56.リープ航法
おはようございます。
なんとか書けました。
第56話
リープ航法
カチューシャを回収するため、ハッチからランチと援護のため戦闘機が2機出撃した。
そうはさせじと、ヤマトはカチューシャに攻撃を仕掛ける。
「息が苦しい……酸素が、酸素が欲しい……」
「聞いちゃあ、いられないんだよ」と言ったのは、リリースだった。
「宇宙服を貸して!」
「えっ、リリース様、何を……」
「私の空間魔法で、引き寄せるに決まってるだろ!」
「はい、用意します」
『間に合うのか? パブリチェンコは何やってんだよ。あんな宇宙服に小銃を構えただけの兵士一人にさ!』と、リリースは思った。
ヤマトの攻撃を受け、被弾するカチューシャは酸欠で目まいを起こしていた。平衡感覚を失っているようだ。
「よし、戦闘機も、まだ、届かないようだ。止めだ」
その時、目の前に宇宙服が1体、出現した。
「なんだ!?」
その宇宙服は人が入っているようで、動き出した。
カチューシャの腕をつかむと、スーッと新テスラコイルのハッチまで、カチューシャは移動してしまった。
しかもカチューシャと合体している戦闘機が、ピョンピョンと跳ねるようにだ。
「今のは、何なんだ?」と、仕留め損ねたヤマトは叫んだ。
その通信を聞いたキーナは、
『これはうわさに聞く、リープ航法では?
そんな奥の手まで使ってくるのか?』と思った。
それもそのはず、空間魔法だけでは、リープ航法は使えない。
空間魔法にリリースの重力魔法を付与して、出来る技だ。
つまり、数多の魔女のうち、リリースだけが扱える超難度Sクラスの魔法が、この“リープ航法”なのだ。
これは、通常空間では、かなりの高速移動になる。
そこまでして、リリースはカチューシャを回収しなくてはいけなかったのだろうか?
もっと、別の方法でも良かったのではないか?
すると、リリースが消えていた。
「「どこだ?」」
すると、ヤマト高田の目の前にリリースは現れた。
ヤマトの戦闘機に触れると、急激にバックし始めた。
「うわー! コントロールが効かない」
どうやら、リリースは戦闘機に重力を付与したらしい。
あの戦闘機は、重力魔法が切れるまで下がり続けるか、魔力を相殺するかどちらかをしないと、しばらく下がり続けることになる。
『厄介な奴が出てきたな』と、私は、背中に汗が流れるのを感ぜずにはいられなかった。
「ほう、御大自ら出撃とはね」と言ったのはパブリチェンコだ。
今まで、戦闘は軍人に任せ、ぬくぬくとコントロール室にいたと思っていた。
それが、カチューシャのピンチに出てくるとは、意外にも情に厚いのか、短気なのかはわからんが、このピンチに出てくるとは評価に値する。
さあ、見せてもらおうか、大魔女様の魔力とやらを!
そんなことを考えていると、リリースが消えたと思ったら、カチューシャの横に現れた。
これは、空間魔法で移動したことは分かった。
次に、カチューシャを移動させるのだろうということは想像がついた。
自分自身とカチューシャを移動させるのだろう。それは、中級魔女でも、よく行うことだ。救出の際のテクニックだ。
しかし、今のリリースのやり方は、自分は残ったまま、カチューシャを移動させた。
空間魔法で出来ないことはないが、効率的とは思えん。
しかも、跳ねるように、カチューシャが見えたり、消えたりした。
何だ? どうやったのだ?
リリースは、リープ航法でカチューシャを下げたのは、自分自身も共にハッチまで下がると、この敵の戦闘機が突っ込んでくるだろうと判断したからだ。
これ以上、新テスラコイルに傷を与えるわけにはいかない。
船体を守るのが役目だ。
そして、すぐさま、敵の戦闘機まで空間移動し、重力魔法で吹っ飛ばした。
「何だって、戦闘機なんて、こんなものだったのか。たわいのない」と、そのリリースの通信がコントロール室に聞こえた。
「さすが、上級魔女様だぜ」
「すげー、リリース様」と、コントロール室は湧き上がっていた。
『うん、ムーバーでは、あのリープ航法からは、逃げられんよ。
どうしよう!?』と、今更なんだが、「任せろ」と、言って勇んで出撃したのは良いが、私は震えあがっていた。
次回の魔女は、すたこらさっさが正解?
読んで頂き、ありがとうございます。
雨ですね。




