学園生活の始まり
ユリウスと出会ってから時が経ち、私は14歳になった。あれから勉強も淑女教育も社交ダンスも人よりも何百倍も頑張って、周りに何を言われようとも、気にしない精神を持った。あの頃のうつむいていた私はもういないし、そこら辺の令嬢なんかには負けない自身もある。
お父様とお母様も前よりは私の事を見てくれるようになったし、ユリウスと出会って私の人生の全てが変わった。
もし、ユリウスに出会わなかったら私はどんどん歪んでいって、醜い人間になっていただろう。
12歳の時に王太子の婚約者に選ばれたけど、いつも従者がいれた紅茶を飲んでいる私が気に入らないのか、会っても会話が続かない。と言うか若干睨まれている気がする。
今もお姉様の方が評判はいいし、相変わらず私は出来損ないと言われているけど、最近は紅茶姫と呼ばれて周りからは遠巻きにされている。勿論取り巻きなんてものはいない。
まぁ、私にはユリウスと紅茶さえあればいい。逆にそれがなかったら私は今すぐ死ぬ。冗談ではなく本気で。
こんなことを考えている今も、私はユリウスの紅茶を飲んでいる。ちなみに今は国立レーデス学園にいる。レーデスと言うのはこの国の名前。なんでいるのかと言うと、私がこの学園に通うからだ。今日は入学式。
この国の貴族は、14歳になったらレーデス学園に通うと義務づけられているから嫌でも通わなくてはいけないのだ。基本貴族が通う学園だが、毎年特待生も存在して、今年は珍しく1人なんだそう。お金がある商人の息子や娘なんかも通えたりする。
「ユリウス、今日の紅茶、とても美味しいわ」
「お褒めに預かり光栄でございます。マリーローズ様」
なんだか、ユリウスは美に磨きがかかった気がする。ユリウスはいつも夜勉強をしているから、少しでも負担が減らせるようにと無理言ってユリウスも学園に通わせてもらえるようにして、さらに私と同じ学年にしてもらった。人生で一番のコネを使ったかもしれない。
普段あまり関わらないようにしているお父様だが、今回ばかりはお父様を必死で説得した。「王太子の婚約者であるお前の要望なら……考慮しよう」と最終的にお父様が折れた。
このときだけは王太子の婚約者でよかったと心から思った。でも私は学園を卒業したらすぐに王太子と結婚させられるから権力はまぁまぁある方なのかもしれない。使うことがほぼほぼ無いけど。
今年は大国である隣国の王太子が1年だけこの学園に通う予定になっていたのだが取り止めになったらしい。…なんでだろう。私は隣国の王太子を見たことがないし、王太子も1年に1度、王家のパーティーでしか姿を見せないと言っていたけど、絶句の美青年らしい。
まぁ、うちのユリウスには敵わないだろうけど。
「マリーローズ様、カモミール、もう一杯いれましょうか?」
「えぇ、お願いするわ」
「かしこまりました」
このユリウスとの会話のやり取りが好き。
紅茶をすすりながら少しずつ歩いていくと、王太子に会った。そう言えば名前を出してなかった。彼の名前はアルン·ディ·レーデス。基本無表情だけど、威圧感がすごい。
会ったからには挨拶をしないと駄目だから一旦紅茶をユリウスに渡し、笑顔で挨拶をした。
「ごきげんよう、アルン様」
「あぁ、マリーローズ。久しいな」
はい、これで会話終了~!
私は速攻ユリウスから紅茶を受け取り、一口すすった。……いつ飲んでも美味しい。とりあえず一言言ってから離れよう。
「では、また会いましょう」
「あぁ」
私がそう言って踵をかえそうとした瞬間、誰かが私にぶつかってきた。
バシャッ
「きゃっ!」
いきなりぶつかってきたのは、新入生と思われるオレンジ色の髪をした少女だった。
私の……私の紅茶が…。
私の命の源とも言える紅茶が、彼女の制服に盛大にかかってしまった。
あぁ、なんてこと。
一気に気分が沈んだ。
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