【ホラー】海沿いの小学校の七不思議「4時44分の音」
「夏のホラー2026」参加作品です。テーマは「音」。
オリジナルのホラー小説です。
【登場人物】
私 :語り手。
A :霊感があるといわれている友人。
4時44分の音 :学校の七不思議に一つ。学校で四時四四分に聞こえる音。聞くと災いが起こると言われている。
私の通っていた海辺の小学校の七不思議に、「4時44分の音」というのがあった。
それは4時44分に学校で聞こえる音である。
その「4時44分の音」を聞くと、化け物に襲われるとか、気が狂うとか、行方不明になるとか、死んでしまうとか言われていたが、人によって内容は違っていた。
音自体も、女の悲鳴、サイレンの音、鐘の鳴る音、大勢が叫ぶ声などバラバラだ。
それもそのはずである。誰も聞いた事が無いのだから。
それでも遅くまで残っている生徒は、4時44分になると音が聞こえないように耳を塞ぐのが常だった。
ある日、私たちは「4時44分の音」について、好き勝手に想像して盛り上がり、その流れでその音を聞いてみようという事になったのだ。
聞くと災いが起こると言われている音を聞こうだなんて無謀だが、子供ながらにただの噂だと思っていたし、それに、こんな肝試しをしたのだと話せば、周りから勇気があると尊敬されると考えたのだ。
数人が教室に集まった。その中には霊感があると言われていたAもいた。本当ではないと思っていたが、何かあったらAに頼れると思って安心した事を憶えている。
いよいよ4時44分が近付いて来た時、臆病なDが「本当に聞こえたらどうしよう?」と言い出した。
みんなは「塩を振りかければいいんじゃないか?」とか「神社や寺へ行こう。」とか言っていたと思う。
するとAが「多分、大丈夫だよ。」と言ったのだ。
Dは「どうして?」と聞いたが、Aは「後で教えるよ。」とだけ言って教えてくれなかった。Dは食い下がったが、そんな事をしている内に時間が来た。
4時44分。
みんな耳を澄ませた。
ミャーミャーと甲高く鳴くウミネコの声、ボーーーッという不協和音の汽笛、海から吹くヒューヒューという冷えた風の音、ザザーンと不規則に繰り返す波の音、"おーい"という誰かが誰かを呼ぶ声……。
いつも聞こえる音ばかりだった。しばらく耳を澄ませていたが、変な音は聞こえない。
まあ、そんなものである。
想像通りとは言え、みんな少し拍子抜けした。Aはと見ると、Aが時々やる「髪を抜いてフッと息を吹いて外に飛ばす」という仕草をしていた。
みんな「聞こえなかったね」くらいしか言う事がなく、微妙な空気になっていた時だった。
ブォオーン!ウォーン!
突然、低くて不気味な音が響いた。それはとても奇妙で気味の悪い音だった。
「4時44分の音だ!」
Dが叫び、誰かが「ワーッ!」と声を上げ、私たちはオロオロと慌てふためいた。
「みんな落ち着いて。」
冷静なAの声が聞こえた。Aはみんなを宥め、そして外を見るように言った。
動揺しつつも窓から校庭を眺めると、数人の生徒が集まっていて、その中の一人が大きな巻貝を口に当てて、息を思いっきり吹き込んでいる。
ブォオーン!ウォーン!
さっきの音が聞こえてきて、音の正体が巻貝から出る音だと分かり、みんな一斉に溜息を吐いた。
結局、それをきっかけに帰る事になった。
私はAと一緒に帰ったのだが、そのついでに、さっき大丈夫だと言ったのはどうしてなのか聞いてみた。するとこんな事を言ったのだ。
「もし聞こえても、それがその音だと気付かなければ、何も起こらないんだよ。」
意味が理解できなくて、もう一度尋ねたが、Aは笑うだけだった。
それから何年も経った後の話である。Aが髪を数本抜いて息をフッと吹いて外に飛ばしているのを見て、私は「それは癖なのか?」と尋ねた事がある。するとAはこう答えた。
「これは厄除けだよ。」
髪の毛を身代わりにして、良くないモノから逃れるのだそうである。良くないモノを見たり聞いたり触れたりして穢れが付いた時にするそうだ。
それを聞いて私はゾワッとした。
あの日、4時44分の後、Aはこの仕草をしていた。つまり、穢れから逃れる必要があったのだ。
その穢れというのは「4時44分の音」だろう。だとしたら私たちにも「4時44分の音」は聞こえていたのかもしれない。
私たちが無事だったのは、それが「4時44分の音」だと気付いていなかったからではないのか?
私は、あの時どんな音がしていたのか思い出そうとして、すぐに止めた。
その音が何か分かったら、私の身に災いが起こるかもしれないからだ……。
おしまい。
お読み頂きありがとうございます!
昨年に「海辺の小学校の七不思議」を三つまで書いたので、せっかくなら七つまで作ろうと思い、今年も挑戦してみました。
意味が分かると怖い話みたいになりました。Aは別に「私」を怖がらせるつもりは無いのですが、結果的にそうなってしまいます。




