第10話 「愛・生・無・双」
「それはそうと…」
「え!?何??」
「瑞樹のその服装…可愛いよね?今の瑞樹に良く似合ってるね…
自分で買ったの??」
「なっ何を言ってるの!?そんな訳ないじゃないか!」
何を言い出すのかと思ったら、服装が可愛いとか似合っているとか…
恥ずかしくなるようなことを言ってくるよ…僕はどう反応すればいいの!
「あの…ぼっ僕の体が小さくなっちゃった所為で、今までの服が…その、着れなくて…
それでね?妹の來海にお願いして服を借してもらったんだよ」
「ふ~ん、そうなんだ。ちょっとよく見せて」
そう言いながら僕の近くまで、愛生ちゃんは近づいてくる。
へ!?近くでまじまじと見られるの?そんなの恥ずかしいよ…。
どう反応して良いか分からず、たぶん顔を真っ赤にしている
僕の目の前まで近づいてきた愛生ちゃんが
「えいっ!」
かけ声と共に両手で僕のスカートを捲ってきた……え!?
「きゃあ!!」
僕はそう叫びながら、慌てて両手でスカートを抑える。
そのままその場にペタリと座り込んでしまった。
「…白か」
そう言いながら「瑞樹らしい」とか言いながらニヤニヤしてる。
僕らしいとか何だよ!何でスカートを捲られないといけないんだよ!!
すごく腹が立って、僕は涙目になりながら愛生ちゃんをキッ!っと睨んだ。
「うん、男の子がスカートを捲りたくなる気持ちがよーく分かったよ」
「そんなことを力説されても僕には分からないよ!愛生ちゃんのバカっー!!」
「あははーまぁまぁそんなに怒らない、怒らない、ジョークだよジョーク」
ジョークで済ませないでよ!僕のこの恥ずかしい思いはどうしてくれるんだよ!!まったく。
愛生ちゃんはお腹を抱えて、すごく笑っているよ…腹が立つ!また僕にいたずらをして…。
僕は顔を真っ赤にして、愛生ちゃんを睨み続けた。
当然、愛生ちゃんは知らぬ顔だった…ホント愛生ちゃんは。
「まぁ冗談はこれぐらいにして…瑞樹、こっちに来て、座りなよ」
「…うん、もっもう変なことは…しないよね?」
「…して欲しいのかな?み・ず・き・ちゃん!」
「へ!?なっ何を言ってるんだよ、愛生ちゃんのばかぁぁ!!」
「あははー」
そんなくだらないやり取りから他愛もない話へと変わっていって、
いつの間にか、いつもの2人に戻っていた…。
やっぱり愛生ちゃんといると安心できるんだよね…不思議と。
小さい頃から、いつも一緒だった2人…それが当たり前の風景だった。
どこへ行くにも、何をするにも、いつも一緒に行動をしていた。
世間から見ると、仲の良い姉と弟って感じに見えてたかも知れない…。
実際、愛生ちゃんのほうが誕生日は早かったしね、今も年上だし。
僕はそんな関係が何時までも続けばいいな~と思っていた。
たぶん、愛生ちゃんも同じ考えを持っていると思う。
いつも僕を守ってくれていた、男勝りの愛生ちゃん…。
そんな彼女が、男の子になってしまった…。
僕は女の子に…でも、この事で関係が変わるとは思えない。
そう…いつもの2人だ、これからもずっと…変わらない。
無双と言うほど無双じゃないけど…。
いじめたくなるよね?
瑞樹、ごめんなさい