第02話 「母・親・説・得」
僕の部屋は、家の2階にある、妹の部屋は隣の部屋だ。
さっきドアが閉まる音がしたから、妹は部屋に戻ったはずだ。
そうなると今は母さん1人か~、まだ話しやすいはず!
ドキドキしながら、階段を下りていった。
食卓に向かうと母さんは用事をしていた…。
こちらを向かずに声をかけてきた。
「あら?瑞樹おはよう。來海が起こしに行ったけどまだ寝てたって言ってたけど…
ちゃんと起きたのね。朝ご飯さっさと食べちゃいなさい」
そう言いながら、食器を洗っていた。
目があえば、嫌でも見られるから話すしかないけど
こちらを向かずに、作業している、すごく話しかけずらい…。
…どうしよう。こちらから声をかけるべきだよね…。
この状況で、とても朝ご飯が喉を通りそうにもないし…。
悩んでも仕方がないかな…おし!僕から声をかけよう!
「あっあのその…母さん…」
勇気をふり絞って声をかけてみた
「あらどうしたの?朝ご飯食べないの??」
母さんがこっちを振り返る。
数秒の沈黙…母さんは僕の顔を見ながら
固まっていた、目をぱちくりしながら。
「…どちら様?瑞樹、それとも來海のお友達かしら??」
そう言う反応するよね…やっぱり…。
髪が長くなったし、声も女の子だし…すぐ見て僕だとは分からないよね。
母さんはずっと僕を見ながら、何かに気付いたようだ。
「でも…そのパジャマは瑞樹の…」
「うん…僕だよ…母さん」
「母さんは息子を生んだはずだけど…どう見ても女の子よね?」
「それが…朝起きたら…こうなってました…」
それから母さんに僕の幼い時の思い出話を語った。
愛生ちゃんとの出会いや小学校で大けがしたこと、中学校で妹と大喧嘩したこと…。
僕じゃないと分からないような恥ずかしいことも…その内容は聞かないで!!
母さんは首をかしげながら、僕の話を聞くと納得しながらも
納得できないと言った複雑な顔をしながら話を聞いていた…。
僕が話し終えると、母さんはうーんうーんと唸りながらも
意を決したように話しかけてきた。
「あなたが本当に瑞樹なのね?」
「…うん」
「…未だに信じられないけど、話を聞けば聞くほど、瑞樹だし…
うん、いいわ…母さんは瑞樹を信じます」
「ホント!?」
母さんは僕の事を信じてくれた…。こんなに嬉しい事はない。
気持ちがあふれてしまって、ううっ…涙が出てきちゃった…。
僕のその姿を見てか、母さんはいつもの優しい顔をして
「子供を信じない親はいないでしょ?ほら!そんな顔をしないの」
そう言いながら優しく僕の頭をなでてくれた。
いつもの母さんだ、すごく安心できる、相談してよかった。
「…ありがとう、母さん」
「これからの事を考えていきましょ…今日は土曜で学校休みだし」
「うん、そうだね」
幸い今日は土曜日…。学校がないから人前に出かける事もない。
母さんが信じてくれている…それが何より嬉しかった。
「…あなたの下着とかを買ってこなければ行けないわね…
ちょっと計るからこっちに来なさい」
え?!あーそっか…僕はいま女の子だよね。
背もかなり低くなっちゃったし、今までの僕の服が全然合わなくなっちゃったしね。
そうなると学校の制服も合わなくなるんだ…困ったな~。
とにかく今のところは母さんに従おう、複雑な気持ちだけど。
「…うん」
僕は返事をして、1階にある母さんの寝室に向かった。