第五話:学園任務:Ep1
「学園任務を始めます。」
....えぇ?
まだ自己紹介とクラス分けしかしてないんだけど。
委員会どころか、席替えも終わってないのに。
レオン先生の言葉に、教室中がざわめく。
俺も慌てて椅子に腰を下ろした。
「まずは『階級』について説明するね」
先生の口調はいつも通り穏やかだけど、その内容はやたら物騒だった。
「階級は準五級から一級まで、十段階に分かれています。
下ほど弱く、上ほど強い。単純だけど──この学園ではそれがすべての基準になる。」
その声が、教室の空気を一瞬で引き締める。
「階級が高ければ、生活補助・寮のランクアップ・学食メニューの追加・学生保障の拡充、そして社会的地位の向上。つまり、生きやすくなるんです。」
「準五級はね、武器も扱えない一般人。」
「次に五級。武器を持てるし魔力もあるけど、まだまだ弱い凡人。アッシュくんはここだね。」
「準四級は、武器をある程度使いこなせる。兵士や新米ハンターがこの辺り。」
「四級は、敵とまともに戦えるちょっと強い人たち。」
「準三級は部隊を率いる力を持つ。」
「三級は精鋭。うちの学園の主力以上だ。」
「準二級は国家レベルで重要視される戦力。」
「二級は都市防衛の要。一人持つだけで国の抑止力に近い。」
「準一級は英雄候補。」
「そして一級──この学校の歴史でも数人しかいない最強。私でもほぼ見れない。」
「──では、急だけど任務の話をしようか。」
「さて、任務には“敵の危険度階級”と“討伐指定番号”があるんだ。」
レオン先生は黒板にチョークを走らせながら、静かに言葉を続ける。
「これを知らないと、任務の意味も報酬も理解できない。
階級制度と同じくらい、重要なルールだ。」
「敵には第20級(最下級)から第1級(最上級)までの危険度が設定されている。
数字が小さいほど危険度が高く、国家や都市を脅かす存在になる。」
「つまり、、、、敵の危険度階級は、「どれだけ脅威になるか?」を示す指標なんだ。」
「そしてもう一つ。“討伐指定番号”。」
「任務ごとにコード番号が付与されていて、これで記録と報酬が管理される。
提出物や成果は必ずこの番号に紐づけられるから、間違えると──報酬が出ない。」
「コードは任務報告書にも、学園の記録にも残る。
、、、、、つまり、君たちの“功績の履歴”、なんです。」
「命を懸けた数字が、“成績表”になる。
忘れないで。ここでは「点数」より、「成果」がすべてなんだ。」
「、、、、そして、この学園の通貨は『M』。
金貨にあたるGM、銀貨のSM、銅貨のCMの三種類。1000CMで1SM、10000SMで1GM。ちなみに現実換算で1CM=1円。」
「このマニーを稼ぐため、そして階級を上げるために“学園任務”があります。
素材を獲得すれば報酬が出る。ただし、提出が必要な指定素材は学園が回収します。」
「任務はただの課題じゃない。
階級を上げる唯一の道であり、生活を支える収入源であり──君たちの存在価値そのものだ。
任務を果たせない者は、学園に居場所を失う。
だからこそ──任務は“生きるための戦い”なんだ。」
淡々とした口調のまま、レオン先生は黒板に“生存戦略”と書き加えた。
「『普通』の勉強なんて、この学校には存在しない。
“常識”を捨て、“戦略”を学ぶ。それが──この学園の教育方針だよ。だから、、、」
「”生存戦略、しましょうか。”」
「あはは、ちょっと場を固くしちゃったね。
──それじゃあ、君たちの最初の任務を発表しようか。」
ゆっくりとホログラムが浮かび上がる。
【討伐任務:ノースゴーレム】
「討伐だね。あそこのクエストカウンタから受注できるよ。
よし、先生が特別に、1-Bの皆だけに私の貯金をあげよう。ここだけの秘密だ。」
初めての任務は、、、、討伐、、、、
そう思う俺とは違い、皆は着々と準備を進めている。
軍資金1SMを手に、俺は学園を歩く。
「走ってたときは気づかなかったけど、意外と、この学園っていろんな設備があるんだな。」
そんな独り言を呟いていると、「瘴気耐久増加訓練施設」なる部屋を見つけてぞっとする。
「しょ、瘴気?なんか怖いな...」
俺はそんな言葉をこぼして、また歩こうとした。その時だった。
「そんなのォ.....?.....ここでは常識ィ....キミ、今まで"瘴気"知らずに生きてきたのォ....?」
そんな聞き慣れない声が聞こえ、俺は後ろを振り返る。
「これはァ...?瘴気にィ....?耐性をつけるためのォ.....施設、だァ.....」
そこには、レオン先生に酷似した、だが似ても似つかない、、、赤色の髪を乱す白衣の男が立っていた。
「誰だ?」
「そんなァ....?怖がらなくてもォ.....オレはこんな者ォ.....」
名刺を突き出され、俺は咄嗟に手に取る。
「マイタキシン=ヴァイル=バルフライってんだァ.........」
「ここではァ.......?瘴気に耐えられなければァ.......討伐に出る資格はァ.....?ないィ.......。 君の肺もォ........?腐る前にィ.........?慣らしておく必要がァ......あるゥ........」
「瘴気はァ....魂断層、そしてェ...?魔導具開発のォ.....礎でもあるゥ......」
何だ、、、、?この人は、、、、見た感じレオン先生との兄弟、、、?
「あ、有難うございます。」
そう言って立ち去ろうとするが、、、、
「待てェ.....?体験してみるとォ......いィ........」
マイタキシンは、にやりと笑いながら施設の扉を押し開けた。 中からは黒い霧のような瘴気が、ゆっくりと流れ出してくる。空気が重く、呼吸するだけで喉が焼けるような感覚が走った。
「さァ.......?入るんだァ........?ここでェ....耐えられなければァ........討伐なんて夢のまた夢ェ.....」
俺は一歩後ずさる。肺が縮むような感覚に、足が勝手に震える。
「いやいやいや!俺はパン食って生きたいだけなんですけど!?瘴気に慣れるとか聞いてないぞ!」
マイタキシンは肩をすくめ、名刺をひらひらさせながら笑う。
「皆任務に向かって準備してる中、なんで一人俺だけこんな事しなきゃいけないんだ....」
そう呟いた瞬間、マイタキシンの手が俺の背中を押した。
黒い霧の中へ――俺は、初めての“瘴気訓練”に放り込まれた。
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黒い霧が肺に入り込んだ瞬間、喉が焼けるように痛み、視界がぐらりと揺れた。 呼吸するたびに胸が締め付けられ、心臓の鼓動が耳の奥で爆音のように響く。
「ぐっ、、、、、!?あ”、あ”ぁ、、、、、、っ、、、はぁっ、、、、な、なんだ、、、これ、、、、!?
息が、、、息、、、、、っ、、、、できな、、、、、っ、!」
喉が焼ける。肺が縮む。呼吸をするたびに、胸の奥が鉄板に灼かれるように痛い。
「すーっ、、、、はぁっ、、、、、ゲボッ、、、、!!すーっ、、、、、、、はぁぁっ、、、!」
足が震え、膝が折れそうになる。 視界が揺れる。黒い霧が渦を巻いて、目の前の空間が歪んで見える。
「ぁぁぁぁぁっ、、、、!は”っ”、、、、、、!すーっ、、、、、、、はぁっ、、、、!ゲホッ、、、、、カハッ、、、、、!!」
喉から血の味が広がる。舌が痺れる。
その時――
幻覚が見えた。
青い髪の女の子。
次第に輪郭がはっきりしていく、、、、
「.....だ...れ.....?」
必死に声を上げる。
俺は必死に手を伸ばす。
時間の感覚が狂っていく。
一秒が一分に感じる。
床の軋む音が永遠に続いているように聞こえる。
――そして突如、重い扉がゆっくりと開いた。
ギィィィィィ――
マイタキシンの声が霧の奥から響く。
「これで訓練はお終いだよォ......どうだったァ.....?楽しかったかァい........?」
「......全く......楽しくなかった.........!!」
俺は叫ぶ。声が掠れて、涙と汗が混じっていた。
「おやァ.....?濃度48%にしたのがイケなかったかなァ....?」
「の、濃度って何...!!」
「そんな事も知らないのかいィ.....?」
「通常ゥ......瘴気濃度ってのはァ.....?この黒い霧の“濃さ”を示す数値なんだァ........。
通常は5%....ただの違和感程度で済むってェワケだァ........
20%を超えると、呼吸が苦しくなるゥ..... 30%で幻聴が始まりィ........
40%を超えると幻覚が見えるゥ........50%を超えれば、武器も持てなくなるゥ.......
精神が侵食されてェ.......?暴走するんだァ......」
アッシュは震える声で返す。
「....じゃあ、俺は.....48、%.....!?」
「そうだァ.....通常は5%.......君が吸ったのはその約10倍だァ......普通なら肺が焼けて、意識は二度と戻らない........」
「君は“普通なら耐えられない濃度”を体験したんだァ......だがなァ.......?君はまだ生きているゥ........それはァ......?"偶然"か.....?それとも.......君の"魂"が"特別"なのかァ..........!?」
「すまないけどさ、マイタキシン=ヴァイル=バルフライ....単純に言って、狂ってる。」
「そうかァ....”残念”だなァ........」
そう言い去って、俺は廊下を歩き始めた。
スミマセン、、、この回で任務終わらせるつもりだったんですけどあまりに長くなって、、、、
次回予告
各々の準備を進める1-B。初任務の行方は如何に、、、、
「学園任務:Ep2」




