第4話 復讐の決意
「な、なんで………」
いくら息子が弱くても、こんな仕打ちは無いだろう?
さすがの精神力も、この状況ではあまり役に立たないらしい。
でも、泣きたいのをぐっとこらえ、歩き出すことにした。
(ここはダンジョン。どこに魔物がいるか分からないからな)
ダンジョンというのは、最低ランクであるDでも地上を徘徊するモンスターの3倍ほどの強さを持っているという恐ろしい場所だ。
だからこそ、地上にいる魔物は魔物ではなくモンスターと呼ばれているのだ。
そんなダンジョンのランクは、っしたから行くとこんな感じである。
E→E+→D→D+→C→C+→B→B+→A→A+→S→S+→SS→SS+→SSS
こんな感じになっているのだが、この【深淵】は、SSSランクに分類されるんだ。
「ほんと、よく息子をこんなところに転移させられるよな………」
これをやったアストラルは相当な屑に違いない。
だが、過ぎたことを気にしてもしょうがない。
前を向くんだ。
そう、たとえ、Aランクダンジョンのダンジョンボスであるミノタウロスが出てきても………。
「て、ミノタウロス!?」
「グルルルルルルぁぁぁぁぁ!!」
「く、くっそーーーー!!」
俺は走った。
走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走った。
そして気づけば、行き止まりにいた。
『こんなところで死ぬのか?』
頭に声が響く。
いや、俺だって死にたくないしアストラルに一泡吹かせてやりたいよ。
でも、もう無理じゃん。
『お前にはあるじゃないか。この状況を打破する力が』
目の前がスローモーションになり、思考が回転する。
力、力………力!
そうか!力とは、スキルの事だ!
「『無限水筒』出力全開!」
そう叫ぶと、水筒が目の前に出現し、空中から滝のように水を出している。
ミノタウロスはその水圧に耐えきれず、一瞬で流されていく。
これが、俺の力。
俺が手にした力。
家も、家族も、自分の持ち物もすべて失った後に1つだけ残った力。
「これで、この力で、俺はあいつに自分をこんな目に合わせたことを後悔させてやる」
俺は静かに、たった一人で、一つの力と共に暗い暗い黒色の炎を胸にともした。