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番外編その3 「來・海・決・断」 朝比奈 來海 サイドストーリー 後編

今回も來海視点の番外編です。

第15話 「駅・前・散・策」~第18話 「親・友・登・場」と同じ時間です。

読むときはご注意ください。

でも、なんだろう…「女の子」になったお兄ちゃんに、

以前のような感情が薄くなっていると言うか…違う感情に変わりつつあるのか…

未だにその答えが見つからない。



それから私たちはバスに乗り、休日のお昼前もあってバスはかなり空いてた。

お兄ちゃんと並んで座り、いろいろな話をした。

久しぶりのお兄ちゃんとお出掛け…それに楽しい会話。

私にとって、すごく望んでいた出来事…なのに、何かが違う…。

私が思い描いてたものと、違う…何だろう。


気の所為かな?私が期待し過ぎなのかもしれない…。

せっかくのお兄ちゃんとデートなんだから…うん、今を楽しまなきゃね!


「駅前に付いちゃったけど…お兄ちゃんどうしよっか?」


「んーそうだね…朝ごはんを食べてから、そんなに時間もたってないし…

先に雑貨屋さんに行く?僕は場所を知らないから案内してくれる?」


「OK!じゃあついて来てね!案内するよ」


私は意気揚々とお兄ちゃんの手を引いて歩く。

恥ずかしがっていたお兄ちゃんも諦めたのか?素直に応じてくれた。

ふと、小さい時の事を思い出す…いつもは逆でお兄ちゃんに手を引かれて、私がついていく感じだった…とても安心する、お兄ちゃんの温かい手。


…ん!?何かが違う、すごく違和感を感じる。

あの頃と違う立場にいるよね…私たちって。あれれ!?良いのかな?これで。

まぁ良いかな?まずは気になる、あの雑貨屋さんに行こう!絶対にお兄ちゃんは気にいるはずだよ~。



お兄ちゃんと色々とお話ししながら少し歩いて…目的の雑貨屋さんに到着した。

お店に入らなくても、お店の前に並んでいる品物を見ているだけで分かる…これは私の趣味と合う。

お兄ちゃんもきっとそうだ!…お兄ちゃんを見てみると、うん、目がキラキラしてるよ~♪


「來海!これとか、すごく可愛いよ!!猫の肉球消しゴムとか…

買うのはいいけど…消しゴムとしては使いたくないよー」


「だよねーお兄ちゃんこれ見て!この猫の手のシャープペン、可愛いんだけど…

持つとすごく重いよーこれで書いてると指とかすごく疲れそうだよね」


猫や犬、特に小さい動物ものは、お互い好きだからどうしてもそっち系の商品に目が行っちゃうんだよね!

あれでもない、んーこれ何かどう!?って感じで、色々なものを見て何点か買い物をした、お兄ちゃんも何点か購入していた。



うん、すごく満足~♪…うん、すごく楽しかったんだよ……でも、何だろう。

同性の友達とショッピングに来ている感じ!?あれ!?おかしいな~。

でも、お兄ちゃんを見てみると…すごく満足した顔をしていて、私の考えなど空の彼方へ吹き飛んで行く……うん、その笑顔も可愛いよ♪


「良い買い物したよね~お兄ちゃん」


「うん!ここはまた来たいな~色々と集めたいし…

來海には感謝だよ、良いお店を教えてくれたんだから」


「お兄ちゃんも喜んでくれて…連れて来て良かったよ♪」


うん、その一言に尽きる。本当に良かった…すごく喜んでくれているし、お兄ちゃんのその笑顔を見れただけで、私はとても満足だよ♪私もつられて笑顔になっていた…。



「あの…來海?そろそろケーキ屋さんに行ってみない?」


「うん!行く行く~少しはしゃぎ過ぎたから休みたいかも」


「じゃあ行こうっか!何でも注文して良いからね?僕のおごりだから」



朝からかなりテンション高めだったので、少し疲れたかも…座ってゆっくりしたい気分。その提案を断る理由もないしね~!

お兄ちゃんの奢りっていうのも最高なわけだし!!何を食べようかな~♪

色々と考えを膨らませていると、お兄ちゃんからそっと手を差し伸べてきた。

私はすぐに手を繋ぐ、昔から変わらない…お兄ちゃんの温かい手。

胸の中まで暖かくなるよ…お兄ちゃん大好き!!


今度はお兄ちゃんに連れられて、駅前のケーキ屋さんに向かった。



駅前のケーキ屋さんは、お客でいっぱいだった…それに、女性客がいっぱいだしね!

女性客が入りやすく、とても可愛い雰囲気~♪ここだと何時間でも話がすごく弾みそうだよ!


「お兄ちゃん、このお店なの?とても可愛くて雰囲気の良いお店だね!」


「うん、僕の学校でもかなりの評判みたい、僕もこの店に入るの…実は初めてなんだよね」


「え!?そうなんだ…私と一緒で初めてなんだね?」


「あのその…うん」


そう答えるとお兄ちゃんがすごく照れていた…うん、可愛いよ♪

恥ずかしくなったのか、私の手を引いてお店の中に入る。



カウンター前に色々なケーキがショーケースの中に陳列している。

見ているだけでも楽しい~♪どれもすごく美味しそう…どれにしようかな~。


「來海?何でもいいからね、好きなものを選んでよ」


「うん!でもいっぱいあってどれも美味しそう…悩むな~」


ホント色々と種類があり、みんな美味しそうだから…困っちゃうな~全部食べてみたいぐらい…無理だけど!…ん~絞っていくかな?

今はタルトが食べたい気分…それで甘酸っぱいものが…あった!飲み物はさっぱりしたもので…うん、ストレートティーだね。…お兄ちゃんも決めたみたい。


「僕はイチゴのショートケーキにするよ、飲み物はミルクティーで」


「私は…決めた!ブルーベリータルトにストレートティーで」


「分かったよ、会計済ませてくるね」


お兄ちゃんがレジに向かい、それぞれの注文を告げお金を支払う。

店員さんがシューケースよりそれぞれのケーキを取り、トレイに乗せ、もう一人の店員さんが飲み物を用意する。私たちはそれぞれのトレイを受け取り、飲食スペースの空席を探す…。

ちょうど二人分の向かい合わせの席を発見!お兄ちゃんとそこに席をついた。


「ちょうど空いてて良かったね!お兄ちゃん」


「うん、時間的にも人がいっぱいだったしね…お腹も少し空いて来てたから、

ホント良かったよ、じゃあ…食べよっか!」


「うん!美味しそうだよね~♪」


早速、フォークでタルトを食べやすい大きさに切って、パクリっ!

ん~ブルーベリーがとても甘酸っぱくて…うん、すごく美味しい!

お兄ちゃんのほうを見てみると、すごく美味しそうにショートケーキを食べてる。

うんうん、見ているだけで幸せになってくる…ホント可愛いよ~♪


「このタルト、すごく美味しい!」


「僕のショートケーキもすごく美味しいよ!みんなが絶賛するのも分かる気がするよ…

値段もそんなに高くないし」



そんな話から始まって、お兄ちゃんと色々な話をした。

家での事、学校の事、特に友達の事とか…主に愚痴?…って、あれ!?これって普通にガールズトークのような気がする…おかしいな~お兄ちゃんとデートなのに。

お兄ちゃんが「女の子」になって、ドキドキと言うより安心する?…何とも言えないこの感覚はいったい何なんだろう…。同性になってしまったから??


でも楽しいから問題は無いのかな?…男の子でも女の子でもお兄ちゃんはお兄ちゃんなんだから。

今日だって、ここに連れて来てくれたのも…いつも助けてくれるお礼だって言うし。

私は助けたつもりもないんだけど…当たり前のことをしただけなのにね!

…そう言うところが、うん!お兄ちゃんらしいな~と思った。



楽しい時間って…どうしてこんなに時間が経つのが早いんだろう?

そろそろ帰らないと「2人の帰りが遅い」って、お母さんを心配させちゃう。

もっと話していたいけど…別にここじゃなくても、家でお話しできるしね!

…家族の…妹の特典だと思う。


「あ!お兄ちゃん、もうこんな時間だよ、早く帰らないと」


「ホントだ…ついつい楽しくて長居しちゃったね」


「そうだね!…バスの時間を見に行かなきゃ…お兄ちゃん、早くいこ?」


「うん」



私たちは急いでお店を出た…もちろん手を繋いでね!

やっぱり…手を繋いでも以前のようなドキドキはない、寧ろ、落ち着く。

自分は一人じゃないんだ…という安心感、そんな感覚…うまく表現できないけど。


なんだろう…私の勘違いだったのかな?

でも私は、お兄ちゃんのことが好き…それは今でも変わらない。

でも、私の言う「好き」って一体どんな感情なんだろう…恋!?愛!?…良く分からない。



あれこれ考えていると、駅前のバス停留所に着いた。

時間を確認してみると…後30分ぐらいでバスが到着するみたい。他の場所に行く時間もないし、近くのベンチで休むことになった。


「お兄ちゃん、今日は楽しかったね♪また遊びに来たいな~」


「うん、良いよ。僕も楽しかったしまた来ようっか?」


やったー!お兄ちゃんと次のデートの約束ができた~♪

いつ行こうかな~すごく楽しみだよ!またあの雑貨屋さんにも行きたいし~♪

そんな楽しい事を考えていたら、誰かが私たちに近づいてきた。



「ねぇねぇ、君たち可愛いね?2人で遊びに来てるのかい??」


声がする方向に向いてみると…見たこともない男性が2人。

見た雰囲気だけど大学生の感じがする……何か嫌、この人たち。

格好見ても、1人は茶髪で耳にピアス、もう一人はロン毛にチェーンを身に着けている。

どう見ても、真面目な大学生には見えない…2人ともニヤつきながらこちらに近づいてくるし。

私はすごく怖くなって、お兄ちゃんに身を寄せる。それを感じ取ったのか、私の事を一目見て頷き、2人のほうに顔を向ける。



「あのその…僕たちは今から帰るところなんですけど…」


「おー良いじゃん!君って僕っ娘なのか、それよりも今から俺たちと遊びに行こうー

カラオケとか行ってさースッキリしようぜ?」


お兄ちゃんの言葉を無視して、茶髪の男はそう答える。

これって私たち…ナンパされてるって事なのかな?…それよりスッキリしよう!って何!?

こっちは嫌な思いしかないんだけど……って怖くて、口には出せないけど!


何かを考えていたお兄ちゃんは、私の手を握り…もう一度、私のほうを見て軽く頷いた。

この場から離れるつもりだね!お兄ちゃん。

二人でベンチから立ち上がり、この場所から立ち去ろうとしたんだけど…


「まぁまぁ、そんなに焦らなくても大丈夫だぜ?」


「そうそう、お兄さん達が連れて行ってやるからな、車もあるし」


いつの間にか2人に囲まれていた!

怖い!怖い!!私の体が震えだす、声も出せない。…それが伝わったのか、お兄ちゃんが握っている私の手を…キュッと力を込めて握ってきた。


「あの…早く帰らないと、両親が心配するので…その…失礼します!!」


そう言いながら、お兄ちゃんが2人の間をすり抜けようと走り出した!

私もその手を引かれ、お兄ちゃんの後に着いていく。

…でも逃げられなかった。茶髪の男にお兄ちゃんの腕を捕まれていた。



「おいおい、お前、調子乗ってんじゃねえよ!…俺達を怒らせないでくれよ?」


私たちは、その瞬間…時が止まった感じがした。

周りが動きが止めモノクロとなり、今までの街の喧騒は全く聞こえなくなった。

え!?これって…あの頃のことが思い出される…。


『ワン!ワン!!ウゥゥーワン!!!』


あの子だ……怖い!怖いよ!!お兄ちゃん、助けて~!!!

私は、目を瞑り、恐怖に耐えるしかなかった。


私は成長をしていなかった…あの頃から弱いままだった。泣くしか出来ないすごく弱い存在…何時までも私は守られてばかりだった。

いつも助けてくれるお兄ちゃんも、今は危険な状態…なのに、私は何もできない。

こうやって現実に目を反らし、誰かの手を差し出してもらうのを待つだけ。




ふと、誰かに声をかけられる……それでようやく時が動き出した。


「えっと、來海ちゃん、大丈夫だったかい?」


そう言いながら、私の頭にポンと手を乗せてきた。

私は瞑っていた眼をそっと開き、声をする方に顔を向ける……植草先輩だ。

…それから周りを見てみると、2人組の男たちは、いつの間にかいなくなっていた。

植草先輩が退けたのかな?…すごいです!植草先輩!!


「あっはい!ありがとうございます、植草先輩。助かりました…」


「そっか、なら良かった」


そう言いながら、笑顔になる植草先輩を見ていると…

ドクッン!…私の胸の中で何かが鼓動した……あれ!?これって…。

あの子から私を守ってくれた、あの時のお兄ちゃんを見た時と同じ感覚…。

これって…まさか……。

私は、慌ててお兄ちゃんのほうを見る…

未だに手を繋いだままでいる、ホッとしているお兄ちゃんを。

あの時のドキドキした感覚はなく、最近感じるとても安心できる感覚。

そっか…そうなんだ、お兄ちゃんに恋をしていた訳じゃない。私を救ってくれる「英雄」に恋していたんだ。

私が「お兄ちゃん」に拘っていたのは、女の子のなってしまったのを認めてしまうと、私の英雄の「お兄ちゃん」が消えると思っていたから…。



それから私とお兄ちゃんは、植草先輩にお礼を言って、その場で分かれた。

それからすぐに定期バスが到着して、バスに乗り込んだ。それから空席を見つけて、2人が並んで座る。

ようやく緊張が解けて、ホッと一息…はぁ~ホントに危なかったよ。


「ホント危なかったね、お兄ちゃん。

植草先輩が来てくれなかったら、どうなってたんだろ…」


「うん、俊介には感謝だよ…でもホントあいつ、イケメン過ぎるよ!

あの瞬間に現れるとか…狙ったかのようだよ」


「もう…お兄ちゃんたら、植草先輩に失礼だよ?」


お互いにそんな冗談を言えるぐらい戻っていて……でもホントに良かった。

2人とも何もなく無事だったから、植草先輩に感謝しきれないね!

ふと、お兄ちゃんが視線を下に落として…


「でも…その、來海ごめんね。何か危険な目に合わしちゃったし、

せっかくの休日が嫌な出来事で終わっちゃうし」


「ううん、そんな事ないよ!私、久しぶりにお兄ちゃんとお出掛けができて

すごく楽しかった♪…確かに怖い思いはしたけど…それでも楽しかったよ」


「あの…ありがとうね」


そう言いながら、お兄ちゃんが私の頭を優しく撫でてくれた。つい、嬉しくて思わず、


「…ありがとう…お姉ちゃん」


「ん?何か言った」


「ううん、何でもないよ♪」


すごく恥ずかしかった…でも、もう認めなくてはいけないね…「お兄ちゃん」が「お姉ちゃん」になった事を。

でも、もう少しだけ「お兄ちゃん」を感じていたかった…せめて今日だけでも。

そう思うと…急に甘えたくなってきちゃった♪…良いよね?お兄ちゃん!!



明日には、こう…呼ぼう、お兄ちゃんが学校から帰ってきた時に。



「おかえり~お姉ちゃん」…って。

來海編はこれで終わりとなります。

來海の気持ちをいっぱい書けて、すごく楽しかったです~♪


明日からまた本編に戻りますので、よろしくお願いします!



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