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第24話 澪と初デート

春休みのある日。


俺、天城奏人あまぎ かなとは、

待ち合わせ場所に、やたらと早く着いていた。


(落ち着け俺……落ち着け……)


心の中で何度も呟きながら、

落ち着かない手をポケットに突っ込む。


そして──


時間ぴったりに、澪が現れた。


「奏人くん!」


白いカーディガンに、春らしい淡い色のワンピース。


その姿に、思わず息を呑んだ。


(……可愛すぎるだろ)


なんとか平静を装いながら、

「行こうか」と声をかける。


 



 


まずはショッピングモールへ。


新学期に向けた春服を見に行く。


お互いに試着を勧めあったり、

「これ似合うかな?」なんて言い合ったりして──


それだけで、幸せだった。


澪がふわっと笑うたびに、

胸の奥がきゅうっと締めつけられる。


(こんな時間が、本当に俺に……?)


前世の記憶が、ふと脳裏をかすめる。


 


──持てない、冴えないオタク大学生だった俺。


 


ろくな青春なんてなかった。


でも、今は。


ちゃんと、隣に誰かがいてくれる。


 



 


お昼は、モールのカフェでランチ。


二人でサンドイッチを分け合ったり、

デザートを取り合ったり。


澪は、笑いながら言った。


「……こんなに楽しいの、初めてかも」


その言葉だけで、

世界中の宝物を手に入れたみたいな気分になった。


 





午後は、カラオケへ。


澪は、恥ずかしがりながらも、

可愛い声でアニメソングを歌ってくれた。


俺も、思い切ってノリのいい曲を歌ったら、

澪が手拍子してくれて、

気づけば二人とも大笑いしていた。


(こんな幸せ、あっていいのかよ)


本気で、そう思った。


 



 


夕方、モールの出口で、

俺たちは立ち止まった。


「楽しかったね」


「うん……めっちゃ楽しかった」


小さく笑い合って、

名残惜しさを感じながら、それぞれの帰路へ。


別れ際、澪が「また、行こうね」と小さく手を振ってくれた。


俺は、「絶対」と力強く返事をした。


 


 



 


家に帰り着いたあと、

俺はベッドに倒れ込み、天井を見上げた。


(……最高の1年だった)


前世では得られなかったもの。


家族の温もり。


友達との絆。


そして、澪とのかけがえのない時間。



全部、全部。



俺にとって、奇跡だった。




(──神様、本当にありがとう)




心の底から、そう思った。


そして、静かに、目を閉じた。


未来は、まだまだこれからだ。


でも、この一年があったから──


俺はきっと、どこまでも走っていける。


 


──これにて、第一部「中学1年生編」、完結。

一旦、完結です。

ここまで読んでいただきありがとうございました。

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