丈夫そうだよ、明日の昼に学校へ届けてくれるって』
「…そうなんだ、分かったよ。…相変わらず、すごいね!おばさんは…」
行動力がすごいというか何というか…規格外の事を簡単にやり遂げるよね。
ホント何者なんだろう…愛生ちゃんのママなのに、失礼な事を考えてしまった。
『まぁね…自分の親ながら謎が多いよ!…まぁ良いかそんな事は。兎に角、これで安心だから、瑞樹は心配しなくて良いからね?』
「うん、ありがとう愛生ちゃん。いつもごめんね?無理ばかり言って…」
『そんな事は気にしな~い。ボクに関わることでもあるわけだしね~。晩ご飯の準備をしてるんだったよね?邪魔しちゃ悪いなーそう言う事だから、瑞樹、また明日~♪』
「はーい。また明日、学校でね」
通話を終了して、スマホをテーブルに置く。ほっと一息…良かった~これで一安心だよ。
この件は解決できたけど……あーそうだった、次は私の問題を母さんに相談しないと!
そう思って母さんの方に目を向けると…。
「愛生ちゃんからだったの?電話。…何か問題でもあったの??」
「ううん、大丈夫だよ。…その、学校の事でちょっと、愛生ちゃんと相談してただけだから…」
「…ホントに大丈夫なの?…何かあれば、私にも相談して欲しいわ。」
昔から母さんは厳しかったけど…その分、優しかった。その優しさがすごく嬉しい。
ホントに何かあれば相談します…今はそれよりも。
「ありがとう、母さん…ホントに大丈夫だから…ね。それよりも?…あの、別の件で相談したい事があるんだけど…良いかな?」
「もちろんよー何かしら!?お母さんのできる事なら、何でも手助けするわよ!」
「ありがとう、母さん。その…あのね?最近、愛生ちゃん、お弁当を学校に持ってきていなくて…学食ばかりだから、その…ついでに愛生ちゃんのお弁当を作ろうかな~って、お弁当箱が家に余ってないかなーって。」
「う~ん、確かお父さんの使っていたお弁当箱が余ってたから…それを使うと良いわよ。
それよりも……瑞樹、それは愛生ちゃんのために作るんだよね?」
「え!?…あの…その…私のお弁当を作るついでに…って言うか、その…お料理の練習を兼ねてる…と言うか…えーと…」
「瑞樹…私はそんな事を聞いているんじゃないわよ?作る理由じゃなくて、作ろうと思ったあなたの本心を聞きたいの…それでどうなの??」
え!?いきなりそんなことを言われても…私がお弁当を作るのに、もう1つ作るのも、そんなに手間が変わるわけじゃないし…たくさん料理を練習もしたいし…。でも、そうじゃない、作ろうと思ったのは…。
そうだ!…今日、榎本さんとの会話の時だ…私はその会話を思い出しながら…。
『愛生ちゃん…すごく喜ぶと思うよ~♪』
…うん、そうだ…愛生ちゃんのためにお弁当を作ろうと思ったんだ。愛生ちゃんに喜んで欲しいと…その笑顔を見てみたいと…私の作ったお弁当で。
そう考えるとすごく恥ずかしくなってきた…顔が真っ赤になっていく…。何も答えずにいる私の姿を見て、母さんは満足したのか。
「うふふ…ホントに、瑞樹は顔に出ちゃうほど分かりやすく素直で良い子だわ。分かったわ!じゃあ、明日から…愛生ちゃんへの愛妻弁当を作る事にしましょう~♪」
へ!?今、なんと言いました…か??「あい…さい…弁当!?」
え!?私が…愛生ちゃんの…ために作るだけで?…何で…そうなっちゃう…の??
「かっ母さん!あの…意味が分からないよ!?」
「まぁまぁ気にしない~。今のところは愛生ちゃんのために作る…それが大事なことなんだから!…さぁ晩ご飯の準備しましょうか?ついでに、明日のお弁当のおかずの仕込みもしておきたいし…ね!」
「うっうん…」
私は母さんの言葉にイマイチ納得の出来ないまま、母さんと一緒に晩ご飯の準備と明日のおかずの準備を行った。
母さんに弄られて恥ずかしい思いはしたけど…でも、不思議と嫌な気持ちが無い事に気づいていた…むしろ嬉しい気持ちが大きい事に。
「愛生ちゃんのために何かしてあげたい」…昔から私がずっと思い、考えていた事。
それが今、私の出来る事ならば何も悩む事ではないよ…うん、明日は頑張ろうっと!。




