表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
部活戦争  作者: 御伽屋
1/1

1限 転校

大亞悶(だいあもん)()高校。

幼稚園から大学まで完璧にエスカレーターで勧める名門中の名門。いわゆる、金持ちの学校だ。

幼い頃から英才教育を行い、多額の寄付により成り立つ学校である。

学校の隣には、生徒が暮らす「寮」が存在する。ほとんどの生徒が中学校からここで暮らしている。

外観はまるでホテルのようだ。

また、この学校が有名なのには別に意味がある。

それは、この学校は世界でも稀に見る「部活動」に力を入れる学校なのだ。

勉学よりも部活動を優先し、幼い頃から管理された中で徹底的に一つの事を極める。

スターになるべくして成る生徒達ばかりだ。

今まで数々のスターを世に送り出し、その名は世界に馳せた。


そんなエスカレーター式の学校の生徒は、変わり映えがなく、幼稚園から現在に至るまで生徒の数に変動と刺激は少ない。

いつものメンバーで、いつもの生活。

彼らは常に退屈している。

これも、金持ちの学校ならば良くある話かもしれない。

様々な部活が(ひしめ)()い、向上を目指している。大会ならば、優勝して当たり前の学校なのだ。


そして、そんなブルジョワ世界の学校に飛び込んだ・・・飛び込まされた悲運のオレ、義経(よしつね)

もちろん、オレの家は金持ちでもないし、人より秀でている特技も持ち合わせていない。

およそどこにでもあるような一般家庭だ。

単純に親の転勤のせいで、知り合いが経営するこの学校に転校出来る事になったのだ。


「とんだ、ラッキーボーイですよ。義経君」

目の前を歩く長身で眼鏡をかけ、いかにも委員長オーラを醸し出す彼はこの学校の生徒会長らしい。名は、鈴木。その声が廊下に響く。大きな講堂を生徒会長と義経は歩く。本当に生徒がいるのかと思うくらいひっそりとしている。

「ここは、君のような低級の家庭が通えるような学校では決してない。どうやら、学校の上層部に知り合いがいてコネで入ってきたらしいが、本当ならばどんな努力しても入れるような所ではないのだよ。いいかい?ここは、ただの金持ち学校ではない。“部活”という絶対的な能力を持たなければここにはいられない。私達は、未来のスターなのだからね。いわば、ここはダイアモンドを育てる場所だ」

生徒会長鈴木はこちらを振り返らずに淡々と喋る。義経は辺りを見回しながら広い学校を見た。広すぎて、たぶん迷う。

「聞いているのかい?義経君。この学校では原則として“部活”には必ず入部しなければいけない。もちろん、何に入るか君次第だが」

「・・どんな部活があるんです?」

義経はやっと会話をするタイミングを見つけた。なんせ、今まで生徒会長鈴木は一人で喋り続け、義経が口を挟む隙を与えず、学校の説明をしていたのだ。

「どんなか・・・この学校には生徒の数だけ部活があると言って等しい。数で表すのは不可能だ」

鈴木は冷たく言い放つ。

「義経君。社会とは常に流動的だ。変化のない社会などあり得ない。すなわち部活も変化し続ける事、これ道理。部活は今も、生まれ続け、そして、また死に逝く物なんだ」

まるで先生かのように教えを諭す鈴木に対して、義経は生徒のように返事をした。

「は、はい!」

「そこで、重要になるのが、私達生徒会という存在だ。生徒会はね・・・部活を終わらす権限を持っているのだよ。部活に力を入れているからこそ、たくさんの部活が存在するからこそ、無駄な部活は減らし、常に有意義で意味のある部活を育て、管理していかなければならない。生徒会とはとても重要な役割なのだ」

「なんだか、とてつもない話っすね」

素直に感想を言うと、鈴木はこれ見よがしにため息をつき、眼鏡を指で押し上げる。

「まあ、君には理解は難しいだろうね。それに、転校生なんて100年に1度あるかないかの出来事。基本、ここは幼稚園からエスカレーター式だからな。・・・まあ、いい。生徒会の話くらいは理解出来ただろう?もし入りたい部活がないようならぜひ生徒会への入会を推奨するよ。今の学校にはくだらない部活が多すぎる。私が生徒会長になったからには、今年は忙しくなる。くだらない部活どもを粛清しなければいけないからな。考えておきなさい。くれぐれも、君もくだらない奴らにほだされないようにしたまえ!」

生徒会長鈴木は義経を、「A-H組」というプレートの前に連れて行くと中までは案内せずにどこかへ歩いて行ってしまった。

「どうも、あの鈴木は苦手だ・・・」

無駄に緊張していた糸が解れる。義経はどうするか迷ったが、目の前のクラスが自分がこれから通うクラスなのだと理解するとドアを開けるしかなかった。


これからこの学校に通い、隣の寮で暮らし、友達を作って・・・それから「部活」に入らなければいけないと思うとやる事が多くて嫌になる。自分でも理解してるが、属性としては、義経は面倒くさがりのグダグダ生活をしたい派なのだ。部活に入って青春!なんてのは柄じゃないし、それこそ面倒としか思えない。普通に生活して、普通に卒業出来ればいいのだ。それに、金持ち学校というのはどうも落ち着かない。なんだって無闇矢鱈に装飾がゴージャスなのだ?そのうち慣れるのだろうか?

義経の大亞悶努学校での生活が始まる・・・。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ