第27話 「姉・妹・和・解」
…分かっていた…分かっていたはずなのに、
悔しかった…涙が…止まらなかった。
愛生ちゃんはいつも冷静だ、悔しいぐらいに前向きだし。
それに引き替え、僕はいつもこうだ…。
ネガティブに物事を考え、一人で悩み、言いたいことをいつも我慢している。
僕は、愛生ちゃんの事が…羨ましかった。
自分に正直で、思ったことはそのまま行動に移す、
そんな愛生ちゃんを羨ましくもあり、すごく頼りにしていた。
僕は、変わりたかったのかも知れない…。
自分らしくない仮初な僕の殻を破り、ありのままの自分に…。
そう考えると、僕が女の子になったのも…ある意味、願いが叶ったのかも知れない。
それと、愛生ちゃんの事を「男の子になって欲しい」と言う…僕の願いもね。
そう考えると、今まで感じていた、胸のモヤモヤやイライラが無くなって、
ずいぶん気持ちが落ち着いてきたみたい。
「ごめんね、愛生ちゃん、八つ当たりしちゃって…。」
そう呟いて、目の前にいない愛生ちゃんに感謝しながら、自宅に着いた。
「ただいま~」
そう言うと必ず、妹の來海が迎えてくれる。
…今日だってそうだ!パタパタっと走ってきた。
「あ!おかえり~お姉ちゃん」
……え!?おね…えちゃ…ん??
耳を疑った…確か…お姉ちゃんって言ったよね??
僕は思わず声を出していた。
「へ?は?おねえ…ちゃん??」
そう聞くと、來海はニコニコしながらこう言った。
「だってーお兄ちゃんは女の子になってしまったでしょ?
未だにお兄ちゃん、と呼ばれるのはおかしいじゃない!」
あれ!?おかしいな~朝、学校行く前に來海と会った時は、
普通に「お兄ちゃん」と言ってたはずなのに…何かあったのかな??
でも…未だに僕が女の子になった…って言う、自覚があまり感じられなくて…。
まだ夢のような気分なんだけど…男の子であれ、女の子であれ、
僕は僕だしね!……でも、やっぱり違うのかな?
「え?あ…うん、そう…なのかな?」
「そうそう!可愛いお姉ちゃんなんだからー」
またもや聞き慣れない言葉を耳にした…。
かっかわ…い…い!?…可愛い!!??この僕が???
可愛いという言葉にまだ慣れない…男の時でも言われることがあったけど
身近で数限られた人に、言われたぐらい…愛生ちゃんのおばさんとか。
だから、どう反応をして良いのか、どう答えれば良いのか…分からず、
僕の頭の中は、パニック状態!!
…でも、可愛いって言われて悪い気はしないよね…。
何だろう、恥ずかしいはずなのにすごく嬉しい…不思議な感覚。
思わず僕は…
「そっそんなことないってば!でも…僕ってそう言う風に見えるのかな…」
「あ!」
突然、來海が大きな声を出してので、ビックリして僕は、固まった。
何が起きたのかさっぱり理解できず…
「えっ!?何!?どうしたの??」
僕は焦りながらどうしていいか分からずオロオロしていると…
來海は少し怒った顔で、右手の人差し指で、僕に指してこう言った。
「お姉ちゃんはもう女の子なんだから、『僕』はおかしいでしょ??」
…はい!?どういう事なの?『僕』って言うのダメなの??
え~と、僕は今、女の子なんだよね…やっぱりおかしいのかな?
女の子だとやっぱり…『私』なのかな??
「えー!?んじゃ、あのその…わっ私?」
僕…じゃなくて…私がそう答えると、満足した顔で來海は
「そうそう!女の子なのだからね!!言葉使いには気をつけないとー
お姉ちゃん、分かった!?」
「はっはい!」
あわわ…ぼっ…私は思わず返事をしちゃったよ…
こういう時の來海は、すごく迫力あるから…マジ怖いよ!
そう言うところはすごく母さんに似てる…さすがは親子だよ。
…昔から來海には、とても敵わなかったな~すごく頑固者だし。
素直に聞いておかないと、機嫌を損ねて、
一週間、口を利いてくれなくなった事もあったぐらいだから…。
ここは素直に聞いておくしかないね…うん。
「うん…分かったよ、気をつけるね」
來海は、「うんうん」と満足した顔で部屋に戻っていった。
…疲れた、まさか家に帰ってからも、こんなに疲れるとは思ってもいなかったよ!
はぁ~まぁいっか…私も部屋に戻ろうっと。
今回の話で本編は、少しお休みにさせていただきまして…
明日からは以前より予定してました、來海視点の話を投稿していきたいと思います。
3話ほど上げる予定です。それが終わり次第、また本編に戻りますので、
よろしかったら読んでいただきたいと思います、よろしくお願いします!




