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声劇用台本*半分の月がのぼる山

作者: テンスト

[舞台]

現代日本



[登場人物]

山神やまがみ 歌留多かるた

職業:OL

年齢層:お姉さん

性格:行動力がある


天狗てんぐ

年齢層:お兄さん

性格:思いやりがある



[役表] ♂1:♀1 = 2



[鍵カッコ]

「」→セリフ

『』→モノローグ

()→セリフだけじゃ表現できない箇所の補い

【】→セリフ内の台詞、または大事なセリフやキーワードとなる物や場所

天狗

『むかしむかし。

かつて一人の若いアニオタが死んだ。残された肉親は彼の趣味を欠片かけらも理解しなかった。肉親はアニメグッズの処分を業者に依頼した。アニメグッズを積んだトラックは山へと向かう。

業者は肉親から破棄処分代として金を受け取っておきながら、アニメグッズを山中さんちゅうに放棄した。アニメグッズは不法投棄のゴミになった』






歌留多

『ある日、酔っぱらって電車で乗り越した挙句に迷い込んだ山の中で、私は美しい笛の音を聞いた。木陰こかげに隠れ、音のする方を覗くと……そこには、

伝説上の生き物、天狗が月に照らされていた。

墨で描いたような、少し淡い黒翼こくよくに、

腰には、恐らく木製でできた扇を挿し、

この時の私は名称を知らなかった、一本歯下駄いっぽんばげたを履いて、横笛を吹いていた。

顔は、天狗の面と言われて想像するような、真っ赤で鼻の長い顔……というわけではなく、顔だけを見れば一般的な成人男性の顔だった。

乙女ゲーに出てきそうなイケメン天狗と言えば私の見た光景をイメージしてもらいやすくなるだろうか?

そんな、ゲームやアニメから飛び出てきたような天狗……と一つ違うのは


天狗はなぜかA◯gel Beats!のTシャツを着ていた。


暫くすると天狗は横笛を吹き終え、飛翔し山奥へと姿を消した。

翌日、私はA◯azonで同じシャツを探した。結構いい値段はしたが、かまわずポチッた』






天狗

半月はんげつの夜。いつもと変わらない、いつもの夜、のはずだった。いつものように笛を吹く俺は、木陰からこちらを覗いている人間に気が付く。俺は神通力で人間の記憶を改ざんする為に、人間へ近寄っていく。恐怖で体が動かないのか、人間は動かない。

俺が歩みを止めたのは、人間が俺と同じ衣服を身にまとっていたからだった。

驚いた俺に、人間はこう告げる』



歌留多

「一緒に、アニメを見ませんか!」






天狗

「このOP最高過ぎないか!?」



歌留多

『川のほとりに腰を下ろし、一つのタブレットを2人で見ている私達。 結弦ゆづるの一言は山のしじまへの別れとなる』



天狗

「なにより構成が素晴らしすぎる!OPのセオリーとして、90秒という決められた時間の中で

イントロ→Aメロ→Bメロ→サビ

という流れが定番だが、ロボット系やアクション系のアニメで、曲を盛り上げるために頭サビという

サビ→イントロ→Aメロ→Bメロ→サビ

という構成も多様されるのだが……このOPは

Bメロ→イントロ→Aメロ→Bメロ→サビ

という構成なになっていて!

これがどういう効果を持っているかというと、視聴者は、初めてこの曲を聞いた時、先入観から【頭サビタイプのOP】と認識する。なのでBメロの時点でサビが来たと思い、本当のサビを聞いた時には3回サビが来たような、

サビ→イントロ→Aメロ→サビ→サビ

という、たった90秒の中でサビが何度もやってくる、ド派手で盛り上がる効果をもたらすんだよ!素晴らしすぎないか!!」



歌留多

『因みに【 結弦ゆづる】というのは私が名付けた。 結弦ゆづるには名前がなく、今までも名前が必要になったことがないという。彼は結弦ゆづるという名前を気に入ってくれたが、流石に着ていたシャツの作品から名付けたのは、今になって捻りの無さにちょっと後悔している』



天狗

「ん?そんな鳩が豆鉄砲を食らったような顔をして、どうした?あ。鳩が豆鉄砲を食らったよう、なんてきょうび聞かないか」



歌留多

「いや、出会った頃を思い出していたというか……結弦ゆづる、最初と比べて、キャラが変わりすぎてるなぁと思って」



天狗

「そうか?」



歌留多

「そうよ。最初は【目に青葉 山ほととぎす 初鰹 の句が思い出される爽やかな季節の折。

そちら様に於かれましては相変わらず御清廉ごせいれんの御様子。

心よりご精励せいれい申し上げます】みたいな話し方だったじゃない」



天狗

「さすがにそこまで日常会話を、うやうやしく、丁重にお喋りにはなってないと思うが」



歌留多

「ま、アニメで現代語をマスターしちゃって、今じゃもう、同年代の男子と話してるのと遜色ない感じ」



天狗

「【同年代の男子】と思うには、俺の見た目と、こんな山の川辺でアニメを見ているという状況が、非日常的すぎるんだよなぁ」



歌留多

「場所に関しては何度も言ってるじゃない、私の家で見ようって」



天狗

「いやいや、流石にそこまで人間に干渉するわけには」



歌留多

「そんな寂しいこと言わないでよ。お部屋だったら温度は適温だし、美味しいお酒もあるし、眠くなったら布団もあるし、いい雰囲気になったらそのまま愛し合えるし」



天狗

「だから行きたくないんだ」



歌留多

「なんでよ!?」



天狗

「異種間はまずいだろ」



歌留多

「いいじゃない!【盾◯勇者の成り上がり】とか【狼◯香辛料】や【犬◯叉】だって、人と人外とで、恋だの愛だのしてるじゃない!」



天狗

「アニメと現実をごっちゃにするのはよくない」



歌留多

「天狗に言われた!?」



天狗

「だいたい、俺なんかのどこがいいんだよ」



歌留多

「顔」



天狗

「……」



歌留多

「イケメンなのは勿論、私好みの犬顔男子なのがポイント高め」



天狗

「見た目で人を選ぶのはよくないと思うよ」



歌留多

「人じゃないし大丈夫でしょ」



天狗

「揚げ足取らないの」



歌留多

「大丈夫よ。愛があれば人も天狗も関係ないわ」



天狗

「……俺が歌留多を喰っちまう化け物だったらどうするんだよ?」



歌留多

「もしそうならとっくの昔に私は食べられてるだろうし、百歩譲って食べる頃合いを待ってるのであれば、わざわざそんな宣言みたいなこと言わなくない?」



天狗

「それは、さ」



歌留多

「確かに結弦ゆづるの言う通り、ここで出会ってたのが普通の人間でも河童でもケンタウロスでも、顔が私好みのイケメンだったら惚れてたと思う」



天狗

「天狗が言うのもなんだが、そこまで守備範囲が広いのはどうかと思うんだが」



歌留多

「守備範囲というか、ストライクゾーンの方がしっくりくるかも」



天狗

「それはもう、人外好きなだけじゃないかな」



歌留多

「(わらう)

でもね、イケメン人外好きOLの私が、好きになったのが結弦ゆづるで、本当に良かったって、思ってる。

一緒に見たアニメの、面白かったシーンや、好きなキャラが一緒だったり。暑さとか寒さとか、体調をさりげなく気遣ってくれたり。家に帰る時、道路に出るまでこっそり見守ってくれてたり」



天狗

「……気づいてたのか」



歌留多

「(わらう)

だからね、この人のこと好きになってよかったなぁって。そう思うの」



天狗

「……」



歌留多

「……だから」



天狗

「だから?」



歌留多

「一緒に見たいアニメはまだまだいっぱいあるんだから、時間をかけてゆっくり口説いていくね」



天狗

「……敵わないなぁ」



歌留多

「ねえ!今のどうだった!?ときめいた!?キュンとした!!?」



天狗

「……それが無ければ落ちてたかもね」



歌留多

「なんでよ!?」



天狗

「あー。もういいからいいから、アニメ見ようぜ」



歌留多

「もう!じゃーあ、少女漫画原作の恋愛アニメでも見ましょうね♡」



天狗

「何度も言うが、俺はアニメと現実はごっちゃにしないからな」



歌留多

「分からないよ?見てたら彼女ほしくなるかも!」



天狗

「そんなこと言われてもなぁ」



歌留多

「えーと、この前は一緒に【君◯届け】見たんだよねぇ。次は……あ!」



天狗

「ん?どした?」



歌留多

「マンガ続編出てる!?スピンオフかな??」



天狗

「マンガはもう終わってるんだ」



歌留多

「そうなの!アニメは二期で、まぁ区切りのいいとこで終わったけど、あの後も結構続きがあってさー。どうやら くるみちゃんがメインみたいね」



天狗

「あーあの好敵手ライバルの」



歌留多

「そうそう!……【運命の人】ってサブタイトル?運命の人……」



天狗

「こっちを見るな」



歌留多

「初めて結弦ゆづるを目にした時、あぁ、この人が私の運命の人なんだぁって思ったよ」



天狗

「はいはい」



歌留多

結弦ゆづるは!結弦ゆづるは私に何にも感じなかった!?」



天狗

「圧が強いって」



歌留多

「私は今でも、初めて言葉を交わしたときのことを思い出せるよ。二人は偶然山で出会い」



天狗

「歌留多が捜しに来たんだろ」



歌留多

「あの夜はとても風が強くて」



天狗

「どちらかというと穏やかだったが」



歌留多

「満天の星空が見えて」



天狗

「そこそこ雲が多かったぞ」



歌留多

「丸々とした満月が!」



天狗

「半月な」



歌留多

「……めちゃくちゃ覚えてくれてる!嬉しいいいいいいい!!」



天狗

「ぐっ///」



歌留多

「照れてる!可愛い♡」



天狗

「うるさい!」



歌留多

「そっかー。風が穏やかで曇っていた半月だったかぁ……半月?」



天狗

「半月がどうかしたか?」



歌留多

「半月って、弦月げんげつとも言うよね?」



天狗

「そうだね。鬼◯の刃の、上弦の鬼とか下弦の鬼って単語は、弦月げんげつからきてるし」



歌留多

「弦月に相見あいまみえた二人が、深い愛で結ばれる……縮めて【結弦ゆづる】」



天狗

「縮めるな」



歌留多

「弦月に結ばれた二人……略して結弦ゆづる



天狗

「略すな」



歌留多

「運命発見!!私が結弦ゆづるって名付けたのはまさに運命だったんだよ!」



天狗

「こじつけが過ぎるだろ」



歌留多

結弦ゆづる結弦ゆづる結弦ゆづる!」



天狗

「何度も呼ぶな」



歌留多

「ゆづるー!ほら、私の名前呼んで?」



天狗

「……歌留多うるさい」



歌留多

「えへへー。結弦ゆづる好きー」



天狗

「!

歌留多うるさい」



歌留多

「えへへー。結弦ゆづる好きー」



天狗

「歌留多うるさい」






歌留多

『かつて宝物だったゴミは、二人を結ぶアニメグッズになったとさ。めでたしめでたし』

【作品利用】

 動画や生放送で使用する際はTwitterまでご連絡ください。

事後報告で構いません

https://twitter.com/EdR11103

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【あとがき】

 テンスト(作者)は生まれてから今まで、色んなアニメ、ドラマ、漫画、小説を視聴してきました。

なのでそれらの影響を受け、パクリ…オマージュ…リスペクトが作品に組み込まれている場合があります、御了承ください。

そして誤字、脱字、衍字があったらすみません。

ここまで台本を読んでいただいた方、演じていただいた方、有難うございましたm(__)m

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