お嬢様を守るために
ユリウス視点です。
11歳のときから、毎年母様から僕に宛てての『きらびやかな世界で』の情報を書いた手紙が届けられている。16歳になった今、僕の頭には全ての情報が入っている。
マリーローズ様の事を重点的に聞いたけど、他の情報だってわかる。他のキャラクターの名前、見た目や性格、その人の過去や考えなど全てだ。
今思えば、前世の記憶でここまで教えることができる僕の母様は、すごくマニアなんだなと思う。
そのお陰でマリーローズ様の事を守れるのだからマニアでよかったと思うけど、僕の紅茶のせいでマリーローズ様は紅茶姫と呼ばれるほどの有名人になってしまった。もちろんいい意味でも悪い意味でも。
マリーローズ様のメンタルは出会ったときに比べて鋼のように強くなった。けど、そのせいで彼女は僕と紅茶が全ての世界になってしまった。婚約者の王太子に冷たくされたって「別に好きではないしどうでもいいわ」と言っていたし、マリーローズ様は全然周りの人と関わろうとしない。
社交的な関係はあっても、自分の領域に踏み込ませない。まるで心の壁があるような。傷つけられることを恐れているのだろうか。……マリーローズ様ならありえる。
けど、それではだめなんだ。乙女ゲームでは悪役令嬢なんだから、もしかしたら罪を押し付けられて死刑になってしまうかもしれない。乙女ゲームのマリーローズ様だって冤罪で死刑されたんだから。
乙女ゲームのマリーローズ様は、アルンと同い年だからと言う理由と、歴史ある侯爵家の娘だからと言う理由で婚約者に指名された。このままのお前では人の前に立てないとアルンに言われ、寝る間もおしみ4年かけて立派な令嬢になったマリーローズ様。でもその時アルンはヒロインに恋をしていた。
何の努力もしていないヒロインには味方がいて、アルンにも好かれ、努力を重ねてきたマリーローズ様には誰も味方がいない。
それまで何もしてこなかったマリーローズ様は、耐えられなくなりヒロインにいじめを始める。でもマリーローズ様は口で注意をするだけで行動に起こしてはいなかった。最終的に他の人がやったこともマリーローズ様のせいにされ、冤罪で死刑される。
それまでマリーローズ様の事が苦手だったヒロインは、それを知り自分のせいでと落ち込みアルンが励ます。そしてヒロインが王太子の婚約者に。これがアルンルートだと母様が言っていた。
それを聞いたときマリーローズ様を無駄に死なせたアルンがさらに嫌いになった。ヒロインも噂に流されていた癖に知ったあとで自分のせいと言い落ち込むのは虫がよすぎる。
そう思うのなら婚約者になんかなるなよ。
しかもマリーローズ様が死刑にならないエンドはない。アルンでなくても罪をすりつけられて死刑エンドだ。アルンは自分のルートじゃないルートでも、絶対にヒロインの友人ポジにいるから、マリーローズ様は婚約者がいるのに必要以上に一緒にいるのはどういうものかとヒロインに注意する。
一番イライラするのは、その時ヒロインが『そんな縛りで私達が仲良く出来ないなんて、マリーローズ様はひどいです!私は何と言われてもこの考えは変えません。貴女に、私達の友情は壊せません!』と言うのだ。
そのあと攻略対象の奴等が泣いているヒロインを慰める。
アルンはマリーローズ様を冷たい目で見て、『そこまで落ちたか』と言うのだ。
『今思えばとんだクソゲーだわ』と母様も言っていた。
乙女ゲームのマリーローズ様と同じ結末にしないために僕がいるんだから、そんなことがあったら僕がマリーローズ様を連れ出して僕だけのものにしてやる。あんなクソ婚約者にマリーローズ様なんか渡すものか。
さっきマリーローズ様にいきなりぶつかってきて謝りもしなかったオレンジ色の髪をした女はヒロインだろう。名前はミレイ·レッカー。一度もあった事がない僕をユリウス様とよんだミレイは母様と同じ転生者なんだろうか。……それは厄介だな。
絶対にマリーローズ様と関わらせたくない人物だ。これからも注意が必要だな。
お読みいただきありがとうございました。