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第29話 「二・人・心・情」

「ふー良いお風呂だった」


お風呂からあがってきて、鏡の前で乾かしたばかりの長い髪にヘアブラシを通して梳いていく。

長くなった髪も最初はすごく戸惑ったけれど…今は手入れが楽しくて、つい髪をいじってしまう。



「…ふ~」


と溜息を一つつき、今日はあった出来事を思い出してみる…色々とありすぎたよ…ホントに疲れた…。

私は倒れるようにベットに入った。


あれから母さんの指導の元、料理・洗濯・掃除を行った。

今までは來海が殆ど家事を手伝ってた事もあり、私は一つも手伝ったことが無かった。

何もかもが初めての事だらけ…ホント今まで何もしてこなかったね……私って。


でも楽しかった…慣れない事ですごく疲れたけど、誰かのために行う仕事ってすごくやりがいがある!将来は、そう言った方面の仕事を行くのも良いかもしれない。

具体的に何が良いかは、今のところ分からないけど…『保育士』とか『介護士』とか…なのかな~?

…うん、今度、母さんに相談してみよう。



ふ~ホントに今日は疲れたよ…そっと目を閉じて、改めて今日の事を振り返ってみる。

学校であった出来事…特に愛生ちゃんの事を思い浮かべる。


(愛生ちゃんは相変わらずで冷静だし、ある意味…羨ましいよ!

どうしてあんな風に…平然と普段通りにやり過ごせるのかな……男の子になったというのに。)


なんかすごく腹が立ってきた…私は女の子になったけれども…そんな単純な事じゃない。

今までの15年間、男として生きてきた…急に気持ちを切り替えられるはずが無いよ!

愛生ちゃんだって…そうだ!私と同じ年数を女の子として生きてきたわけなのに…

もう以前の女の子だった自分は、無かったことにしている。


(でも…私の考え過ぎなのかな……自分で言うのもあれだけど、物事を深く考えすぎるから…

ううん、やっぱり…愛生ちゃんはおかしいよ!順応しすぎ!!)



「はぁ~」


感情が安定しない…イライラしたり、突然怒ったり、泣いたりと…。

男の時も感情が顔に出るほうだったけども…女の子になって余計に酷くなった。

感情に振り回されている気分だよ…ホントに良く分からない、自分自身の事なのにね。


「…でも」


(愛生ちゃんが男の子になっちゃった…現実にはあり得ない事なんだけど、

私の願いが叶った…気がするよ、昔から男の子だったら良いな~って思っていたし。)


いつも私は思っていた…愛生ちゃんが男の子であって欲しいと…。

それは同性として、側にいて欲しかったのか、または親友になって欲しかったのか…

私の中で明確な答えがあるわけでもない……漠然とした願いだった。

現実的ではない…私の勝手な妄想を思い描いてたのかも知れない。



(愛生ちゃんだけじゃなく、私も女の子に変化してしまった…。

それなのに、何故か私の心は拒否や拒絶をしていないんだよね……不思議。)


私は女の子になりたかったのかも知れない…今までの自分から変化をしたかった。

男の時の『僕』がすごく嫌いだった…男らしくなく自分らしくもない『僕』に。

みんなから虐められて泣いてばかりいる…そんな弱い『僕』が好きになれなかった。


今回、私が女の子になって最初はかなり戸惑ったけども…嫌じゃなかった。

寧ろ今は、「これで良かった」っと素直にそう思える。


(まぁ今のところはそれでも良いのかな?男の子でも女の子でも関係ないよね、

私が愛生ちゃんに何か出来れば良い訳だし)


お互い姿形が変わろうとも、その気持ちは変わらない…私は思っている。

いつも私を助けてくれる頼りがいのある、愛生ちゃん。

愛生ちゃんへ何かと世話を焼く、お節介な私。


お互いが性別を変わることでバランスが取れたように思えるし、それはそれで良かったのかも…。

そう考えると、今日悩んだことがすべて吹っ飛んだ気がする。

一気に疲れが出て、瞼が重たく感じた。



(ふぁ~疲れちゃったから…もう寝ちゃおう……おやすみなさい…愛生ちゃん…)


感謝の言葉を心に思い描きながら…微睡みの中に入っていった…。





「あー良いお風呂だった~気持ち良かったよ!」


今日一日、瑞樹の様子が気になり、ベットに腰をかけ、学校であった出来事を思い返してみる。


(ホント…瑞樹ってうじうじとしちゃってさ~悩んでも仕方ないのにね~)


ボクだって、戸惑わない訳がない…感情のある人間なんだしね!。

でも仕方ないと思っているし、悩んでも何も始まらないし、変わるわけでもない。

瑞樹を助ける事が出来れば…どっちだって良いわけだしね!男の子でも女の子でも。



(まぁでも、瑞樹が女の子になっちゃったか…それは素直にビックリしたな~。

すごく可愛くなったし…ホント瑞樹には驚かされてばかりだね!

女の子になれば良いな~って思っていたからね…本当になっちゃうし!)


「それに…」


(ボクが男の子になっちゃったけど…その方が良いよね!今の瑞樹にとっては)



結果として、これで良かったと思っている。瑞樹が女の子になれば、まず男の子から虐められる事は少なくなるだろう。…同性のイジメはあるかもしれないけど、それはボクがフォローできるし!

ボクが男の子になれば、今までよりも、ずっと瑞樹の事を守れるから。

…それよりも。


(後は瑞樹がもっと、ポジティブに明るくなってくれれば良いのにな~)


今日だって…そうだ!いつまでもグズグズと悩んでいたようだし…。

そんな事をいつまでも悩むよりは、これからの事を考えて行かないと…もっと前向きにね!

そうは言っても…う~ん。


(瑞樹じゃあ…すぐには無理かな……その分、ボクがサポートしていけば良いか!

女の子になってすごく可愛くなったわけだし、前より友達も出来やすくなったじゃないかな?)



そこが瑞樹の良いところでもあり、悪いところでもある。

臆病で慎重であるが為に、何もできないところが……ボクはその反対の性格なんだけど。

ほっとけないんだよね…そんな瑞樹を見てると、つい手を差し伸べてしまう。うん、ボクが側にいないとね!



(うん!瑞樹のために色々と頑張らないと…男の子なんだし!!)


「よーし!明日のためにしっかりと睡眠を取らないと……おやすみ…瑞樹…」



ボクは、そう呟くと…ゆっくりと微睡みの中に入っていった。

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