8.“入瀬ほるん”です!
おはようございます!
第8話
“入瀬ほるん”です!
「で、イリーゼは、日本名は何にしたんだい?」
「はい、エマ様、イリーゼ・ホルンですので、『入瀬ほるん』にしました」
???
「「ほるん」」
「はいぃ?」
「DQNやわ」
「DQNだっちゃ」
「えっ? なんで!
だって『ほるん』ですよ! 可愛いですよね?」
その時、キーナは思った。
この娘は、いわゆる“アホの娘”だと。
さらに、エマリーが付け加えた。
「イリーゼ、ここ関西では、『放る』とは不要物という意味や。
『捨てる』とも言う。
つまり、『ほるん?』と言えば、『この娘、役に立たないから、不要物として捨てるのか?』と言うことやな」
……
「ちょっと、エマ様! 今なんと、おっしゃいましたか? 私が、不要物と?」
「今からでも、考え直し」
「『ほるん』、可愛いですよね? 可愛いですよね? よね?」
まあ、バカ丸出しも良いだろうと思い、
「今更、変えるのも、あれなんで、それで行けば、どう?」
「さすが、キーナさん」
「「……」」
「まあ、それはさておき、本題に入るよ」とエマが真顔になった。
「まもなく、加藤彬が箱庭に入るの。第ニ世代は、彼が最後になるわ。
知っての通り、加藤彬は男よ。
魔女試験候補者に男はいないはずなのに、男が紛れ込んでいた。
この謎を解明するわッ」
「オォッ!」とイリーゼが拳を上げる。
「で、イリーゼには、加藤彬と接触し、出来るだけ謎を解く判定材料を与えて欲しいの」
「判定材料ですか?」
「箱庭のイリーゼは、ここでの記憶は無いのだけど、睡眠中、こちらとのやり取りができるわ」
「夢通信ですね。私は始めてです」
「あと、イリーゼは加藤彬の他、ジプシー・アンも担当してね。
それと、森の王国は、先に箱庭入りした、深井軽子、カロリーネと、出来るだけ接触して欲しいの。
後は、第三世代としてマリーネが、後日、箱庭入りするわ」
「あっ、第一世代の方は?」
「既に不合格になっているので、心配ないの」
「不合格なら、もう箱庭に、いないのね」
「そうそう」
「イリーゼの箱庭でのキャラクターなんだけど」
「お貴族様が良いですわッ」
『出た! さすがアホの娘!』と、ワタクシ、キーナ・コスペルは思ったが、エマが
「貴族だと、ジプシー・アンと接触が無いのよ。
だから、町娘だけど、貴族と接点があるようにしたいの、そこが難点だわ」
「アンを貴族には、出来ないの?」と、聞いてみた。
「そう、そこよ。何故か、彼女は他の職業に出来ないのよ。禁則事項なの」
「じゃあ、純情で、可憐な町娘にして下さい」
そ、それって、町娘以外は設定行為でなく、自分でなるもんではないのか?
しかし、エマは、
「オッケー♪」
オッケーなのか? 私は、初めて知ったぞ。“純情で、可憐な町娘”という設定を……
さて、3人は喫茶店から出ることにした。
すると、雲行きが怪しくなって、ポツリポツリと、降り出してきた。
「あっ、傘がない」
「うーん、空間魔法でバリアは張れるけど、目立つよね」
「気象情報を見せてください」と、アホの娘が言うので、スマホの気象情報を見せてやったら、
「はい、風向きが分かりました」
うん、分かってどうする?
すると、イリーゼは、両掌を前に突き出し、10本の指を大きく開くと、
「演算集中ッ!」
と、叫ぶと目を閉じ動かなくなった。
その僅かな時間で、雲の動きが変わってしまった。
「今、大気を操作して、雲の動きをコントロールしてます。しばらくすると雨は止みます」
と、ニカッと笑った。
“演算集中”とは、時空の科学者の理論構築から計算、実施までの行為をひとまとめにしたものだ。
それは、魔法より時間が掛かるはずだが、魔法並みに素早く、イリーゼはやってみせた。
こ、こいつ、ヤバい奴だわ!
単なるアホの娘では、無かったわ!
さっき、殺っていたら、ヤラレはしなくとも、大怪我負ったかもしれん。
どこぞの一方通行で、襲われでもしたら、攻撃魔法が自分に跳ね返ってくるやもしれん!
私の中で、イリーゼの評価は、『DQNだけど、ヤバいアホの娘』に書き換えることにした。
次回の時空の魔女は、巨大ワームホールを誘導していたテスラコイルが故障します。
だれか、ワームホールを捕まえて!
読んで頂き、有難うございました。
次回もよろしくね!