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「電話」「お盆帰り」

作者: ひがし
掲載日:2026/01/12

空腹を感じる。

無味無臭な薬達を手頃な瓶の液体で流し込む。

温もったそれが食道を流れ落ちていく。


閉じきったカーテンの隙間から日差しを感じる。

意識を手放す。




こぽりと口内の違和感により目を覚ます。

どうやら吐いてしまったらしい。

耳鳴りがうるさい。


口元にアルコールを感じる。タオルは無いだろうか。

そうして部屋を見回して気がついた。スマホが光っている。


口に残ったそれを嚥下し、応答ボタンを押す。


「もしもし」


彼女の声がする。

久々に人の声を聞いた。


「あぁ」


絞り出すような声になってしまった。


「その声、寝起きでしょ」


「うん……」


「顔を洗って、うがいでもしてきたら?」


微かに笑って誤魔化す。

話題を変えよう。


「そっちは、さ、どうなの」


「……それなりかな」


「そう、なんだ。何も考えなくて、良さそうだもんね」


「確かにお金も時間も、身体の健康も考えなくて良いのはそうだね」


無言の時間が流れる。




「君もこっちに来ない?」


「冗談」


流そうとしたが彼女は続ける。


「上から君のことを見ていて、ずっと後悔していた。寿命を全うするまで生きてって遺書に書いてしまったこと」




ゆるくため息を吐く。


「そっか」


「君をそんな状態にしてしまうまで追い詰めてしまって、ごめんなさい」


泣き声が聞こえる。

僕は彼女を泣かせてしまったのか。


「いいよ」


スマホを手元に置く。

重かったはずの足が動いた。

カーテンを避け、ガラス戸を開ける。

部屋の空気が循環した。


フェンスの上に座ってみる。

青い空。

どこかで煙が立ち上っていく。

今日はお盆だったか。


見上げ、手を伸ばした。

引かれるような感覚の中、僕は目を閉じた。

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