表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/7

博士と私パート3

「博士。手紙が届いてます」


「ほぅ? ――おお、研究仲間からだ」


「なにか発見でもしたんでしょうか?」


「どれどれ…お? 結婚式の招待状だ」


「は、結婚式? このトシで?」


「彼は若いよ。まだ30前だったはずだ。そうかそうか、遂に結婚するのか」


「行くんですか?」


「ああ、そうするつもりだ」


「…そういえば、博士は独身なんでしたっけ?」


「そうだ」


「どうして結婚しないんです?」


「………。平凡原理、を知っているかね?」


「まぁ、そのぐらいなら私も。『全ては平凡である』と言う原理ですよね」


「そうだ。この宇宙において、特殊な現象は何一つとして存在し得ない。

 君が10メートルの高さからボールを落とせば、それは1.4秒後に地面に落ちるし、僕が10メートルの高さからボールを落としても、また然りだ」


「でしょうね。でなければ困ります」


「だからみんな、宇宙人がいると信じている。この地球に生命がいるのだから、他にもいたっておかしくない。それが知的生命体であるかどうか、そうであったとしてどのぐらいの知性を持ち合わせているか、は抜きにして、『地球外生命体がいる』という事に関しては、いまはあまり異論が出ていない」


「現に木星の惑星・エウロパに生命がいるんじゃないか、ってみんな真剣に考えてますものね」


「ああ。平凡原理とは、ある意味、全ての科学における暗黙の了解ともいえる」


「……で、それと結婚しない事に何の関係が」


「君はおかしいと思わないかね」


「何がです」


「みんな何故恋人は1度に1人しか作ってはいけない、と考えているのか」


「は?」


「仮にある男性が好きになる条件がAだったとしよう。そして目の前に、まさにAである女性が現れる――しかし平凡原理によれば。ある1人の女性がAであるならば、他の別な女性もまたAである、と言える」


「はぁ。ま、そうですね」


「仮に、Aと言う条件を満たす女性がこの世に…この地球上に1人しか存在しないとしよう。

 しかしそうすると、その男性がその女性にめぐり合う確率は、単純に考えても60億分の1になってしまう。そんな確率は0と言ってもいい」


「……なんとなく、博士の言いたい事がわかってきました」


「しかも、そのAと言う条件を満たす女性が、その男性を好きになる、とは限らない。

 仮にこの女性が好きになる条件がBだとして、男性がBである確率はいかほどか?」


「低いですね」


「だろう? するとこの世にカップルなど存在しない事になってしまう。だがこれは事実と反する。

 よって背理法により、Aと言う条件を満たす女性はこの地球上に少なくとも2人、存在しなければならない」


「それならば、この男性は同時に2人以上の女性を好きになってもおかしくない、いや、ならなければならない、と言う事ですか?」


「その通りだ。なのにみな、それを許さない。このような非論理的な事は僕は好きではない。だから結婚はもちろん、恋人も作らないというわけだ」


「はぁ。でも博士」


「なにかね?」


「博士は別に、結婚しないんじゃなくて、結婚できない、のでは?」


「………」


「………」


「……!!!」


「!??!!?」


「~~~~~!!!!」


「ごめんなさい博士。私、まさか博士に傷つくとか、悲しむとか、そういう人間的感情があるだなんて思ってなかったんです。

 そうですよね、この世に特別な存在なんていないのですから、博士も人間的感情を持ち合わせてますよね」


「そうだ。それこそが暗黙の了解だっ」


「ですよね、ごめんなさい。元気を出してください。

 そうだ、今度一緒にどこか食事にでも行きましょう。ね、博士」

2007年 夏

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ