第六章 稲妻
「いて!」
桐馬がドアノブに触れた瞬間、手に静電気が発生した。
「大丈夫?」
「ええ、まぁ」
桐馬は腰を抜かして倒れ出す。
「ダメじゃん」
「それよりも、どうやったら美月さんみたいに強化形態になることができるんですか?」
「あ~あれは君の戦闘データを元に作成したの♪」
「俺の戦闘データ!?」
桐馬は美月の言ったことに驚いた。
「覚えてる?あの日の「夢」」
「もしかして...あの時戦った」
「正解!あれを元に作成したの♪」
「じゃあ!あの夢の人物は美月さん!?」
「そういうことよ♪」
桐馬は心の中のモヤモヤが晴れたかのように息を吐いた。
「どうしての?」
「モヤモヤが晴れた」
「なんの♪」
「夢の中に出て来た夢魔」
「何それ...」
二人が話している中、隕石のような物体が付近のビルに衝突した。
「何!?」
桐馬が慌てて窓を開けて外の様子を見る。
「聞こえる?」
「卑弥呼ちゃん!?」
突然美月のスマホに卑弥呼から連絡が入った。
「今衝突した物体を詳しく調べたところ、あの物体から「バグ」の反応があったの」
「隕石に擬態したのか?」
「誰かが送り込んだ?」
「とりあえず行くなら気を付けて!そこまでするってことはかなり強力なタイプだから」
「「了解!」」
一方その頃、衝突した地点では複数の警備員が調査をしていた。
「隕石でも落ちたのか?」
「いや、隕石にしては規模が小さすぎる。とりあえず英雄さんが来るまで
待機しているか」
「俺達よりもあきらかに年下のがきんちょが英雄か...化け物一体倒しただけなのに」
「バカいえ、彼らとは背負ってる物が違うんだよ!」
「背負ってる物?」
「そうだ。彼らは「死を覚悟して」戦ってるんだ。こんな「ちっぽけな地球」と「腐った人間」のために自らが滅びるまでな」
「なるほど、それで英雄か。勉強になったよ♪」
その時、瓦礫の中からリザードマンらしき怪物が出て来た。しかし、通常のリザードマンとは異なり今回のは全身に稲妻を纏っている。
「隕石の正体はこいつか!」
「だから、隕石じゃねえって!」
「そんなギャグ言ってる場合か!」
警備員が銃口をシグマリザードに向ける。
その直後、シグマリザードが全身から広範囲に稲妻を放ち警備員全員を灰にする。
シグマリザードが歩み出し灰に足をつけたその瞬間、赤い発光体と衝突してシグマリザードを吹き飛ばす。
その発光体からはスカーレッドブラストになった美月が姿を現した。
そして桐馬も続いて現場に足を踏み入れた。
「リザードマンか?」
「そのようね♪さぁ!さっさと片付けるわよ!」
「了解!」
シグマリザードに接近しようとしたその時、シグマリザードが稲妻を放った。
二人はしゃがんでなんとか稲妻を回避することが出来た。
「どうやら、いつもとは違うようね♪」
立ち上がった美月がシグマリザードの頭部に「ドロップスマッシュ」を放とうとしたが、つのから稲妻が出ることが知らなく、美月は右足に稲妻が直撃してしまい、うめき声を上げて地面に倒れてしまった。
「くっそ!」
美月はその場でナイトカリバーソードを作成して「ギガカリバーソードを放ち、シグマリザードに切れ込みを入れた直後、桐馬がクアンタムレットを付けた腕から金色の渦「ライトニング・ハイ・ナックル」
を放ちシグマリザードを吹き飛ばす。
シグマリザードは怯えたのか、地中に潜り姿を消した。
「美月さん!」
桐馬は変身を解除してすぐに美月の元へ向かった。
「ごめん桐馬君。なさけないところ見せちゃって♪」
「そんなことよりも傷は?」
美月は変身を解除してダメージを受けた足を桐馬に見せる。
「結構深いな...」
脛全体が怪我をしている。
「ばんそうこうが必要ね♪」
「いや、はるまえにやることがある」
桐馬が自身のバックからペットボトルを出した。
「少し、しみますよ!」
キャップを開け美月の足に水をかける。
「痛-----------------------------!」
美月は稲妻が直撃した時よりもはるかに大きな声を出した。
そして桐馬がガーゼを使う。
「めちゃくちゃ痛いじゃない!」
しばらくしてから桐馬がバックからばんそうこうを出して美月の足にはる。
「ありがとう。さすが「英雄」ね♪まるでレスキュウ隊の人みたい♪」
「まぁうちの父さんはレスキュウ隊だからね。まさか俺があこがれた父さんみたいに誰かを命がけで救える力が手に入るとはねぇ」
「お父様きっと喜ぶわよ。今のあなたを見たら...」←死んでると思ってる
「死んでないよ!」
「あ!そうだったの!」
「いや、なんで親がレスキュウ隊イコール「死」になるんですか!てか、あなた一回は見たでしょ!本編には登場してないけど」
「あ~メタい♪メタい♪」
「とりあえず、あのトカゲ男」
「なんでわざわざ日本語で言うのよ!普通にリザードマンでいいのよ!はい、もう一回やり直し!」
「どこから?」
「とかげ男から」
「自分も言ってんじゃん」
「私は説明役だからいいのよ」
「なんじゃそれ」
「はい、1.2.3」
「とりあえず、あの「リザードマン」厄介だな...なんかいい方法はないのか!」
「いたーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
桐馬はあやまって怪我をしている美月の足を思いっきり叩いてしまった。
しばらくしてから桐馬は美月を背中に乗せて家に戻って行った。
「状況は?」
卑弥呼が桐馬と美月に問いかける。
「美月さんは負傷、ターゲットは地中に潜り姿を消しました」
「やはり強敵ね」
「奴に接近戦を挑むことは死に行くようなものだからね」
「俺たちはどの形態も接近戦用だからなぁ...なんか、遠距離で戦える形態が必要だな...」
「それだけじゃダメよ。奴の稲妻は遠距離も十分に対応しているからね」
「ん~難しいなぁ~」
「それよりも奴がいつ出てくるかね」
「今、あのリザードマンについて分析したところ、奴は周囲の電気エネルギーを吸収して強くなる能力があるの」
「出るとしたら...都合のいい夜」
「地底からは何とかなりますか?」
「残念だけど奴の反応は消えてるから捜索は不可能ね」
「奴に対抗する力があれば...そもそも強化形態になるにはどうすればいいんですか?」
「イメージが大切だ桐馬君」
「その声は...おじさん!」
「「え!!!」」
美月と卑弥呼が叫んだ。
「久しぶりだな桐馬君。ずいぶんと大きくなったな!」
彼は「ハリー」アドバンの最高司令官である。
「桐馬君...彼を知ってるの?」
「当然だよ。だって父さんの友人だもん」
「そういうことか....」
「うむ、その通り、今の君を見たらきっと」
「死んでませんよ!」
「とりあえず夜まであまり時間がない!」
「よっし!イッツイマジネーションタイム!」
「「寝るな!」」
そして時が来た。
「そろそろ行くか」
桐馬が窓を開ける。
「桐馬君」
その瞬間、美月が桐馬の左頬に唇を付ける。
「生きて帰って来るのよ」
美月は桐馬にネックレスを渡す。
「ご心配なく」
桐馬は窓から飛び降りて外に出る。
そしてついにシグマリザードが地面を突き破り市街地に現れ、人々の悲鳴と共に町の電気を吸収し始める。
桐馬は自身の家が停電したことが気づいた。
「どうやら...始まったようだな」
桐馬はネックレスを強く握る。
「たとえ世を照らす光がなくても君には我々がいることを忘れないでくれ!」
「ターゲットの居場所はマップを見てね♡」
「了解!」
桐馬はマップを確認する。
「結構距離あるな...」
「まさか二足歩行で行くつもり?発光体を使いなさい♪」
桐馬はマップを閉じた途端、周囲から完全に光が消えた。
「変身!」
そう言って桐馬は装甲戦士アーマードバスター「シグマ」クリムゾンに変身する。
装甲のボディは赤と水色が混ざっていて、下半身の装飾にはサイドに青い稲妻が描かれている。
発光体を纏わせた桐馬はシグマリザードのところへ向かう。
電気を吸収して次々と停電させていくシグマリザードを発見した桐馬は発光体を解除し、空中から「ライトニングスマッシュ」を放ってシグマリザ―ドに当て吹き飛ばし、地面に着地する。
着地した桐馬が立ち上がると同時に自身の装甲を青く発光させ、周囲を照らす。
倒れた状態からシグマリザードが稲妻を桐馬に放つが、手で防がれたのと同時に自身の能力で吸収される。
シグマリザードが立ち上ろうとした瞬間、桐馬は通常形態に戻り超高速を発動して音速を超える疾風の力でシグマリザードに近づき、シグマクリムゾンになって立ち上がったシグマリザードのつのを掴み、稲妻エネルギーを吸収し、「サイドスマッシュ」で吹き飛ばし、つのを折る。
吹き飛ばされたシグマリザードはその場でゲートを作り、中へ入ろうとする。
「させるか!」
桐馬は右手から「シグマウィップ」という稲妻エネルギーで青く発光するムチを作り、シグマリザードに巻き付け、吹き飛ばして遠ざける。
「接近禁止命令だ!」
その直後、複数のリザードマン達が出てきて桐馬に襲い掛かる。
それにまぎれて瀕死の状態のシグマリザードはゲートに入る。
「接近禁止命令だしたばかりでしょうが!」
桐馬は「シグマイリュージョン」で稲妻エネルギーでできた自分の分身を
2体生み出す。
「頼んだぞ」
「「ああ!」」
本物の石塚桐馬はゲートの中へ入る。
「「お前達の相手は俺達だ!」」
分身の一人はシグマウィップと美月のネックレスを合体させ「シグマナイトウルミーソード」を作成し、腕に装着させて剣先を振るスピードを「ナイトカリバーソード」の力でアップさせ「シグマウィップ」の力でムチのように細長い光刃を振りリザードマン達を木端微塵に切り裂き粉々にした。
もう一人の分身は通常のクリムゾンに戻り、迫りくるリザードマンに接近して腹にクアンタムソードを突き刺し巴投げでリザードマンを地面に叩きつけると同時に光剣を折り、リザードマンを串刺しにした状態にする。
「そこで寝てな!蜥蜴」
桐馬は串刺しのリザードマンを放置し、目の前にいるリザードマン達に向けて「レザトロカッター」を応用した桃色の光線「レザトロパニッシャー」を放って赤黒い血とレーザーによって粉砕されたリザードマン達の体の一部を吹き飛ばせ撃破した。
その直後、もがき苦しんでいた串刺しのリザードマンが息を引き取り、粒子となって消滅した。
「あとは本物に任せるか」
一方その頃、本物はゲート界のエネルギーをに吸収してさらに強化しようとするシグマリザードを見つける。
「どんだけ食うんだよ。もう十分だ」
桐馬はシグマイリュージョンで強化シグマリザードを囲みバレットショットを放つ。
その直後、強化シグマリザードが自身の稲妻エネルギーで巨大な翼を作成し、宙へ飛んでバレットショットを回避する。
シグマリザードはそのままドラゴンのように素早く飛行し、逃走する。
「逃がすか!」
桐馬は分身を自身の体に戻して宙へ飛び、強化シグマリザードを追って飛行する。
二人は風の向くまま超高速で飛行する。
桐馬は大量の光弾を相手に与える「クラスターショット」を強化シグマリザードア放つが、恐るべき飛行スピードですべて回避される。
外れた光弾はさらに分解され、やがて粒子のように細かくなり強化シグマリザードの翼に当たるも、光弾の元は「稲妻」のため、強化シグマリザードに吸収されてさらに翼を巨大化する。
桐馬は複数の分身からタックルを放つ「イリュージョンタックル」を発動し、巨大な翼に複数のタックルをぶつける。
凄まじいダメージで強化シグマリザードの翼が消滅し、地面に落下する。
桐馬はより落下ダメージを与えるため、「イリュージョンスマッシュ」を発動し、複数のキックを強化シグマリザードの腹に当てて地面に落下させる。
着地した桐馬は立ち上がった強化シグマリザードにシグマウィップを放って拘束するが、一筋縄とはいかずにロープを破壊して拘束を解いた。
そして桐馬は最終手段として、両腕に光線エネルギーをためて強化シグマリザードに水色の粒子化光線を撃ち込み吸収させる。
すると、シグマリザードの体が水色に変貌し、粒子化して消滅する。
しかし、ゲートコアを破壊しなければ終わりではない。
「美月さん...力を借りますよ!」
その時、桐馬の目に微かにネックレスが金色に発光したのを見た。
桐馬はナイトカリバーソードを作成して、避雷針のような剣先を相手に突き刺す「シグマナイトショック」を放ち、ゲートコアに剣先を突き刺す。
その直後、コアに雷が直撃して破壊に成功し、元の光を奪われた現実世界に戻る。
「俺の稲妻エネルギーを使えば!」
桐馬は自身に蓄えてある稲妻エネルギーをすべて消費して町に電気を与える。
すると、次々と建物が点灯していった。
「ハリー大佐!町の光が戻っていきます!」
「さすが彼の息子だ!」
そして桐馬の家にも光が戻って来た。
「やったのね♪桐馬君」
どうやら桐馬の力で町の光を取り戻すことが出来た。
「一件落着か。よっし!家に帰るとするか!」
そして、あれから一日が経った。
「美月さん!これ、ありがとうございました」
桐馬はネックレスを美月に返す。
「まいど♪」
桐馬は美月の足を見た。
「どうしたの?まさか!小っちゃいなんて!」
「そうじゃなくて、傷はどうですか?」
「あ~あれね♪寝たら治っちゃった♪」
「まじで!?」
「うん。まじ」
「やっぱ月の偉い人は違うな~」
「そんじゃ!走ろうか!」
「大丈夫なんですか!?」
「言ったじゃん完全回復したって!」
桐馬っが走り出そうとしたその瞬間、何か妙なことに気づき、立ち止まった。
「桐馬君!?」
「あび今行きます!」
町の光と引き換えに「何か大事な物を失われている」気がした。
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