64.メカ対宇宙忍者 その1
深夜に投稿の巻!
第64話
メカ対宇宙忍者 その1
カラス天狗の槍がカチューシャのいたハッチを貫いた。
カチューシャは、危機一髪、亜空間に飛び出した。
命綱とムーバーがあるが、ムーバーでは飛行している船に追いつくことはできない。
ただ横の動きだけが出来る程度だ。
あぁ、この細い命綱だけが、自分の命を繋いでいる。
そんなカチューシャをあざ笑うように、カラス天狗は亜空間を、いとも簡単に移動していた。
「なんだとぉ。この野郎!」
カラス天狗には、ムーバーの様なものは積んでいない。
強いて言えば、カラスの羽の様な物が背中に生えているだけだ。
「これは、魔法ではないのか?」と言ったのはリリースだ。
「「「???」」」
コントロール室は、疑問符の洪水となったが、リリースは続けた。
「こいつら、魔女と似た力を持っている。おそらく魔法なのだろうけど、私たちと同じようで、違うようで、不思議な連中だ。
おそらく、魔力遮断を使えば、亜空間移動は出来ないのではないのではないかな」
「魔力遮断?」
「「「あの霧だ!」」」とコントロール室で、皆の声が木霊した。
そうなのだ! 次元牢屋に散布した魔力遮断の霧を使えば、相手の移動を止めることが出来る。
「パブリチェンコ! すまないがカチューシャを救ってやってくれ。頼む」とリリースがパブリチェンコの手を取り言った。
パブリチェンコは、リリースのこの行動に戸惑った。
なぜだ?
以前、「何が赤軍だ。何が軍人だ」とか言っていなかったか?
「ライフルの弾丸に霧の成分を入れて、狙撃してくれ!」と科学者が言った。
「まあ、仕方がない。狙撃してやるよ。とりあえず、カチューシャと連携を取ろう」
とにかく、カチューシャが持ちこたえている間に、科学者数人と準備を進めることにした。
「おい、真空で実弾は撃てるのか?」
「撃てます。薬莢内に酸素をしっかり含ませていますので、撃てます。ただ、反動は地上のように穏やかではありません。肉体強化は最高レベルにしてください」
「わかった」
「ちなみに、1発で時速100キロで衝突するのと同じ程度の衝撃です」
「あぁ……」と、答えると、パブリチェンコは、めまいを起こしそうになった。
残念なことに、実弾の反動の相殺は肉体強化魔法しかないようだ。
そして、AK47-コスモ改造版を手に狙撃できるハッチに急いだ。
「さあ、行くぞ! 戦闘魔法:命中率向上、集中力強化、肉体強化最大」
ハッチから外を覗くと、カチューシャとカラス天狗が戦闘を行っていた。
カラス天狗はカチューシャの倍ぐらいの大きさで、接近戦を行おうとしていたが、『つかまっては不利だ』と、カチューシャは中間距離での打ち合いを仕掛けていたが、カラス天狗の方が動きが良い。
「これは、いずれつかまる」ということは、すぐに分かった。
ならば、そのつかまる瞬間が、狙撃ポイントだ!
ライフルを構えると狙撃を狙っているとわかる。
カラス天狗がカチューシャを捕まえた一瞬で、構えて撃つ!
そんなことが、この亜空間を高速で移動しているのに出来るのだろうか?
しかも撃った後は、時速100キロで吹っ飛ばされるのだろう。
パブリチェンコは、苦笑せずにはいられなかった。
すると、先ほどのリリースの表情が思い出された。
「なんだろうなぁ。先ほどのリリースの態度は?」そう口にすると、カラシニコフを手に、ハッチの隅に隠れたのだ。
そのカチューシャは、メカになって、今更、人間に負けるわけにはいかなかった。
しかし、電力は無限ではない。
ムーバーのエネルギーは、そろそろ、1/2を消費しようとしていた。
「クソ! オモッタヨリ、セイカがナイ」
すると、カラス天狗の後方のハッチが開き、宇宙服のパブリチェンコが見えた。
「ナンダ?」
「コレハ、ソゲキデハ? ナラバ」
ここで、思い切って接近戦を仕掛けることにした。
メカカチューシャの両腕から、レーザーソードが現れた。
しかし、カラス天狗の槍の方が長いのだ。苦戦する。
「サユウのソードで、ナントカナルとオモッタノダガ……クイトメテ、ミセル」
そして、その成果が!?
一瞬、カラス天狗の動きが止まった。
次の瞬間、カラス天狗の身体がエビぞりになった。
狙撃が成功したのだ。
「ああぁ、カラス天狗がバランスを崩している。まともに飛べない」と、コントロール室のリリースが言った。
狙撃したパブリチェンコは、ハッチから船内に吹っ飛び、身体を壁に強打した。
肉体強化していたパブリチェンコでさえ、気を失ったようだ。
そして、カラス天狗は飛行が出来なくなってきた。
「勝った!」と誰もが思った時、カラス天狗は最後の力を振り絞り、メカカチューシャに抱き付こうとしている。
レーザーソードで薙ぎ払おうとしているカチューシャ。
それでも抱き付こうとしているカラス天狗。
「ハナレロ!」
「キィヤァーーーー」
その時、カラス天狗のくちばしが開いたのだ。
なんだ、ミサイルかレーザーでも発射するのか?
すると、カチューシャの腕の装甲が吹っ飛んだ。
「これは振動兵器だ」と、誰かが言った。
カラス天狗が触れている部分にダメージを負わせている。
カチューシャが壊されていく。
次回の時空の魔女は、カチューシャが壊れる?
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