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第23話 これ、付き合うってこと?

ホワイトデーが終わった次の日。


学校では、

「誰と付き合った」「本命チョコだった」みたいな話で盛り上がっていた。


(……俺も、そういう立場になった、のか?)


嬉しい反面、

正直、わけがわからなかった。

 

澪とは両思い。


気持ちは伝え合った。



──けど。

 


(付き合うって、具体的に何すんだ?)


 



 


悶々と考えた結果、

俺は、まず紗良に相談することにした。


放課後、リビングでゲームしてる紗良に、

遠回しに切り出す。


「あのさ、両思いになったら──

普通、付き合うってことでいいの?」


紗良は、ゲームのコントローラーをポーズして、

こちらをじっと見た。


「んー……付き合う、ねぇ」


腕を組んで、うーんと唸る。


「私の前世、社会人になってから何人かと付き合ったことあるけど……」


「学生の恋愛事情は、マジでさっぱり分からん!」

 


(ええぇ……)



思わず、がっくり肩を落とす。


「だってさ、社会人ってほら、

まずご飯行って、お互いのスペック探り合って、

何度かデートして、みたいな流れじゃん?」


「ああ……たしかに」


「でも、中学生って、そういうのじゃないっしょ?

たぶん、"好きだね!" "うん好きだね!"で成立してるんじゃない?」


適当すぎる理論に、思わず頭を抱えた。


「──じゃあ、どうすればいいんだよ」


すると紗良は、ぽんっと手を叩いた。


「ママに聞け!」


「……えぇ?」


「うちのママ、現役アイドル時代、

恋愛禁止だったくせに、恋愛相談だけはガチだから!」


よくわからない理屈だったけど、

背に腹はかえられない。


俺は、意を決して、

母・美咲に相談してみることにした。


夕飯後、タイミングを見計らって、

リビングでくつろいでいた母・美咲に声をかけた。


「……あのさ、母さん」


「なぁに?」


にこにこしながら、

ティータイムを楽しんでいる母。


この空気を壊すのは、ちょっと勇気が要ったけど──

俺は覚悟を決めた。


「もし、好きな人と両思いになったら、

それって、付き合うってことでいいの?」


母は、ふわっと微笑んだまま、

俺をじっと見た。


「──うん。

基本は、お互いに好きって気持ちを確認できたら、

それだけで"付き合ってる"ってことでいいと思うよ」


「……そっか」


なんだか、すごくシンプルな答えだった。


でも、母はさらに続けた。


「でもね──

付き合うって、"宣言"することじゃないの」


「え?」


「一緒にいて楽しいか、

一緒にいると安心できるか、

もっと知りたいって思えるか。

そういう気持ちを、

これから少しずつ育てていくことだよ」


(……なるほど)


母の言葉は、

すとんと胸に落ちた。


「だから、無理に『彼氏彼女だから』って

急に何かを変えようとしなくていいの。

焦らず、二人のペースで、

ゆっくり関係を作っていけばいいんだよ」


「──うん」


俺は、自然と笑顔になった。


(そうか。

無理に意識しすぎる必要なんてないんだ)


大切なのは、

目の前の澪と、ちゃんと向き合っていくこと。


それだけで、十分なんだ。


 



 


その夜。


ベッドに寝転びながら、

澪の笑顔を思い出していた。


ゆっくりでいい。


焦らずに、でもちゃんと。


一歩ずつ、

あの手を、離さないように。


俺たちの"付き合う"は、

きっと、そうやってできていくんだろう。


そんな未来を思い描きながら、

俺は、静かに目を閉じた。

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