24. 魔法は役に立たない
おはようございます。
第24話
魔法は役に立たない
イリーゼが慌てふためいている。
仕方がない、見えない相手が自分達を狙っているのだから。
エマリーは、何度か、深呼吸をして、自身を落ち着かせようとしている。
時空の魔女、時空の科学者は死なない。
自身の身体にタイムループを設定している。
このタイムループを自動発動にすることを、オートヒールと呼んでいる。
致命傷を負った時点から、1分前に戻るというように!
1分前を、2分前に設定すると魔力は、2倍でなく、実際は、かなり多く数倍必要になる。
科学者は科学者で、演算式が長くなり、実用から離れていく。
だから、魔女も科学者も、せいぜい1分前に設定している。
また、1分前に設定しているタイムループを2度発動しても2分前には戻らない。
1分前に戻るループを、2回繰り返すだけなのだ!
だから、時空の魔女や科学者を殺るには、致命傷以上のダメージ、即死で殺すしかないのだ。
しかし、相手は、致命傷未満の傷を与えて楽しんでいる。
痛みを与えて、楽しんでいる。
こういうやり口が、私はたまらなく嫌いなのだ。
一撃必殺が美徳とは言わないが、戦場で殺しを楽しむという狂喜を許す訳には行かない。
そして、キーナ・コスペルは静かに燃えていた。
両手のM16ライフルを握り直し、エマリーに言った。
「エマ、よく聞いて!」
頷くエマリー。
「今から1分間、特大の空間バリアーを出すわ。その間に、エマは皆を治療して。治療が終わったら、移動して身を隠して欲しいの」
「魔力を使うと、位置がバレるわよ?」
「どうせバレるのなら、その間に全てを行うわ」
「考えがあるのね。分かったわ。治療は任せて」
「うん、ありがとう」
そして、キーナは特大の空間バリアーを発動した。
無論、パブリチェンコも魔力に気が付いたのだろう。
魔力を含んだ霧も軽く発光しながら反応している。
まるで、ここに獲物がいると教えているようだ。
しかし、何に魔力を使ったことまでは、パブリチェンコには分からないはずだ。
さらに、エマリーが治癒魔法を使っているから、パブリチェンコは、『余程、助手の出血がヒドいのだろう』と思ったに違いない。
“タッタッタタン”と自動小銃が発砲された。
で、キーナは何をしていたかというと、バリアーの維持以外に暗視ゴーグルを使い、敵の位置を確認していた。
確認をしたら、直ぐにゴーグルを外し、駆け出した。
「タコ壺に狙撃手がいるようだ!」
エマリーは、治癒魔法を使いながら、駆けていくキーナを見て、彼女の無事を祈った。
「治療は終わったわ! バリアーが無くなる前に、移動しますよ」と、エマリーは皆に言った。
次回の時空の魔女は、敵を追い詰めていきます。
今は、辛抱のときです。
読んで頂き、有難うございました。
番外編の『キーナの回想録』も、よろしくね!




