第23話 これ、付き合うってこと?
ホワイトデーが終わった次の日。
学校では、
「誰と付き合った」「本命チョコだった」みたいな話で盛り上がっていた。
(……俺も、そういう立場になった、のか?)
嬉しい反面、
正直、わけがわからなかった。
澪とは両思い。
気持ちは伝え合った。
──けど。
(付き合うって、具体的に何すんだ?)
◇
悶々と考えた結果、
俺は、まず紗良に相談することにした。
放課後、リビングでゲームしてる紗良に、
遠回しに切り出す。
「あのさ、両思いになったら──
普通、付き合うってことでいいの?」
紗良は、ゲームのコントローラーをポーズして、
こちらをじっと見た。
「んー……付き合う、ねぇ」
腕を組んで、うーんと唸る。
「私の前世、社会人になってから何人かと付き合ったことあるけど……」
「学生の恋愛事情は、マジでさっぱり分からん!」
(ええぇ……)
思わず、がっくり肩を落とす。
「だってさ、社会人ってほら、
まずご飯行って、お互いのスペック探り合って、
何度かデートして、みたいな流れじゃん?」
「ああ……たしかに」
「でも、中学生って、そういうのじゃないっしょ?
たぶん、"好きだね!" "うん好きだね!"で成立してるんじゃない?」
適当すぎる理論に、思わず頭を抱えた。
「──じゃあ、どうすればいいんだよ」
すると紗良は、ぽんっと手を叩いた。
「ママに聞け!」
「……えぇ?」
「うちのママ、現役アイドル時代、
恋愛禁止だったくせに、恋愛相談だけはガチだから!」
よくわからない理屈だったけど、
背に腹はかえられない。
俺は、意を決して、
母・美咲に相談してみることにした。
夕飯後、タイミングを見計らって、
リビングでくつろいでいた母・美咲に声をかけた。
「……あのさ、母さん」
「なぁに?」
にこにこしながら、
ティータイムを楽しんでいる母。
この空気を壊すのは、ちょっと勇気が要ったけど──
俺は覚悟を決めた。
「もし、好きな人と両思いになったら、
それって、付き合うってことでいいの?」
母は、ふわっと微笑んだまま、
俺をじっと見た。
「──うん。
基本は、お互いに好きって気持ちを確認できたら、
それだけで"付き合ってる"ってことでいいと思うよ」
「……そっか」
なんだか、すごくシンプルな答えだった。
でも、母はさらに続けた。
「でもね──
付き合うって、"宣言"することじゃないの」
「え?」
「一緒にいて楽しいか、
一緒にいると安心できるか、
もっと知りたいって思えるか。
そういう気持ちを、
これから少しずつ育てていくことだよ」
(……なるほど)
母の言葉は、
すとんと胸に落ちた。
「だから、無理に『彼氏彼女だから』って
急に何かを変えようとしなくていいの。
焦らず、二人のペースで、
ゆっくり関係を作っていけばいいんだよ」
「──うん」
俺は、自然と笑顔になった。
(そうか。
無理に意識しすぎる必要なんてないんだ)
大切なのは、
目の前の澪と、ちゃんと向き合っていくこと。
それだけで、十分なんだ。
◇
その夜。
ベッドに寝転びながら、
澪の笑顔を思い出していた。
ゆっくりでいい。
焦らずに、でもちゃんと。
一歩ずつ、
あの手を、離さないように。
俺たちの"付き合う"は、
きっと、そうやってできていくんだろう。
そんな未来を思い描きながら、
俺は、静かに目を閉じた。




