第19話 クリスマス、プレゼントと初めての意識
十二月。
街中がイルミネーションで彩られ、
どこもかしこもクリスマスムード一色だった。
学校でも、昼休みになると、
「誰にプレゼントあげる?」「好きな人いるの?」なんて話題で盛り上がっていた。
俺、天城奏人は──
正直、あんまりそういうのに興味なかった。
……つい最近までは。
◇
放課後。
部活の帰り道、
いつものように澪と一緒に歩いていた。
澪は、ふわふわとマフラーを巻き直しながら、
少し恥ずかしそうに言った。
「あの……奏人くん。
もしよかったら、クリスマスの日……ちょっとだけ、会えないかな?」
「えっ」
完全に意表を突かれて、変な声が出た。
「え、えっと……別に、大したことじゃないんだけど……」
澪は、頬を赤らめながら、もじもじしている。
(……なんだこの可愛い生き物は)
冷静にいられるわけがなかった。
「い、いいよ! もちろん!」
即答して、逆に変な間ができた。
澪も、ぱっと顔を明るくして、
「よかった……!」
と、小さな声で呟いた。
──そのとき。
胸が、ぎゅっと鳴った。
何でもないやり取りのはずなのに。
ただ、「会おう」って言われただけなのに。
なのに、こんなにも、嬉しい。
(──あれ?)
気づいてしまった。
俺、たぶん。
澪のことを、"特別"に思ってる。
◇
クリスマス当日。
俺は、駅前のカフェで澪と待ち合わせしていた。
雪がちらちらと降り始めた空の下、
マフラーをぐるぐる巻きにした澪が、小走りでやってきた。
「奏人くん、待たせた?」
「ううん、今来たとこ」
漫画みたいなセリフを、
本気で言ってしまった自分に、ちょっと笑ってしまった。
カフェはクリスマス特別仕様になっていて、
ちょっとしたイルミネーションがテーブルにも飾られていた。
俺たちは、ホットチョコレートを注文して、
窓際の席に座った。
外では、小さな子どもたちが雪にはしゃぎ、
カップルたちは手を繋いで笑い合っている。
そんな光景をぼんやり眺めながら、
俺は内心、緊張で汗をかいていた。
──だって。
今日、澪に渡すものがあるから。
「えっと、奏人くん」
澪が、バッグの中をごそごそと探りながら、
そわそわした様子で言った。
「これ……」
手渡されたのは、
小さな、赤いリボンがついた包み。
「ちょっとだけど、メリークリスマス、って」
(……やばい、可愛い)
脳内で警報が鳴った。
俺も、慌ててカバンから、
用意していた小さな包みを取り出す。
「俺も……これ」
差し出すと、澪の目がぱっと輝いた。
「ありがとう!」
二人で小さなプレゼントを交換するだけなのに、
心臓が爆音で鳴っていた。
中身は、シンプルなブックカバーと、
澪からは小さなハンドタオル。
お互いの性格をよくわかっているような、
そんな、実用的な贈り物。
(──すげぇ、嬉しい)
こんな小さなものが、
こんなにも心を満たしてくれるなんて。
澪は、タオルをぎゅっと抱きしめながら、
ふわっと笑った。
その笑顔を見た瞬間──
また、胸がぎゅっとなった。
(俺、やっぱり──)
はっきりと、自覚した。
俺は、澪が好きだ。
ただの幼馴染じゃない。
特別な存在なんだって。
◇
帰り道。
二人で並んで歩きながら、
澪が、少しだけ寂しそうに言った。
「……来年も、また一緒に過ごせたらいいな」
「……ああ、絶対」
俺は即答した。
少し驚いた顔をして、
それから、嬉しそうに笑う澪。
その横顔を見ながら、
俺は、心に強く誓った。
(来年も、その先も──隣にいたい)
本気で、そう思った。




