第八話:始動
<<<<<< 【時刻:03:55PM】 >>>>>>
戦術学園【アルカディア】作戦会議室にて
俺は、、、、教卓の前に立つ。
西日は照り、大机に影を落とす。
「任務前準備は整った、今から作戦会議を、、、始める。」
突風が吹き抜け、髪をふわりと揺らす。
「おぉう!」
「ん、、、、OK、、、、、敵は強いかなぁ、、、」
心配事、、、いや、むしろ楽しんでいる声が聞こえる。
「、、、、わかった」
「あっははー、、、皆、暗くないかなぁ、、、?」
「そうなのですぞ!もっと明るく!スマイルっ!」
無理に盛り上げなくてもいいのに、とアッシュは思う。個人的には楽しくない笑いより真剣な方が好きだ。
この瞬間から、、、、そう、”任務”は始まった。
きっと誰もが緊張している。
作戦会議室の扉は閉じられる。
空気は一層張り詰めた。
窓から差す西日の赤。
誰も口を閉ざす。
まず机の上に置かれた任務資料へと、視線を落とす。
「任務目標を確認する。現在の目標は──ノースゴーレムの討伐だ。」
初めての討伐。目標は19級。数字”のみ”見れば、弱いようで、、、だが、実際に強い。
数ある”討伐指定任務”の中でも、先生が選んでくれた難易度の低いもの。
だが、一番難易度の低い指定任務でも油断は大敵だ。
なぜなら20級。そう、スライムやゴブリンのような存在でも死亡事故は起きている。
「任務の危険性、、、それはいくら射撃が上手いやつとか戦闘狂でも、油断をすれば誰でも『死ぬ』ことだ。死んだら何にもならない、、、、、悲しいだけだ。」
会議室の空気はさらに張り詰めていく。
――だが、その緊張もいとも容易く破り捨て、ムスコロの声が唐突に飛んできた。
「ハッ、それは何だァ!プロテインか!?」
彼の視線は俺の首飾りと手袋に釘付けだった。
「、、、これ?これは遺物屋で、、、、」
「これは学園の遺物屋で買った遺物だ」
そう、言おうとした時だった。
「、、、、、、遺物屋?そんな大層な店なんて、ここにはない。銃だったら、ある。」
「 へ 」
「え、いやっ、けど確かに遺物屋は、、、、、」
「『遺物屋』っていうのは片手で数えられるほどしかない。しかも、、、、、」
ミリーティアは変に言葉をはぐらかす。
もう一度、この夕焼けに染まる会議室は緊張に包まれていた。
その時。
シャパリュがアッシュの胸ぐらを掴んだ。
「おい、本当にそれは何だってんだ、、、?」
「ぐっ、、、、かはっ、、、、、、」
首が締まる。息がし辛い、、、、、
頭がぼんやりしていく中、必死に意識を保つのがやっとだ。
「それは何だ。」
「これは、、、遺物屋で、、、」
本当のことを言っているのに、無視される。
「それは何だ。」
「ほんとにっ、、、遺物屋で、、、、」
繰り返される問。
何を言っても通用しないような雰囲気の中で、シャパリュは続ける。
「それは、、、、何だ?」
「、、、、、、、、、、」
「次は黙秘、か、、、、?」
「相変わらず変な反応だなァ、、、、、答えるか死ぬかどっちかにしろよ。』
パシィンッ、、、、!
俺は右頬が砕け散るような強い痛みを覚える。
頬に熱が広がり、血の味が口に滲む。
「か、、、、、ぁっ、、、!?」
「ラストチャンス。それは、、、何だ?」
「遺物屋、、、、”アヴァ―――」
「―――テメェ、、、、、私の地雷を踏むのもいい加減にしろよ。」
俺はシャパリュから蹴られ、蹴られ、視界の半分が紅になるまでそれは続いた。
まるで拷問のようだな、と俺はその最中、思った。
「答えた結果が、、、これか、、、っ、、、、!?」
「”その遺物” ”その名前”、、、、お前、、、、『終焉の騎士』、、、、、だろ?」
「違っ、、、、!!」
「”違う”もクソもねぇ。議論の余地なく間違いだ、、、、、もう私の前に立つな、不愉快だ。」
シャパリュが席に戻ろうとする。だが―――
―――俺はなぜ、ここで負けず嫌いになったのだろうか。
「、、、はぁ、、、、っ、、、、、、おい、俺も思うぜ、、、、?」
「、、、、、、あ゙?」
「確かに俺も悪かったと思う、だがな、俺が言ったことをお前は「嘘」だと思ってる。それって可笑しいんじゃないか、、、?」
「言ったよな、『地雷』だってな。こんな短時間によく何回も踏み抜けるね。感服するよ、、、、、、」
「じゃ、私からも。――」
「――お前しか、、、その『遺物屋』ってやつを見ていない。この学園誰一人も。さっきスミェーリチが言っていただろう、、、?‘そんな大層な店なんて、ここにはない’って。で、お前はそんな意見も聞かずに自分の意見”だけ”を突き通そうとする。」
「その根性『だけ』は褒めてやるよ。けどな?現実ってやつはお前が思ってるより『上手くいかないことのほうが多い』。分かったか?忠告だ。最後に、、、、、”許したワケじゃあないからな”。」
「わかったわかった、よォーく解った。お前らとは組まねぇ。本当に不愉快だ。最低でもこいつ抜かして勧誘しろ。ハッ、、、、”チームごっこ”を十分楽しんどけよ。」
―――――――――――――――――――――
<クエストカウンター>
俺は、、、俺達は、木製のクエストボードに粗雑に貼り付けられた依頼紙を取り、近未来的無機質さが滲むカウンターに置く。
『討伐-19-7561 受諾しました。』
「あの獣猫はどこに行ったんだ、ティノォ!」
「そんな事言われても知らないよ、筋肉の人、、、」
そんな会話を繰り広げる俺達。
「、、、シャパリュ、、、、、アイツは、、、、「討伐-17-8946」に行ったみたい。」
「、、、銃撃少女、本当に、か?」
「うん、確かに「スカルゴブリン7体討伐」のクエスト。」
「別のクエストに行ったのか?迷子か、よし!教えてあげよう!」
「、、、、ねぇ、話聞いてた、、、、?」
紫の物体を空高く放り投げる、、、、
瞬間、眩く光る。
空間がぐにゃりと歪んだ。
音が消え、視界が白に染まる。
瞬間、そこは鳳凰木に似たような、だが違う木が点々と生え、緑が生い茂り、遠くには灰色の山、そして群青に染まる空があった。
小鳥の囀りは聞こえ、人の姿も見える。
幻想的で、いつか見たハイジのアルプスにも匹敵する絶景だ。
思わず俺は感嘆の声を漏らし、本来の目的など忘れこの景色に永遠に見とれそうになっていたが、ギリギリの所で理性は保つことは出来た。
ここが、、、、、大帝都。イリュージア都市郊外、レオロア地区。そしてこの大地、、、岩の大地の一部だ。
「ここが、、、、」
俺は時も忘れ景色に耽っていたのだが、、、、
「ハッ、、、危ない!、、、ここは危険だ!ジョン5が言っている!逃げろ!!」
「「「「!!!」」」」
「”【壊葬乃閃光】”」
キィン、、、、、
金切り音が聞こえ、次の瞬間辺りは焼け野原だ。
焦げた草の匂い。俺は光線砲を握り締める。
「クソッ、、、反応が遅かった、、、、!」
動揺する声。
「冷静に。諦めないで。」
俺達は周囲を確認しながら一箇所で背中を合わせ、各々武器を構える。
「”【北欧乃風】”」
カチィ、、、、、、、ッ、、、、!!
”それ”の周りの半径13m、、、、その全てが凍った。空気中の水分すら結晶化し、白い霧氷が舞う。
「ぐ、、、あぁっ!?」
その業の範囲内に居たティノの足が凍っていた。下半身が触ったら壊れそうなほどに脆い氷像になっている。
「僕のことはいい、、、!!」
「けどっ、、、、」
「僕は今役に立たない。多分銃はジャムってるし、こんな話をしてる場合じゃない。」
「、、、、でも、、、、」
「任務の方が重要だ!!」
「、、、、、っ!」
「”【解放】”」
バリィッ――!!
氷結していた地面は勢いよく四方に爆砕する。
氷の破片を無作為に撒き散らしながら、衝撃波が駆け抜けた。
その反動で全員は為す術なく大きく後ろに吹き飛ばされる。
「お出ましってか、、、、、、」
辺りを舞う氷の粉塵の向こうから、2mほどの影が現れる。
「”ノース・ゴーレム”ッ、、、、!」
知っておこう
ー「スカル」編ー
この世界のエネミー『モンスター』は、死ぬと灰になります。ここは人間と同じですが、灰は空気では飛ばず地面に残り、そこに強い瘴気が残留することで夕方から朝方の間に一時的に「スカル」状態になるのです!スカル化した敵はある日突然現れて、また暴れ出します。なので、すぐスカル化することもあれば、ずっとスカル化しないときもあります。
怖いですね、スカル化すると階級が1段階上がるのです。
おしまい




