5.ずんだ王国建国だぜ!
第5話
ずんだ王国建国だぜ!
さて、イベント開始で、ドレスアップして会場に向かうキーナこと、イベント名“きなこ”。
「あ、歩き難い。男の身体って、歩き難い」
いや、歩き難いのは、先程、自分の魔力で作った肉ニクが、大き過ぎたのかもしれない。
なので、内股歩きになってしまう。
「この位のサイズだと思ったのだけれど」
しかし、女装って、こんな進化しているとは、知らなかったわ。
女装用の下着とかあるんだから、驚きだ!
シリコンで前の男の子を隠し、後ろは、お尻をふっくらさせる。
スゴすぎる。
マジマジと見てしまったわ。お隣さんのを!
ヤバヤバで、スゴすぎる。
ひぃ〜、早く帰りたい。なんか目が潤んできたよ。
***
審査員A:「あの内股の男の娘、なんか可愛いよ! 潤んだ目が良いよね」
審査員B:「おぉ、確かに! 可愛くて良い感じ」
審査員C:「可愛くて良い感じなら、“かわよい”ってことですね」
「「……」」
審査員A:「名前は“きなこ”って、ダサダサですね。仙台市泉区出身か!」
審査員B:「いや、名前はともかく、私はきなこちゃん、イチオシだよ」
審査員C:「オレもきなこちゃんだよ」
審査員A:「好きな食べ物は、『ずんだ餅』か! あれ美味いよな」
誰かが言った「“ずんだ姫”に改名だ」
皆さんが、コクコクと頷いた。
***
イベント終了後、ダッシュでトイレに行くキーナ!
「ダメ、大き過ぎた。用をたすのも、面倒よ! いちいち外さないと出来ないし」
そうなのである!
肉型男の子、名付けてワーム君は、尿道は無く、ただキーナ自身に被せているだけなので、それを退けて、用をたさなくてはならない。
そして、このワーム君が大き過ぎたため、
「ひぃ、下着が汚れている。泣くわ、泣くわ。しかも下着は男物。泣く!」
気が落ち着いたキーナは男物下着を脱いで、
「魔力開放! バブル、クリーン、ドライ」
キレイになった下着を眺めていたキーナが呟いた。
「こ、こんな事をするために魔女になったんじゃない。
男物の下着を洗い乾かすために魔力を……
私は、世界を救うために魔女になったはず、なったはずよ。
しばらく泣いても良いよね?」と、誰も答えるはずの無い質問を虚空に問うていた。
そして、この男物の下着を履こうか、どうか迷っていた。
もう、イベント終わりだ!
このワーム君も、丸虫君もいらないはずだ。
ワーム君達は、早く処理しないと、また下着が汚れる。
それに、何好き好んで、男物の下着など履く必要がない!
全部処理して、いつもの私に戻ろう!
と、思ったのはつかの間でした。
実は!
女物の下着が無いッッッ!
キャアー!?
ど、どぅしたら……
よし、選択肢は3つだ!
1つ目は、ワーム君達は処理してノーパンで帰る。
着物やロングスカートならそれも良いだろう!
しかし、今日は着物やロングスカートではない!
チカンがいるかもしれない電車に乗るのは、勇気がいる!
『履いていても嫌だわ』
却下だ!
2つ目は、この横にあるトイレットペーパーを魔力加工で下着を作る!
しかし、いくら魔力加工でも、トイレットペーパーは破れないか?
破れたら足の間から垂れ下がり……
あぁ、考えたくもない!
最後は、ぶかぶかでも、この男物下着で帰る。
まあ、これしかないよな。
邪魔なお肉は処理して、洗いたての男物のボクサーパンツを履く、キーナでした。
トホホ
控室に戻ると、エマがワキワキしていた。
な、な、なんと!
最終選考に残ったようだ。
『いや、もう女に戻ったんですけどね』
仕方がなく会場に行くと、司会者が、
「優勝者発表ッ! 優勝者は“きなこ”ちゃんですッ」
「ハヘッ!?」
何ですってぇー!
「審査委員長から、今後のイベントスケジュールの発表です!」
「はい、審査委員長の音古野 呼須気です。
きなこさんには、このイベントのイメージキャラクターになってもらいます。
そして、きなこさんの好きな食べ物から“ずんだ王国”と名付け、きなこさん改め、“ずんだ姫”と名乗っていただきます」
会場からは、「おおぉ」という声が上がり。
そして、特に男性から、
「姫ッ! 姫ッ! 姫ッ!」
「おとこの姫ッ」という理不尽な掛け声もあったりと、会場は盛り上がりに盛り上がっていた。
本人の意向とは関係なく……
トホホ
かくして、キーナは“ずんだ王国”の“ずんだ姫”として、各イベントに引っ張りダコになるのでした。
一方、エマは、既にマネージャー気分で、
「キーナのため、男物の下着を買い込んでおきましょう」と、張り切るのでした。
この日のキーナは自宅に帰り、涙で枕が倍の大きさになり、また、しばらくは外出できずに、自粛状態になり、さらには、しばらくの間は、自身の心に、キュアをかけ続け続けたのでした。
ぐすん!
斯くして、ずんだ王国は、キーナの思いとは裏腹に、しっかりと建国したのでした!
おわり!
次回の時空の魔女は、実はキーナは、知らずに、ヤバいことをしていました。