居酒屋にて2
「俺の父さんの会社がつぶれるかもしんない。」
唐突に東山が言ったセリフにしばらく場が凍り付いたが小坂よりも早く立ち直った龍馬が恐る恐る東山に聞く。
「あの大企業が?ほんとなのか?」
「ああ、だから今まで役員でしかなかった父さんが社長に選ばれたんだ。
企業のイメージアップのために役員の中で最年少っていうのは必要だったから父さんなんだ。」
「そもそも会社が苦しくても社長に出世できたからいいんじゃないの?」
かなり無神経な発言をしてしまったと東山の顔を確認してさすがの小坂もまずかったかなと感じた。
しかし龍馬も会社は苦しいが出世できたことは喜ばしいことなんじゃないかなと頭の片隅で思っている自分もいたのであったが。
「確かにある程度利益が出てる会社だと嬉しいかもしれないが今SONYは赤字で首が回らない状態なんだ。
親父はなんとかしようと奮闘してるんだけどまだそこまで良くなってないんだ。
少しでも助けてあげたいなって考えてるんだけど俺には何もできなくてさぁ。
で、信頼できるお前たちに愚痴ってるってわけ。」
「確かになー。
そんな状況なら喜べねーわ。」
さっきの無責任な言葉を悔いている小坂であった。
すぐに申し訳ないと思うあたり小坂の人として、友人としての良さが出てる。
「それなら俺がなんとかしようか?」
突然龍馬がこんなことを言い出した。
もちろんそれにはちゃんとした理由がある。
龍馬は将来のために必ず家電企業を1つは買収しようと考えてた。
さらに、自分の総資産を見たところ50億を突破してたのである程度株を買っても問題ないと判断したためだ。
今のSONYの株は業績の悪化のため底値なのも理由にあるのだが。
ちなみに株を買ったらなぜ解決するのかと思った人もいるかもしれないがそもそも株というのは1つの会社の運用資金を集める手段だ。
株を買ってもらってその代わりに長く保有すれば株主優待で利益が毎年帰ってくる。
なので龍馬はSONYの株をかなり買って東山の父親を助けてあげることにしたのだ。
「何を言ってるんだ。
確かに龍馬は服とか高級ブランドに切り替えてある程度お金を持ってるのはわかるがそれでも所詮俺たちは学生なんだ。
学生に何ができる?」
「言ってなかったかもしれないが俺は日本でもある程度お金持ちの層に入ると思う。
だから親父さんを救うこともできると思うぞ。」
ここで断言しないのはいくらお金を龍馬が持っていたとしても必ず業績が上がるとはいえないらだ。
「ちなみに俺の資産は50億円ほどある。
銀行の通帳では数億円しか入ってないけど株の投資状況を見たらそれぐらいあるぞ。
見せた方がいいか?」
そんな龍馬の言葉を信じようとするが急に信じることもできないので龍馬に見せて欲しいと頷く。
ここで言葉で返事しないのはまだ驚きを隠せないためだろう。
「わかった。これでどうだ?」
こんな簡単に見せているが実は最近株の投資を龍馬はスマホでやっている。
もちろんずっと知らなくて最近知ったのだが。
「俺、実はすごいやつと友達だったんだな。」
さっきまで声が出なかったが両親がかなりお金持ちなのである程度金持ちに免疫がついてる東山はすぐ立ち直りこんなセリフを吐いのであった。
「そうか?
それで親父さんの件どうする?
もちろん、俺はある程度勝算があると思ってるから頼まれなくてもやろうと思ってるが。」
「ちょっと待て!
なんでもう普通に会話してんだよ。
俺驚きすぎてまだ動揺してるよ。」
やはり小坂は貧乏な家で育ったため大金に免疫がなかった。
「そんなこと言っても持ってるんだから仕方ないだろ。
まあそれより今は東山のオヤジさんの件だ。」
小坂はこの言葉に不満を言いたかったが正しくもあるので渋々話を促す。
「それなら一度親父に会ってくれないか?
できれば親父と経営権を巡ったりして争って欲しくないし。
それに龍馬も俺が親父を優秀だと言っても投資するんだから自分の目で見てみたいだろ。」
「確かに。
今度親父さんの空いてる日があったら連絡してくれ。
その時に家に伺いますと伝えといてくれ。」
「わかった。じゃあ今日はかなり驚いたけど夕食を楽しもうか。」
もちろんそのあと小坂と東山にどうやってお金を稼いだか根掘り葉掘り聞かれたが。
それでも龍馬に金をせびったりしなかったのは2人とも龍馬を友達とにんしきしてるからだろう。
ハプニングもあったがかなり楽しい夕食会だった。