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Emotional Colors  作者: 上川 千尋
第1章
5/12

2.

 食堂で昼ご飯を食べた後、ショッピングモールに行く前に戸野倉のアパートまで向かった。

 流石に吹奏楽の衣装とヒールで半日歩き続けるのは大変だと判断したためだ。普段の服装に着替えた戸野倉を迎え、ここから徒歩20分の塔屋ショッピングモールに向かうことにした。

 行く途中は主に円藤と僕が話題を振り、神崎が話題を広げ、戸野倉がまとめるといういつもの流れで会話が進んだ。楽しい時間は早く過ぎていくという事実を初めて知って、ちょうど一年が過ぎた。

 友達がいるのといないのとでは、ここまで時間の感じ方に違いがあることを僕は大学生になって初めて知ったのだ。真横から見る友達のいろんな表情が、こんなに眩しく、不安や傷ついた心を温かくさせる力を持っているとは思わなかった。

 昔の人生が影のような薄い黒色と表現するならば、今の人生は温かく、日向のような鮮明な白色なのだろう。こんな人生をもっと過ごしたい、そんなことを考えていると後ろから小さな子供たちが我先にと走り、灰色の壁が特徴的な建物の中に入っていった。どうやら目的地に着いたようだ。

 建物前の広場には小さな子供が遊び、ママ友たちが話し込んでいる。自動ドアや通路には多すぎない程度の人たちが常に出入りしており、立体駐車場は平日であるにもかかわらず、1・2階は満席の赤ランプが点灯しており、人の出入りの多さを感じさせる。周辺にはそれといった大きなスーパーや生活必需品を取り扱う店が少ないことも相まって、この塔屋ショッピングモールはこの地域のショッピング部門のドンに君臨している。

 僕も入学当初、バイト先のオーナーから買いたいものがあったらここに行くといい、と言われるほど何でもそろっているのだ。

 食品はもちろん、衣類、家具家電といった必需品、スポーツ用品や自転車などのアウトドアグッズ、おまけにカフェや飲食店、映画館やカラオケ、さらにはスポーツセンターといった娯楽施設まで入っているため、周辺に住んでいる子供たちは休日に塔屋ショッピングモールに行きたいと親にわがままを言うことも多いらしい。

 早く服を買いたいのか、円藤は入口の方へ走って振り返り、こっちこっちと両手を大きく振っていた。待ってーと少し疲れた様子で歩く戸野倉と分かってると冷静に後を追う神崎の後ろ姿を見て、将来子供が出来たら今とそこまで変わらない様子で彼女らは母親になるのだろうと想像してしまう。

 一方、僕は少し心拍数が上がり、自分の体を流れる血のざわめきを感じていた。原因は分かっている、僕はショッピングモールにいい思い出がないのだ。足も少し震えていたが、今年で成人もする男性が情けない、昔の記憶にいつまで縛られているんだと言い聞かせ、自分自身に活を入れる。直後に円藤から早く来るように呼ばれたので、急いで三人の後を追った。


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