第12話 「瑞・樹・混・乱」
「う~ん、良く寝た~」
昨日は精神的に疲れてたらしく、すぐ眠る事が出来た。
いつもの怖い夢も見る事もなく、清々しい朝…。
…一部は除いては!
体を見てみる…いつものパジャマじゃない。
黄色の花柄、とても可愛らしい女の子もパジャマだ。
…やっぱり、女の子のままなんだよね…。
「長い夢を見てました…終わり!」って
言うシナリオじゃなかったわけですよね…はぁ~。
そう溜息を一つつきながら、ベットから起きて、大きく体を伸ばして…「んー」
壁にかけてある大きな鏡の前に立ってみる…。
一昨日の男だった僕の面影はなく、可愛らしい女の子がこちらを見ている。
妹の來海に似ている…瓜二つほどではなく雰囲気が似ている、やっぱり兄妹だね!
活発な來海の感じじゃなく、控えめの感じがするね僕の方は…その辺は性格が出ているのかな?
昨日はあんなにパニックだったはずなのに、少し落ち着いてきている自分に驚く。
突然女の子になっているのに…心の奥底では、「これで良かった」って思う感情がある。
その理由が分からない…15年間、男として育ってきてはずなのに…不思議な感覚だった。
「良く分からないや…」
そう呟いて、我に戻ると昨日、お風呂に入らずにそのまま寝ていたことを思い出す。
髪と体が汗でべたついてるはずだよ…先にシャワー浴びてくるかな?
母さんと妹に散々着せ替えさせられて、精神的にオーバーヒートしてしまったからだ。
そう思いだすと恥ずかしくなって、顔が真っ赤になる感じがする。
「…シャワー浴びてこよう」
シャワー浴びれば、冷静になれると思い、着替えとバスタオルを持って
お風呂場へ向かった。
台所では、母さんと來海が楽しそうに話をしながら朝食を作っていた。
挨拶はまた後でもできるからって、そう思いそのままお風呂場へ向かう。
脱衣場でパジャマと下着を脱ぐ。裸の僕の姿が大きな姿見の鏡に映し出される。
まだ夢を見ているような感覚…これは現実ではなく幻じゃないのか?ってさえ思えてくる。
無理もないかな?昨日変わったばかりで、この現実を受け入れていないのだから。
その割に冷静だ…女の子の体を見ても恥ずかしいとか見てはいけないとか、そんな感情がない。
改めて男じゃなくなった事を痛感させてくれる、胸のふくらみと…えっと下の方と…。
ガチャ!
突然ドアが開いて、母さんが入ってきた。
「あら?瑞樹おはようー、あなた…鏡の前で何をしているの?」
…鏡の前…今の僕は裸で……えっ!?
「きゃあぁぁぁ!!」
そう叫びながら、僕は慌てて浴場に入った。
僕はいったい何をしていたんだろう!?恥ずかしい!すごく恥ずかしいよー!!
熱くなった体をシャワーで冷ますことに必死になっていた。
シャワー浴び終えてから、部屋着に着替え、朝食を食べてる時に
あれこれ母さんから聞かれても、僕は何も答えられずに黙々と朝ごはん食べていた。
当然、朝ごはんの味を全然覚えていませんでした…ごめんなさい!母さん、來海。




