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星のかけらと旅の記憶

作者: 夢野しらべ
掲載日:2026/05/02

 眠れないのかい?それじゃあ眠くなるまで、僕の昔話でもしようか。長い長い、僕の旅の話だよ。


 始まりは、小さな眩しい光の点だった。それが揺らめいたかと思うと、膨らみ始めた。その中で僕は生まれたんだ。いつだったかはわからない。だって、カレンダーも時計もなかったからね。そこはものすごく暑かった。真夏よりも、もっともっとだよ。だからみんな溶けてどろどろで、すごく散らかった部屋みたいにめちゃくちゃなところだった。

 僕は始め、とても小さかったんだ。産まれたての猫よりも、ずっとね。目に見えないくらい小さな僕は、ふらふらとそこらを漂っていた。暑い暑いと思いながらね。ところが、今度はどんどん寒くなっていって、とても耐えられなくなった。だから、近くにいた子たちと、どうにかくっついて温め合ったんだ。そのうちに、僕たちはくっついたまま離れなくなって、綿飴みたいになった。さらに別の子もくっついてきて、あちこちが綿飴だらけになった。なんだか楽しくなってきたから、もっと集まって大きくなろうとした。そしたら、ぎゅっと握られたみたいになって、僕たちは丸いかたまりになった。そんな僕たちをじっと見ている光る子がいたけど、やがてどこかに飛んで行ってしまった。だから、眩しいくらいに真っ白だった世界が、だんだん暗くなっていったんだ。それで僕は眠くなってしまって、そのまましばらく眠っていた。


 次に気がついて目を開けた時、景色が少し変わっていた。まだ夜のようで暗かったけど、そこかしこに輝いているところがあったんだ。僕は寝る前より、ずいぶん大きくなっていたと思う。鏡がなかったから、本当のところはよくわからないけどね。変わった世界が面白くて、あちこちを見て回った。クリスマスのイルミネーションみたいにキラキラしていて、とてもきれいだったよ。


 そうして過ごしていたある日、僕は一人の女の子と出会ったんだ。彼女はとても魅力的な人で、僕が惹かれてしまうのに、そう時間はかからなかった。僕の初恋だったんだよ。彼女は人気者だったから、いつも周りに誰かがいて、そのうちにその中の一人とくっついてしまった。僕は彼女が好きで好きでたまらなかったから、ものすごく嫉妬したよ。それが恐ろしいくらいの強いエネルギーとなって、僕の中で膨らんでいった。どんどん膨らんで、膨らんで…。とうとう大爆発してしまったんだ。爆発で僕はバラバラになって、また小さなかけらみたいになった。そのまま爆発のエネルギーで飛ばされて、彼女から遠いところへ離れていったんだ。

 僕は初恋に破れて、とても傷ついていた。流されるまま辺りを漂っているうちに、ちょっと静かなところへ行ったんだ。そこに座って、景色をボーッと眺めていた。そこにも初恋の彼女みたいな子がいて、やっぱり人に囲まれて、そのうち誰かとくっついていた。似たようなことがあちこちで起こっていて、僕みたいに傷付いている人もいるのかな、きっと僕だけじゃないんだ、そう思ったら、少し元気が出てきたんだ。


 なんだか安心した僕は、また眠った。夢うつつの中で、僕はぐるぐる回っていた。いつの間にか、また大きくなったみたいだった。その時に、かわいい妹も生まれたんだよ。僕は、煮えたぎるような情熱を持つ若者になっていた。火の玉のようだったと思うよ。いろいろな人と出会って、時にはぶつかってケンカして、仲直りして、大人へと成長していった。新しい出会いの連続で、とてもワクワクする毎日だった。

 けれど、それがずっと続くことはなかった。降り続いた大雨で大洪水が起こって、僕の世界は一変してしまったんだ。楽しかった世界は、全部水に沈んでしまった。そして火の玉だった僕は、寒くなった世界で、凍りついてしまった。もうずっと、死ぬまで凍ったまま動けないのかと思っていた。けれどね、物事は移り変わっていくものなんだよ。僕の中では、新しい何かが芽生え始めていた。やがて氷は融け、また凍り、また融けて……。同じことの繰り返しのようだったけど、違っていた。少しずつ、世界は変わっていったんだよ。僕の中で芽生えたものも、どんどん変化していった。


 不思議な長い夢から目覚めたら、僕は水の中にいた。どうやら海の中のようだったけど、僕たちがよく知っている海とは全然違っていて、赤茶っぽく濁っていたよ。そこでは、たくさんの人たちが踊っていた。ダンスパーティーをしていたんだ。僕もたくさんの素敵な人たちと踊った。とても楽しくて、ずいぶん長いこと踊り続けた。それでちょっと疲れてしまったから、海の底の静かなところに行って、僕はまた眠った。


 次に起きたら、僕は歩けなくなっていた。昨夜、ちょっとはりきって踊りすぎたからなぁと思っていたけど、そうではなかった。僕は、海藻みたいな生き物になって、海の底で揺らめいていたんだ。そりゃあ驚いたよ。寝ている間に一体何が起こったのか、見当もつかなかった。


 それから僕は、眠って目覚める度に、色々な生き物に変わっていった。海藻の次は、エビに似た生き物だった。小さいミミズのような生き物や、大蜘蛛にもなった。恐竜だったこともあるんだよ。鳥だった時は、空を飛ぶのが愉快だった。ネズミみたいな生き物になって、隠れて暮らしていたこともあった。子沢山のお母さんだったこともあった。戦争に行く兵士だったこともあった。そうして幾度となく体を変えて、住むところを変えてきた。そして今、君とここで、こうしているのさ。 …もしかしたら君は、あの時となりにいたあの子だったのかもしれないね。


 おや、そろそろ眠くなってきたようだね。それじゃあ、おやすみ。次に目覚める時も、君のとなりにいられますように。


お読みいただき、ありがとうございました!

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