かたこりになりたい
「たんとんたんとんたんとんとん、おじいちゃん、気持ち良い？」
「うんうん、ありがとねえ……なっちゃんは、肩たたきが上手じゃのう」
「うんっ！ いつでも叩いてあげるからねっ！」
「そうかい？ 年を取ってから肩こりがヒドいから助かるわい」
「はあ、おじいちゃんは良いなあ…なっちゃんも肩こりになりたいよー」
「おや、どうしてだい？」
「だって、肩を叩いてもらったら気持ちいいんでしょ？ なっちゃんも気持ちよくなりたいよ！」
「肩を叩いてもらってる時は気持ち良いが、普段は辛いんじゃよ。それでも良いのかい？」
「……うん、いい！」
「なっちゃんは、変なことを言うねえ……」
「えへへ。だって、なっちゃんも肩を叩いてもらいたいんだもん」
「そうかいそうかい、じゃあ、じいちゃんが、なっちゃんの肩を叩いてあげようかねえ」
「え、いいの？！」
「いつもなっちゃんに肩たたきしてもらっておるから、たまにはお返しじゃ」
「わーい！ ありがとう！」
「それ、たんとんたんとん……」
「いたたたたたっ！ いたい！ もういいよう！」
「あははははっ！ そうかね。やっぱりなっちゃんに、肩こりは無いのじゃなあ、良いことじゃ」
「なっちゃん早く肩こりになりたいよー！ えーん」
「こりゃ困ったのう……」
――それから２０年の月日が経ちました。
「ふえぇ……気持ちいい～」
「こら！ 直美、母に肩もみさせるなんて、何て罰当たりなんだろうね」
「だってー、毎日デスクワークで、肩ごりごりなんだよう！」
「あなた、小さいころは、肩こりになりたいって、泣いてたんだよ？」
「うわあ！ 無いわー！ 肩こりを知らない頃に戻りたーい！！」
……きっと天国で、おじいちゃんが笑っているね。
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【朗読女子】「かたこりになりたい」揺蕩海月～たゆたふくらげ～【癒し系ボイスブック】
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イラスト：あゆくま☆、ボイス：文月水咲、ライター：二区９
