第17話 「兄・妹・危・機」
「あ!お兄ちゃん、もうこんな時間だよ、早く帰らないと」
「ホントだ…ついつい楽しくて長居しちゃったね」
「そうだね!…バスの時間を見に行かなきゃ…お兄ちゃん、早くいこ?」
「うん」
そう僕が答えると、どちらかが声をかける訳でもなく、來海と手を繋ぐ。
お店を出て、急いでバスの停留所に向かった。
僕たちが住む住宅団地へ向かう定期バスが来るのには、少し時間があった。
でも他の場所を見に行く時間もなく、歩き疲れたのもあって
近くのベンチに來海と腰を掛けた。
「お兄ちゃん、今日は楽しかったね♪また遊びに来たいな~」
「うん、良いよ。僕も楽しかったしまた来ようっか?」
來海とまた遊びに来る約束をしていると、誰かが僕らに近づいてくるのに気が付いた。
見るからに大学生っぽい男性が2人、すごくチャラい感じがする…嫌な感じ。
來海のほうを見るとすごく嫌そうな顔をして、僕に身を寄せていた。
ニヤニヤしながら、茶髪のピアス男が話しかけてきた。
「ねぇねぇ、君たち可愛いね?2人で遊びに来てるのかい??」
…ナンパだ。
まさか僕がナンパされるとは思ってもいなかった。
ここは兄として、來海を守らないと…。
「あのその…僕たちは今から帰るところなんですけど…」
「おー良いじゃん!君って僕っ娘なのか、それよりも今から俺たちと遊びに行こうー
カラオケとか行ってさースッキリしようぜ?」
僕の話を聞いてくれる訳でもなく、勝手に話を進めているし…。
これって何かヤバイ感じがする…バスの時間は仕方ないけど、次のバスにしよう。
兎に角この場を後のしたほうがいいかも…。
そう思って、心配そうに見ている來海の手を握り、ベンチから立ち上がろうとすると…。
「まぁまぁ、そんなに焦らなくても大丈夫だぜ?」
「そうそう、お兄さん達が連れて行ってやるからな、車もあるし」
いつの間にか2人に囲まれて、逃げられないようにされてしまった!
兎に角、すごく怖いけど…声を出さなきゃ!
「あの…早く帰らないと、両親が心配するので…その…失礼します!!」
そう言って立ち上がり、2人の間をすり抜けようとすると
僕の腕をつかまれた!
「おいおい、お前、調子乗ってんじゃねえよ!…俺達を怒らせないでくれよ?」
そう怒鳴られて、僕の頭の中でフラッシュバックする。
そう…中学からずっと、僕はいじめを受けていた…ある2人組の不良達から。
いじめの理由は、幼い時からずっと変わらない…僕が「男らしく」ないからだ。
その2人からも暴言と暴力はいつも受けていた…僕の中に「恐怖」を植え付けられるほどに…。
突然、その不良たちとナンパしてきた男達の顔が重なる。
体が恐怖で固まる、呼吸すら忘れるほどに…。手と足が震えだし、声も出せない。
こわい!こわい!こわい!!、目の前の景色が暗くなっていく…。