表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/7

彼との出会いは、一目惚れ

初投稿なので暖かい目で見て頂けると嬉しいです。

続きも頑張っていきます!




*******




「お前、最近コソコソ何やってんの」



背後から急に声がして、びっくりして振り返ると、不審がるような表情で私を見下ろしている黒崎蓮がいた。



(まずい!どうやって誤魔化そう…っていうか、なんでいるの!!?)




*******



「桜、もうこんなに咲いてたんだ…」



春休みの間、ほとんど外に出ていなかった私は、正門一面に咲いている桜を見て呟いた。


「結衣ーー!!おはよー!!」


声のする方を向いてみると、無邪気な笑顔で明日香が大きく手を振っている。彼女は、木実明日香(このみあすか)。中学1年生の時に仲良くなった私の親友だ。明るくて、いつも私が悩んでいる時は相談に乗ってくれる。私も手を振り返すと、明日香は長いポニーテールの髪を揺らしながら駆け寄ってきた。


「おはよ!明日香、久しぶりだねー」

「ねー」


いつも明るい明日香の声が、今日はいつも以上に明るく聞こえた気がする。始業式で気分が上がっているのだろうか。


「クラス替え、憂鬱だなあー。みんなとクラス離れちゃうかもしれないし…」


後ろを歩く2人組の会話が聞こえてきた。


「でもさ!去年転校してきた超かっこいいって噂のあのれんれんと同じクラスになれるかもしれないんだよ?!」


もう1人が声を明るくして言った。れんれん…?誰のことだろう。


「ねえ、明日香。れんれんって誰のこと?」


後ろの2人組に聞こえないように、私はできるだけ小さな声で明日香に聞いた。


「え!?結衣、知らないの?黒崎蓮だよ!」


明日香は目を丸くして言った。どうしよう…初めて聞いた名前だ。


「あ、あーー!黒崎蓮のことか!もちろん知ってるよー…!」


私は思わず嘘をついてしまった。もう高校2年生になるというのに、話題についていけていないと思われたくなかったのだ。そうこう話しているうちに、あっという間に昇降口に着いた。私たちの学校では、昇降口に新クラスの名簿が張り出される形となっている。すでに昇降口には、新クラスを見に来る生徒で溢れかえっていた。


「やった!今年も同じクラスだね!」

「げ!今年も担任アイツかよー!」


名簿を見終えた生徒たちの声が、周囲で飛び交っている。私たちの前に大勢いた生徒たちが少しずつ抜け始め、私は明日香にぴったりとくっつきながら恐る恐る名簿を見た。明日香と私は必死に自分の名前を探す。


「星宮結衣…星宮…あった!3組だよ私!明日香は?」


私はすぐに自分の名前を見つけ、明日香の方を見た。明日香は真剣な顔で名簿と睨み合っている。どうやらまだ名前を見つけられていないみたいだ。


「あ、私4組だ…」


明日香はしょんぼりとした声で呟いた。


「そっかそっかー、クラス、離れちゃったねー!」


私はできるだけ明るい声で言った。


「でも隣のクラスだし、またいつでも話せるよ!」


明日香の表情を伺いながら、私はさらに付け加えた。


「うん、そうだね!」


明日香の顔が明るくなった。


「そんなことより結衣、黒崎蓮と同じクラスじゃん!いいなー」

「あ、ほんとだ。まあ私は喋ったこともないし関係ないけど」


私は興味のない様子で言った。実際、これまでも噂になるような男子は何人かいたけれど、私には興味のない話だった。


「早く教室向かおー」

「そうだね」


そう言って、私たちは新クラスの教室へと向かった。



*****



新しい教室。新しい席。新しいクラスのメンバー。何もかもに慣れていなくて、緊張して落ち着かない。幸い、右から3番目の1番後ろの席だったため、ソワソワしていても誰にも気づかれることは無い。


(よーし、これで当分の間は授業中思う存分内職できるぞーー)


そんなことを考えながら、私はクラス中を改めて見渡した。



『あ…』



このとき私は、初めて一目惚れというものをしたのかもしれない。目線の先には、美しく艶やかな黒髪に、透き通るように綺麗な肌、友達に囲まれながら爽やかに笑う彼の姿があった。私はこの男子生徒が黒崎蓮なんだとすぐに分かった。その輝かしい笑顔から目が離せなかった。



「はーいみんな席着いてー」



新しい担任の山本先生が教室に入ってきた。友達と話していたクラスメイトたちがぞろぞろと自分の席に戻りだす。


「新しく3組の担任になった山本浩介だ。みんな、これから1年間よろしくな」


先生が軽く自己紹介を終え、小さく拍手が起こる。山本先生は、去年ここ南ヶ丘高校にやってきた数学の先生だ。歳が近く、授業が面白くて分かりやすい先生のため、生徒からはある程度人気があった。


「じゃあみんな、1時間目は早速数学だから、教科書の用意しとけよー」


そう言って、先生は教室を出ていった。


「1時間目から数学だるー」

「それなー」


また周りがザワザワし始め、各々準備を始めだした。確かに、学校が始まって直ぐに授業というのはいささか気が重い。けれど、この南ヶ丘高校は県内でも有数の進学校なので、始業式初日から授業というのも、仕方ないことなのだ。


「星宮結衣ちゃん…だよね?」


隣の席に座っていた、可愛らしい女の子が突然声をかけてきた。


「あ、うん!結衣って呼んで!」


いきなり声をかけられて、びっくりして声が上擦ってしまった。


(どうしよう…初対面なのに変な印象与えちゃったかな…)


そんな不安が頭をよぎったが、彼女は気にする様子など少しもなく笑顔で言った。


「よろしくね結衣!私は夢咲鈴華(ゆめさきすずか)!」

「鈴華、よろしくね」


私も笑顔で返した。





キーンコーンカーンコーン…


「ほらみんな授業始めるぞー、春休みの課題はちゃんとやってきたかー?」


チャイムの音と同時に山本先生が入ってきた。


「うっわー、課題とか、すっかり忘れてたぜー」


新クラスで重たい空気の中、お調子者の森田が口を開いた。


「森田ー、課題はちゃんとやってこなきゃだめだろー!」


先生が笑いながら返す。2人のテンポの良いやり取りを見て、何人かのクラスメイトがくすくすと笑っている。森田と山本先生のおかげで、クラスの雰囲気が明るくなった。


「じゃあ、後ろの人から課題のワーク回してきてー」


先生の指示で、みんなも私も、ワークを回し始めた。周りの様子を見る限り、ほとんどの人がちゃんと課題をやってきているみたいだ。さすがは南ヶ丘高校だ。


「まず、これからの授業の進め方について説明したあと、教科書の4ページから授業していくぞー」


先生がそう言い、授業方針についての説明を始めた。





「…宮!星宮!」

「ん……。えっ!?」


顔を上げると、クラス中のみんながこちらを見ている。状況が掴めない。


「結衣、教科書4ページの問2、当たってるよ…!」


鈴華がこっそり囁いてくれた。私、寝てしまっていたんだ。


「えっと…えっと…」


焦って問題を読むが、さっぱり分からない。


(どうしよう…)


そう思って顔を上げると、みんなが退屈そうにしている中、1人だけこちらを見て何か言っている。


(黒崎蓮…?何か言ってる…)


彼は、理解出来ていない様子の私に、分かりやすくするため、口の動きを大きくして必死に口パクで伝えようとしている。


『さ・ん・ば・ん』


彼は、私の方を真っ直ぐ見て言った。


「さ、3番です」

「おー正解!答えは3番だなー、なんで3番になるかというと…」


先生が黒板に解説を書き始めた。


(良かった…)


安心して、ほっと胸を撫で下ろす。


(それにしても、なんで教えてくれたんだろう…)


彼の方を見ると、もう前を向いて先生の解説を真剣に聞いている。カリカリとペンを走らせ、ノートをとっている後ろ姿を、私はぼーっと見つめていた。


キーンコーンカーンコーン…

結局、彼のことをぼんやり眺めていたら、いつの間にか授業が終わっていた。


「結衣ー、初日から寝ちゃうし、ずっとぼーっとしてたよね。寝不足なの?」


鈴華が心配した表情で聞いてきた。たしかに、久しぶりの学校に緊張して昨日はあまり寝れなかったのもあるが、それ以上に彼のことをずっと見ていたからだなんて、言えるわけが無い。


「そう、寝不足なの〜、心配かけちゃってごめんね」

「そっかそっかー、今日は早く寝ないとね〜」

「うん、ありがとう」


私も鈴華も、次の授業の準備を始めた。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ