13.瀬戸際のイリーゼ
おはようございます!
雨ですわ!
第13話
瀬戸際のイリーゼ
溝にネズミ達がいるのがわかった。
イリーゼは、このネズミ達を風で、広場の人々の頭上に運び、誰かの顔に落として混乱を作ることにした。
まずは、一匹を補足し、ネズミの身体の周囲に風をまとわせた。
ゆっくり、ゆっくり慎重に!?
「イリーゼ! どうしたの? 急に止まって」と、声を掛けたのは同僚のカサンドラだった。
「あっ!」
その時、空中のネズミの首と胴体が引きちぎれた。
ドバドバっと、ネズミの身体から血や臓物が武装集団と観衆の中に落ちて行った。
「汚ねぇな」
「うわぁ、何だこりゃ」
しまった!?
つい、力量計算を間違えた。
もう、こうなったら、あの溝にいるネズミ全てを、放り込め!
「演算集中ッ!」
「なんだ、ネズミが降ってきたぞ」
よし、今のうちに!
「二人とも、危ないから逃げましょう」と、イリーゼは言うと、二人の手を引き、騎士の詰め所へと走った。
『なんで、イリーゼは騎士の詰め所に向かっているの?』と、クリスタは思ったが、まあ、イリーゼのすることだからね……と付いていくことにした。
「駐在さん、広場が大変なの! ロマの公演に、武器を持った人が、ロマを襲っているの」と、イリーゼが言うも、駐在している騎士は、然程、急ぐ気もなく、返事をした。
「それは、役所に届けている大道芸かな?」
「『届けている』って、言っていたわ」
「それなら、行かなくてはならんな」
つまり、駐在騎士も届けがないのなら、多少、痛い目にあっても良いと思っているのだろう。
イリーゼは、クリスタ達を詰め所に残して、騎士達と、広場へ向かった。
そして、そこで見た風景は、なんと既に暴動は収まっていた。
が、テントの前には、あのジプシー・アンが、頭から血を流し倒れていた。
それを仲間達が、囲んで呆然と立っていたのだ。
「どうした? 説明してくれ」と駐在騎士の一人が話しかけた。
「あっ、駐在さん。
実は先程、武器を持った連中が『帰れ!』と乱入してきたところ、ネズミの死体を投げ入れた奴がいて、それが元で、石の投げ合いになったんだ。
それを、止めようとしたアンの頭に石が当たって、こうなってしまい……」
一人の騎士がアンの脈を確認しているが、首を振っている。
「!!」
そして、リミッター解除しているイリーゼには、アンが、もう元の時間軸に戻され、ここにいるのは、エマリーが用意した人形であると、わかった。
イリーゼは、息を飲んだ。
また、私が、やってしまったの?
しかも、今度は魔女候補者を……
***
エマリーは魔女の鏡の間から、見ていたが、今回は時間操作の介入しなかった。
先程の様に、イリーゼの科学演算で起こしたものでなく、住民同士のいざこざだ。
これで、今回の試験は10人中3人が不合格となった。
あと7人いると言えば、まだ余裕があるように見えるが、期待の大きい第二世代からの脱落者は、正直、痛いのだ。
もし、深井軽子かカロリーネ=マティルデが不合格になることがあれば、大魔女さまの期待に答えられない。
また、加藤彬は未確定要素が多い。
それだけ、アンの早々の死亡は大きかったのだ。
***
帰宅したイリーゼは、就寝したくなかった。
寝ると夢通信でエマリー達に、何と言われ、また、何と答えれば良いのか、わからなかったからだ。
「あぁ、私が、こんなにダメダメだなんて、思わなかったわ。どうしたもの……」
しかし、寝ないわけにも、行かない。明日は出勤なんだから。
ということで、寝ることにした。
翌朝、夢通信のことは、記憶になかった。
イリーゼは、いつもの様に、リミッターの範囲内の行動に戻っていたからだ。
で、夢通信の三人の会話は、
「ダメですねぇ」
「ダメでしたか!」
の繰り返しで、朝を迎えたようだ。
一方、魔女試験は、先行き不安なものとなりつつあったのでした。
次回の時空の魔女は、箱庭に外部から干渉されます。
読んで頂き、ありがとうございます。
次回は土曜日に投稿します。
またねぇ。




