第十話:任務
「今から此処一体の敵・味方残らず―――」
「鏖殺だ。」
歪んだ笑いだけが、この場に残っていた。
石と爪がぶつかり合うような激しい擦れる音。
氷片は舞い、半壊したノースゴーレムと狂気に満ちたシャパリュ=ロアノートが向かい合う。
何とも言えない緊張感が戦場に漂う。
何方とも先手を選んでいる。
先に動いたのは、、、、、
「”【黒曜斬】”」
シャパリュは魔力を凝縮して刃にし、一撃を放つ。
耳を貫くような高い音が響く。
刃がコアに突き刺さる。
ゴーレムは機腕でシャパリュの爪を掴み、そのまま20m先へ吹っ飛ばそうとする。
だがその前にシャパリュは後ろに飛び離脱し、爪を研ぐ仕草をする。
「■●▼▼――!」
一瞬よろめくが、ノースゴーレムは直ぐに体制を立て直し、傷を氷で覆う。
「”【壊葬乃閃光】”」
破壊の光線が射出され、視界を白く焼き尽くす。だがシャパリュの刃の乱打が光線を掻き消し、爆ぜる火花は花火のように夜空を染める。
「”【黒曜百裂乱れ咲き】”」
爆音が轟き、黒き爪の刃と氷の機腕の鍔迫り合いが始まる。連撃は嵐のように降り注ぎ、氷と黒曜がぶつかるたびに火花と氷片が舞い散る。音はあまりに激しく、逆に何も聞こえないほどだ。
それを目の前にして、俺はうつ伏せに横たわって事の終始を見届けている。
「ぁ、、、、、」
なにか行動しなくては。
耳がつんざき、全身が凍るように痛い。
眼の前の情景を眺めながら、俺は感心する。
あの技をずっと受け流し、反撃までしている凄さは戦ってみたものにしかわからないだろう。
俺も、何かやらなければ。
行動を起こさなければ。
「【北欧乃風】」
またあの技だ、、、、今度は、、!!
「【発動】」
「【狐光の揺籃】」
その瞬間、全員の残像がコマ送りで見え始めた。
いや、残像ではない、、、これは。
「未来予知、、、、っ、、、、!?」
ただ、黄色い残像は一つではなく複数の方向に向かっている。
一つの可能性、敵や味方を動かせる?
二つの可能性、動かせないあるかもしれない未来?
多分どっちかだ。
「ティノ、右へ三歩!」
「分かった!」
一本の線は、ティノが氷に呑まれる未来。
一本の線は、シャパリュがノースゴーレムに貫かれる未来。
一本の線は、ミリーティアの弾が跳ね返り、俺の頭を撃ち抜く未来。
なんかふざけてる未来もあるけど、全部本当の線だ。
それから一本一本正解を見つけて行動していくだけ。
必ず正解はあるはずだ。
未来は、勝手に流れ込んでくる。
ノースゴーレムの氷腕が振り下ろされる未来。
シャパリュが踏み込みすぎて死ぬ未来。
ヴェルの爆炎が暴発する未来。
ミリーティアの弾が味方に当たる未来。
「なんか楽しいなこれ!」
「アッシュ、あなたにしかその「楽しい」は見えない。あなたはこれからの戦況を伝えて。」
「うるせェ私一人がやる!お前らは首突っ込むな!」
視界がチカチカする。
頭の奥がギリギリと軋む。
眼が黒くなっていく。
でも止まらない。
ぐ、、、脳が死ぬ!何千本、赤青緑黒の線を処理しきれない、、、持ってもあと十秒、いや二秒、、、、!!
「【能力解除】!」
「【能力発動】」
「【夢幻の島の果実】」
「【一口目:ハーヴェスト】」
「なんだおめェ!?」
大きく漆を塗られたような堕黒の鎌。
白夜のような刃、黄金を象る縁。
「チェックメイトだ――!!」




