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僕はバスケなんかやりたくない!

作者: 夜天景光

<7月>

 -夏休み前-

 ああ、暑い暑い。夏の日差しが真上から照っている。放課後、授業が終了したのち、いつものように、部室に直行した。今日は、他部との兼ね合いで男子バスケットボール部が外練の日だ。

 外練とは、外で練習することであり、普通、体育館などを使って練習するバスケ部やバレー部などは、外での練習となると、筋トレや走りなどの基礎練が主になる。

 この外練がきついのは、いつものことだが、7,8月の夏の間はことさらである。今日の外練の練習メニューは校舎10周と坂道ダッシュののちに、腕立て、腹筋30回を5セットである。このメニューをすべてこなすと、着ているトレーニングウェアがびしょ濡れになり、両手で搾り上げると、自分の汗がまるで、果物を絞るときのように垂れ流しになる。

 今は、校舎10周を走り終わったあとなので、これから、坂道ダッシュをするところなのだが、夏なのもあって、もうすでに疲弊している。

「まったくバスケ部なんか入らなければ、こんな真夏にトレーニングをすることもなく、友達と遊んだり、もっと、学生らしいことをしていたんだろうな。」

 そう愚痴ると、せいやは自分はいったいなにをしたいのかと考えた。バスケ部に入ったのは、自分にバスケの素質があると思ったからで、こんなきついトレーニングをすることではないのだと思った。

 そう考えながらも、部活に入ってしまったのだから、3年間は続けなきゃいけないこともわかっている。


 いったん、目の前のことに集中しなくてはいけない。せいやは、勢いよく、坂道をダッシュした。


<8月>

-夏休み中-

今日は、練習試合の日だ。対戦相手は、同じ地区の中学校の男子バスケットボール部で、今までに、何度か対戦したことはある。夏休み中は、やはり、練習試合などを挟まないと部員たちのモチベーションも下がってしまうし、やっぱり、バスケは、試合をしているときが一番楽しい。

長期休暇期間以外の、普段の土日などでも、部活はあるが、大概は練習をすることが多いので、いまいち、やる気が出ないのである。理想としては、平日の放課後、土日の練習試合に向けて、練習を行い、土日はどちらか片方だけ対外戦を行うというのがいい。そうすれば、練習試合に向けて、緊張感をもって練習できるので、モチベーションが保てるのではないか。


 せいやは、夏休みに入ってからほぼ毎日、部活に参加しており、一日中、熱気の籠った体育館でバスケの練習をしている。せいやの通っている学校含め、どの中学のバスケ部も実際に試合をするときに必要になる、体力、筋力のトレーニングは欠かさず、行っており、ドリブルやシュート、パスなどよりも基礎的な部分の練習に時間をかけるのである。バスケットボールは、球技のなかでも、身体的にハードなスポーツであるから、試合などで、体力がないため、シュートが思うように入らないなどといったことになってはいけないのである。せいやは、もともと体力があるわけではないので、練習で補う必要がある。せいや自身もそのことを理解しているので、基礎練をおろそかにしてはいない。夏休みのサウナのような過酷な環境の中でも、練習に励んでいるのだ。そして、今日、練習試合の日なので、今までの、練習の成果が出るかを確認するつもりだ。


 朝、体育館の前に部員が集合している。せいやも、その中に入っていき、

 「おはようございます。」とあいさつする。同じ、学年の部員と少し会話をする。せいやは、学年の中では、レギュラーではなく、レギュラーの補欠として試合に参加している。せいやはバスケが下手なわけではないが、試合になると、スタミナが足らなくなる。そのせいで、シュートの成功率も下がってしまう。せいやが、レギュラーではない最大の理由は、スタミナが足らないことなのだ。一方で、レギュラーに選抜された部員は、もともと、足も速く、タフである。そのうえ、技術面も問題ない。

 「今日も、レギュラーかお前。」せいやはその部員に言った。

 「まあ、そうだろうな。この間も結構得点入れたし。今日も、調子はいいから、この間よりも点数とれるように頑張るつもり。」

 「俺は、今日も補欠だから、声出してベンチ温めとくよ。」

 「そうそう。俺がガス欠になったら、お前に代わりに出てもらうだろうから、頼むぞ。」

せいやは、自分はバスケに向いてないのだろうと思った。別に、自分以外の部員が練習をサボっているというわけではないが、自分も同じくらいには努力しているのに、レギュラーに選ばれないのには不満がある。せいやは、バスケをするのは好きだが、自分がレギュラーに選ばれないのでは、練習を頑張った意味がないと思ってしまうのである。昔は、バスケを純粋に楽しんでいたが、今は、レギュラー争いに必死になって、バスケを楽しめていない。そう思いながら、せいやは、試合前のウオーミングアップを始めた。



<9月>

-夏休み終わり-

夏休みの終わりごろ、せいやは部活の集まりで打ち上げに参加していた。1年先輩の部員は今年で引退し、各自受験勉強に勤しんでいく。この時期は、3年の部員も1,2年の部員もそれぞれ気持ちをリセットして、励んでいく時期なのである。その節目として、引退する先輩たちと、近くのファミレスで食事会をする。せいやは2年なので、打ち上げに参加するのは、これで2回目である。去年も、打ち上げに参加したが、そのときは、引退する先輩たちとはあまり話さなかった。というのも、3年の先輩たちとは、せいやが4月にバスケ部に入部してから、わずか3か月ほどの付き合いしかなく、お互いにあまり知らなかったからである。一方で、今年は引退する先輩とも付き合いが長かったため、話すことが多かった。いま、流行りのゲームやsnsで有名になっているインフルエンサーのこと、恋愛のことなどを話した。また、受験勉強で模試の成績が上がらないと嘆いている先輩の愚痴にも付き合った。どの先輩も今まで、部活でしか接点がなかったが、私生活のことを話してみて新鮮だった。バスケをやっているという共通項をなくしてしまうと、それぞれの個性が見えてきた気がした。バスケがうまい人、人をサポートするのが好きな人、練習をサボりがちな人、バスケと勉強や恋愛など何かを両立している人。さまざまである。

チームの中でエース的存在の先輩とバスケをしていてつらいと感じたことはないか聞いた。もちろん練習はきつかったし、努力しても結果が出ないときは落ち込んでた。また、チームのエースとしてのプレッシャーも感じていたという。努力がすべて実るわけではない。自分が何が得意なのかわかってるかどうかが重要だ。自分のポジションでどうすれば結果を出せるか考えながらやることが重要といった。

せいやは、自分は何が得意なのか聞いてみた。先輩はいった。

「俺は、正直言って、小さいころからバスケをしていたし、体力も人並み以上にある。そのうえ、味方との連携なども得意なんだ。そういう意味では、バスケの才能はあったんだと思う。」











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