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第19話 クリスマス、プレゼントと初めての意識

十二月。


街中がイルミネーションで彩られ、

どこもかしこもクリスマスムード一色だった。


学校でも、昼休みになると、

「誰にプレゼントあげる?」「好きな人いるの?」なんて話題で盛り上がっていた。


俺、天城奏人あまぎ かなとは──


正直、あんまりそういうのに興味なかった。


……つい最近までは。


 



 


放課後。


部活の帰り道、

いつものように澪と一緒に歩いていた。


澪は、ふわふわとマフラーを巻き直しながら、

少し恥ずかしそうに言った。


「あの……奏人くん。

もしよかったら、クリスマスの日……ちょっとだけ、会えないかな?」


「えっ」


完全に意表を突かれて、変な声が出た。


「え、えっと……別に、大したことじゃないんだけど……」


澪は、頬を赤らめながら、もじもじしている。


(……なんだこの可愛い生き物は)


冷静にいられるわけがなかった。


「い、いいよ! もちろん!」


即答して、逆に変な間ができた。


澪も、ぱっと顔を明るくして、


「よかった……!」


と、小さな声で呟いた。

 

──そのとき。


胸が、ぎゅっと鳴った。


何でもないやり取りのはずなのに。


ただ、「会おう」って言われただけなのに。


なのに、こんなにも、嬉しい。


(──あれ?)


気づいてしまった。


俺、たぶん。


澪のことを、"特別"に思ってる。


 



 


クリスマス当日。


俺は、駅前のカフェで澪と待ち合わせしていた。


雪がちらちらと降り始めた空の下、

マフラーをぐるぐる巻きにした澪が、小走りでやってきた。


「奏人くん、待たせた?」


「ううん、今来たとこ」


漫画みたいなセリフを、

本気で言ってしまった自分に、ちょっと笑ってしまった。


カフェはクリスマス特別仕様になっていて、

ちょっとしたイルミネーションがテーブルにも飾られていた。


俺たちは、ホットチョコレートを注文して、

窓際の席に座った。


外では、小さな子どもたちが雪にはしゃぎ、

カップルたちは手を繋いで笑い合っている。


そんな光景をぼんやり眺めながら、

俺は内心、緊張で汗をかいていた。


──だって。


今日、澪に渡すものがあるから。


「えっと、奏人くん」


澪が、バッグの中をごそごそと探りながら、

そわそわした様子で言った。


「これ……」


手渡されたのは、

小さな、赤いリボンがついた包み。



「ちょっとだけど、メリークリスマス、って」



(……やばい、可愛い)


脳内で警報が鳴った。


俺も、慌ててカバンから、

用意していた小さな包みを取り出す。


「俺も……これ」


差し出すと、澪の目がぱっと輝いた。


「ありがとう!」


二人で小さなプレゼントを交換するだけなのに、

心臓が爆音で鳴っていた。


中身は、シンプルなブックカバーと、

澪からは小さなハンドタオル。


お互いの性格をよくわかっているような、

そんな、実用的な贈り物。


(──すげぇ、嬉しい)


こんな小さなものが、

こんなにも心を満たしてくれるなんて。


澪は、タオルをぎゅっと抱きしめながら、

ふわっと笑った。


その笑顔を見た瞬間──


また、胸がぎゅっとなった。


(俺、やっぱり──)


はっきりと、自覚した。


俺は、澪が好きだ。


ただの幼馴染じゃない。


特別な存在なんだって。


 



 


帰り道。


二人で並んで歩きながら、

澪が、少しだけ寂しそうに言った。



「……来年も、また一緒に過ごせたらいいな」


「……ああ、絶対」



俺は即答した。


少し驚いた顔をして、

それから、嬉しそうに笑う澪。


その横顔を見ながら、

俺は、心に強く誓った。


(来年も、その先も──隣にいたい)


本気で、そう思った。

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