婚約破棄されたらジャングルに飛ばされました
設定の矛盾点等ありましても生暖かい目で見ていただければ幸いです。
本日はお城で国王陛下のお誕生日の祝賀パーティが執り行われる。
私は重い気持ちを隠しながら、本来エスコートして頂ける婚約者である第三王子を待たずに王宮へと向かった。
待っていても来ない相手なのだ。
第三王子であり私の婚約者でもある【ロミナルド・サザバール】様、通称ロミオ様は現在子爵家のご令嬢である【タチアナ・テレーズ】様にいたくご執心で、パーティの類は必ずタチアナ様とご出席なさる。
国王陛下やロミオ様のお母様である王妃には「今だけの事だから目を瞑ってくれ」と言われてしまい、私はこの状況を呑み込む他なくなってしまった。
申し遅れました。
私、【クリスティ・ボナティール】と申します。
ボナティール公爵家の次女で現在16歳でございます。
父であるマティウスは外務大臣を務めており、母であるセリーヌは元王宮魔道士団の長を務めておりました。
私は母の遺伝子を色濃く受け継いだ様で魔力がとても強く、次期魔道士団長候補と目されておりましたが、王妃様たっての希望で同じ歳の第三王子殿下の婚約者となりました。
私と致しましては婚約者になどなりたくはなかったのですが、その様な身勝手が許されるはずもなく、粛々と、でも内心は嫌々婚約を受け入れた次第でございます。
ですが、最近のロミオ様の言動を見ている限り、近い内に婚約は解消されるのではないかと思っております。
何しろその言動が常軌を逸している事は公然たる事実として大勢の者達の目に入っておりますので。
タチアナ様と見つめ合って愛の言葉を囁き合う、人目を憚る事なく抱き合う、毎日の様に市井に出ては体を密着させて逢瀬を重ねる、王宮内で堂々と口付けを交わす、王子宮にタチアナ様が何日も連泊される姿が目撃された等数え上げたらキリがない状態なのでございます。
私が蔑ろにされている事など可愛らしいとすら思える始末。
そんなにタチアナ様が宜しいのであればサッサと婚約を解消して頂きたいのですが、今の所その気配はなく、少々ガッカリしております。
自己紹介ですので淑女らしくお話し致しましたが、堅苦しい言葉遣いは肩が凝りますのでこの辺りで止めておきましょう。
王宮に到着すると先に来ていた父が迎えに出て来てくれていた。
公のパーティにエスコートも無しに参加するのはマナー違反になるので、第三王子のエスコートを期待出来ない私は父にその役を頼んでいた。
パーティ会場である白亜の間には既に第三王子がタチアナ様と共にいらしていた。
相変わらずの密着度だ。
タチアナ様はロミオ様の腕に自分の腕を絡めており、ロミオ様はタチアナ様の腰をしっかりと抱いている。
私が入場したのを横目で見ても素知らぬ顔をされている。
どこまで人を馬鹿にすれば気が済むのだろう?
他のパーティなら致し方ないが、今日は国王陛下の祝賀パーティ。
そんな場に婚約者がいながら堂々と別の女性を連れて現れる事の意味を分かっていないのだろうか?
そして国王陛下と王妃様はこの状況を見てもまだ我慢してくれと頼むのだろうか?
そんな事を考えながら私は壁の花と化していた。
針の筵の様に皆の視線を浴びながらずっと堂々としていられる程図太い神経はしていない。
公爵令嬢らしく表情に表さないとしても心は傷付くのだ。
例えロミオ様との間に愛だの恋だのと言う感情が生まれていなくても、決して傷付かない訳ではない。
会場の中央ではロミオ様とタチアナ様が仲睦まじくダンスをしている。
必要以上に体が密着しているからかタチアナ様が何度もロミオ様の足を踏んでいる様で、時折ロミオ様が痛そうな表情を浮かべている。
見てる方が馬鹿馬鹿しくなってくる。
私がダンスの練習でターンを間違った時は舌打ちをしていたのに、タチアナ様には足を何度踏まれようが笑顔で許せるとは。
愛の力とは大層偉大な物ですね、なんて嫌味の1つでも言いたくなる。
パーティもお開きになり、私は帰りの馬車に向かっていた。
父は仕事が残っているそうなので待機させてある公爵家の馬車で帰る予定になっていた。
「クリスティ!」
もう少しで馬車が見えてくると言う所でロミオ様の声に呼び止められた。
振り向くとロミオ様とタチアナ様がピッタリと寄り添って立っていた。
「ご機嫌麗しゅう、王子殿下」
私は淑女の鑑と言える程のカーテシーをし、堂々と胸を張った。
「今日は公爵と来たのだな」
何を当たり前の事を言っているのだろう?
婚約者がいる私が父以外の誰にエスコートを頼めるだろうか。
「何分婚約者のある身ですのでエスコートを頼めるのは父以外おりませんので」
「そ、そうだな、当然だ」
この人は何をしたいのだろうか?
わざわざタチアナ様との仲の良い姿を私に見せたいのだろうか?
そうだとしたら悪趣味としか思えない。
「ロミオ様ー♡」
タチアナ様が上目遣いでロミオ様を見ている。
「早く言わないのですか?タチアナ、もう待てません」
「あ、ああ、そうだった…」
ロミオ様が何かを決意した様な顔で私を見た。
これはもしや婚約を解消するお話なのでは?
「クリスティ!私はそなたとの婚約を破棄する!私の心は既にタチアナだけの物だ。そなたに心を寄せる事は出来ない!」
「そうですか、承知致しました。ですが婚約破棄ではなく解消ではいけませんか?破棄となりますと色々と面倒な事が増えてしまいますので」
「そんな事言ってただ単に嫌なだけなんじゃないの?」
タチアナ様が口を挟んだ。
「いえいえ、私、婚約を続行する気持ちなど疾うの昔に無くなっておりました。ただ王妃様からの希望でございましたし、王子殿下との婚約をこちらから解消して頂く事は難しく、出来れば穏便に解消出来ないものかと常日頃思っておりました」
「そんな事言って!私は騙されないんだから!」
タチアナ様が真っ赤な顔でこちらを睨んでいる。
「まぁまぁ、タチアナ。可愛い顔が台無しじゃないか」
ロミオ様が甘い声でタチアナ様を宥めようとしていたが、タチアナ様の手元で何かがキラッと光ったかと思うと、私の目の前の景色がグニャリと歪んだ。
『これは、転送魔法?』
そう思った次の瞬間、私は木々の鬱蒼と生い茂る見知らぬ場所へと飛ばされていた。
湿度も気温も高い場所の様で汗が吹き出した。
ドレス生地が肌に張り付き気持ちが悪い。
「ここは何処かしら?ジャングル?王宮に戻ってお父様に直接この事を伝えた方がいいかしら?」
こんな場所に飛ばされたからと言って慌てる私ではない。
次期魔道士団長候補だった私を舐めないで貰いたい。
転移魔法などお手の物だ。
「きちんと録れているかしら?」
ペンダントを外して魔法をかけると、先程のロミオ様とのやり取りが映像として映し出された。
ロミオ様に声を掛けられた時に念の為に録画していたのだが、転移魔法をかけられて転移する瞬間までバッチリ記録に残っていた。
「良かった、綺麗に録れてるわね。これならお父様のいる王宮の執務室に転移するのがいいわね」
目を閉じると父の執務室を思い浮かべた。
足元がふわりと浮いた感じがして、次の瞬間には父がいる王宮の外交執務室の父の机の前にいた。
「な、何事だ、クリスティ。転移魔法か?」
「お仕事中申し訳ございません、お父様」
突然目の前に現れた娘に腰を抜かしそうな程に驚いた父だったが、私がこんな暴挙に出る事は緊急時にしか有り得ない事を知っているので直ぐに落ち着きを取り戻した。
私は手短に事情を説明し、ペンダントに記録した映像を見せた。
父の顔が血の気が引いていき、目だけが恐ろしい程に血走っていた。
「して、あの娘、タチアナと言ったか?あれは魔法具を使用したのだな?」
「はい、そうだと思います。手元で何かが光りましたし、タチアナ様は魔力が無かったと記憶しておりますので」
「よりにもよって転移の魔法具とは…」
この国では魔道士による魔法の使用は認められているが、それはきちんとした職業として許可されているだけで、許可の無い者の魔法の使用は禁じられている。
魔法具は魔道士のみに魔法の補助具としての使用と所持が認められているが、それは国にきちんと登録した物のみと限定されている。
その昔、貴族に命令されて魔法具を使用した魔力を持たない平民の多くが魔法具の扱いに失敗し命を落としたり大怪我を負った。
中には生まれたばかりの赤ん坊の体に魔法具を埋め込み人間兵器を作り上げようと目論む者まで現れた為、その当時の国王が新たな決まりを作り上げた。
この世界には魔力を持つ者よりも持たない者の方が多く、魔力を持っていてもきちんと訓練を受けた者でなければ魔法は扱えず、例え扱ったとしても暴走させ命に関わる事態を引き起こす。
そこで国王は魔道士という職業を作り出し、魔道士以外の魔法の使用を禁止し、魔法具も魔道士以外の使用を禁止したのだ。
また魔道士は国によって組織化され、魔力がある者は国に保護され魔法の訓練を安全な形で行い、魔法を使える適性が無いと判断された場合でもその後の職に困らない体制を作り上げた。
魔道士の仕事内容は多岐に渡り、兵士として国の防衛に当たる物から市井の生活を支える物まで様々なジャンルが存在する。
夜の街を照らす魔法街灯を灯すのも魔道士の仕事なのだ。
また魔法具は魔道士の中でもごく僅かな者にしか作り出す事が出来ない特殊な物で、その制作も管理も国家の元で行われており、簡単に外に流れる事が無いようになっている。
そんなこの国で魔力も持たないタチアナ様が魔法具を不正使用したと言う事は重罪に値する。
それをタチアナ様に渡した者もまた同罪となり、最悪の場合極刑となる。
しかも転移魔法の魔法具となるとその罪の大きさは計り知れない物になる可能性があった。
転移魔法は高位の魔道士ならば比較的簡単に使用出来るのだが、魔法具としてそれを作ろうとすると必ず歪みが生じ、転移魔法具で転移した者の大半が身体の一部や全部が破損してしまい、命を失ったり、まともな体ではいられなくなってしまう。
中には何も問題なく転移する場合もあるのだがそれは一割にも満たない。
完全に安心して使える転移魔法具が生み出せない為、転移の魔法具は作る事さえ禁止されていて、本来であればタチアナ様が手にしている事すら有り得ない話なのだ。
「お前が無事で良かった」
「ええ、本当に…運が良かったとしか言いようがありません」
「その記録映像を見る限り、第三王子はあの小娘が魔法具を使う等とは思っていなかったようだな」
「そうですね、とても驚いた顔をされていましたので、恐らく知らなかったと思います」
「だが、知らなかったでは済まされないし、私が済まさない」
父の体から憤怒のオーラが漂っている幻が見えた。
「私はこれから陛下に謁見を申し込んでくる。緊急案件だと伝えてくるからすぐに謁見が叶うだろう。お前はそれまでこの部屋を出ないように。何時またあの小娘に遭遇して魔法具を使われるか分からんからな。くれぐれも用心するように」
そう言うと父は部屋を後にした。
私は念の為にシールドとミラー(魔法反射)の防御魔法をかけてソファーに腰を下ろした。
暫くして父は3人の護衛を連れて執務室に戻って来た。
「陛下が謁見に応じてくださった。参ろう」
父が私に手を差し伸べたのでその手を取り立ち上がり、国王陛下が待つ部屋へと向かった。
謁見の間に向かうかのかと思っていたのだが、向かった先は国王陛下のプライベートルームだった。
寝巻きの上にガウンを羽織りソファーに寛いでおられる陛下は私達を見ると「挨拶は良い。して、何があった?」と仰った。
父が私の身に起きた事を説明し、私はペンダントの記録映像を陛下に見せた。
「至急ロミナルドを呼べ!タチアナと言う娘の身柄も確保しろ!」
陛下は厳しい面持ちで指示を出した。
「クリスティ、無事で何よりだ。此度は愚息が迷惑をかけた。すまん」
そこにはいつもの威厳のある国王陛下の姿は無かった。
ただ父である1人の男の姿があった。
暫くしてロミオ様が兵士に囲まれてやって来た。
私を見ると驚きと共に安堵の表情を浮かべた。
「クリスティ、無事だったのだな」
ヨロヨロとこちらに近付いて来ようとしたロミオ様を国王陛下が制した。
「お前にクリスティに近付く権利はない!」
その声はいつもの威厳のある国王陛下の物だった。
「お前は今回の事の重大性が分かっているのか?」
「父…国王陛下。私はクリスティに婚約破棄を申し出ましたが、タチアナが転移の魔法具を使用するなど夢にも思っておりませんでした」
「知らなければ自分には何の罪も無いと?」
「タチアナが魔法具を持っていると知っていれば何としてでも止めました!私はタチアナを愛しております。愛する者をみすみす犯罪者になど誰が致しましょう!」
「お前はそもそも自分の罪が何なのか理解しているのか?」
「愛する者の暴走を止められなかった罪です」
「違うぞ!お前の罪は婚約者がありながら愚かにもあの様な得体の知れない娘に情を移し、何の落ち度も無いクリスティを命の危険にまで晒した事だ!」
「そ、それは…」
「タチアナと言ったか、あの娘は?お前はあの娘の話を鵜呑みにしていた様だが、あの娘は正式には子爵家の娘ではない」
「ど、どういう事ですか?」
「あの娘は現テレーズ子爵の弟が娼婦に産ませた子供だ。母である女が死に、子爵の弟の方も流行病で死んでしまったが故にテレーズが養子にと引き取ったのだが、あまりの素行の悪さから養子にするのを躊躇っていた為未だ養子縁組すらなされていない平民の娘だ」
「なっ…」
ロミオ様は顔面蒼白になり言葉を失った様に黙ってしまった。
『愛しているのなら平民であろうとその愛を貫けば宜しいのに。例えそれが犯罪者だとしてもその罪を自分も半分背負う位の気概を見せて下されば宜しいものを!』
意地悪にも私はそんな事を考えていた。
「お前の望み通りクリスティとの婚約はこれを以て破棄する!破棄に伴うクリスティ並びに公爵家への慰謝料等は全てお前の個人財産から支払う様に!此度の婚約破棄はクリスティには一切の落ち度は無いし、私も王妃もクリスティとの婚約破棄は望んでいなかったのだからこちらからの支援は一切期待しない事だ!そして知らなかったとは言えお前の愛する者が仕出かした事、お前にもその責任の一端はある!よって王位継承権は剥奪、今後10年辺境の地にて一兵士として己の精神を鍛え直せ!」
「そ、そんな!父上、いえ、陛下!私も騙されていたのです!寛大な措置を!」
「この場で切り殺され無いだけいいと思え!」
こうして私とロミオ様の婚約は無くなった。
タチアナ様は拘束された後厳しい取り調べを受けたらしい。
最初は「たまたま拾った」と誤魔化していたそうだが、執拗な取り調べの末に黒幕の正体を話したそうだ。
黒幕は我が公爵家と並ぶもう一つの公爵家、キンバリー家の長男である【フェルメス・キンバリー】様だった。
入手経路は偶然の産物だった。
領地内で昔に制作された転移魔法具が見つかり、フェルメス様が発見者に口止め料を渡し手に入れたそうだ。
ご丁寧に魔法具には『転移魔法』と文字が刻まれていたのでそれが転移魔法具だと分かったらしい。
フェルメス様も直ぐに身柄を拘束され、その後動機を明らかにした。
フェルメス様の動機は一つに我が家の力を削ぎ落とす事だった。
二大公爵家として我がボナティール家とキンバリー家はこの国の貴族のトップに君臨していたが、私が第三王子の婚約者に選ばれてしまった事でボナティール家の力が増す事を恐れたのだそうだ。
次期当主としてボナティール家が力を付けるのを見過ごす事が出来なかったと言っていたそうだが、次期当主として決まっていたのはフェルメス様ではなかった。
次男で弟であるアグスト様が内定されていたそうなのだが、フェルメス様は長男だから当然次期当主は自分だと思っていた様でその事実に半狂乱になったらしい。
フェルメス様は当主に相応しい素養も身に付けず、素行も悪く、本人だけが知らない所で公爵家から見放されていたのだ。
他の動機としては私の事があった。
なんと、フェルメス様は私に好意を寄せておられたそうなのだ。
ロミオ様との婚約が解消されても私とフェルメス様の婚約は普通に考えて有り得ないと思ったフェルメス様は転移魔法具で私が転移させられた際に体の一部を欠損し戻って来る事を想定し、傷物になった私をフェルメス様が引き受けると言うシナリオを描いたらしい。
体の一部を欠損するだけならまだマシだが、下手したらバラバラ遺体の様になってしまっていたかもしれなかったのにである。
私が五体満足で戻ってこられたから良かったものの、何とも浅はかで身勝手で幼稚な考えである。
タチアナ様はこの国で魔法具が魔道士以外の者の使用を禁止されていてる事すら知らなかった様で「私は騙されたのよ!」と叫んでいたそうだ。
2人の判決は大々的に発表された。
タチアナ様は子爵家の養子になっていなかった為平民としての物になり、極東のこの国で一番過酷な鉱山で慰安婦になる事が決まった。
そこに送られた者は長くて5年、短ければ2~3年で命を落とすと言われている。
女性には鉱山労働は困難と言う事で慰安婦として送られるのだ。
慰安婦と言うと慰み者の印象を受けるだろうが実際には鉱山内での家事労働を一手に引き受ける者である。
現在極東の鉱山には慰安婦がいないそうなので、タチアナ様はその全ての家事労働を決して逃げられない様に監視された状態で行わなければならない。
仕事が回らなければ厳しい罰も受ける。
数百人規模の鉱山の家事労働を1人でこなす為には寝る暇も惜しまなければならないだろう。
テレーズ子爵家は自主的に爵位を返上した。
フェルメス様は公爵家から勘当された上でこちらも平民として極東の鉱山に罪人鉱夫として送られる事が決まった。
極東の鉱山はこの国で一番厳しい環境にある訳だが、別にそこで働く者達全てが死んでしまう事はない。
罪人鉱夫のみが数年で命を落とすのだ。
罪人鉱夫は最も最下層の坑道に送られる。
そこは未処理の為に毒素や魔素を多く含む魔法具の原材料ともなる魔石が採れる場所で、通常の鉱夫は立ち入らない場所だ。
罪人鉱夫のみがその場に送られ、危険な魔石の発掘作業を行うのだ。
そして、知らなかった事とは言え長男を止められなかった公爵家は一階級降爵となり領地の半分を没収される事になった。
刑が決まった後にキンバリー家の現当主であるブエノス様とアグスト様が謝罪に来られた。
此の度の事で相当ご苦労されたのであろう、随分と窶れたお顔をされていた。
あれから2年が過ぎた。
私は王宮魔道士団の団長として働いている。
公爵家の令嬢と言う身分もあり他国からの婚約の打診が来ているのだが全てお断りしている。
父も私を無理に誰かと婚約させようとはしない。
「お前は公爵家等と言う物を背負わず好きに生きなさい」
と母と姉には言われている。
公爵家は姉と姉の婚約者である隣国の第五王子である【イシス・ワリュサー】様が盛り立てて行くだろう。
私はいつか、自分が真に心を許せる相手が現れたら結婚してもいいかな?と思っている。