第24話 澪と初デート
春休みのある日。
俺、天城奏人は、
待ち合わせ場所に、やたらと早く着いていた。
(落ち着け俺……落ち着け……)
心の中で何度も呟きながら、
落ち着かない手をポケットに突っ込む。
そして──
時間ぴったりに、澪が現れた。
「奏人くん!」
白いカーディガンに、春らしい淡い色のワンピース。
その姿に、思わず息を呑んだ。
(……可愛すぎるだろ)
なんとか平静を装いながら、
「行こうか」と声をかける。
◇
まずはショッピングモールへ。
新学期に向けた春服を見に行く。
お互いに試着を勧めあったり、
「これ似合うかな?」なんて言い合ったりして──
それだけで、幸せだった。
澪がふわっと笑うたびに、
胸の奥がきゅうっと締めつけられる。
(こんな時間が、本当に俺に……?)
前世の記憶が、ふと脳裏をかすめる。
──持てない、冴えないオタク大学生だった俺。
ろくな青春なんてなかった。
でも、今は。
ちゃんと、隣に誰かがいてくれる。
◇
お昼は、モールのカフェでランチ。
二人でサンドイッチを分け合ったり、
デザートを取り合ったり。
澪は、笑いながら言った。
「……こんなに楽しいの、初めてかも」
その言葉だけで、
世界中の宝物を手に入れたみたいな気分になった。
◇
午後は、カラオケへ。
澪は、恥ずかしがりながらも、
可愛い声でアニメソングを歌ってくれた。
俺も、思い切ってノリのいい曲を歌ったら、
澪が手拍子してくれて、
気づけば二人とも大笑いしていた。
(こんな幸せ、あっていいのかよ)
本気で、そう思った。
◇
夕方、モールの出口で、
俺たちは立ち止まった。
「楽しかったね」
「うん……めっちゃ楽しかった」
小さく笑い合って、
名残惜しさを感じながら、それぞれの帰路へ。
別れ際、澪が「また、行こうね」と小さく手を振ってくれた。
俺は、「絶対」と力強く返事をした。
◇
家に帰り着いたあと、
俺はベッドに倒れ込み、天井を見上げた。
(……最高の1年だった)
前世では得られなかったもの。
家族の温もり。
友達との絆。
そして、澪とのかけがえのない時間。
全部、全部。
俺にとって、奇跡だった。
(──神様、本当にありがとう)
心の底から、そう思った。
そして、静かに、目を閉じた。
未来は、まだまだこれからだ。
でも、この一年があったから──
俺はきっと、どこまでも走っていける。
──これにて、第一部「中学1年生編」、完結。
一旦、完結です。
ここまで読んでいただきありがとうございました。




