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ユリウスとの出会い


私の名前はマリーローズ·エレスディスト。現在9歳。エレスディスト侯爵家の末娘。剣術と勉強が得意なお兄様と、淑女の鑑と呼ばれているお姉様。そんな二人の妹である私は、勉強も出来ないし、淑女にもなれていない……出来損ないだ。


何事にも頑張って取り組んでいるのに、一向に上達しない。周りの人が、『エレスディスト家の落ちこぼれ』と影で呼んでいるのは知っている。


お父様やお母様も私に期待はしていないし、見向きもしない。……むしろ嫌われている気がする。使用人の人達も、私には嫌々仕えてくれている感じだ。


私に味方は誰もいない。頑張っても、頑張っても、距離は遠退いていくばかりで、私の心はどんどん歪んでいく。


お願いだから、誰か…誰か私の存在を認めて欲しい。


毎日、そんなことばかり考えている。でも今日は、珍しく少し私の気分も上がっている。

だって今日は、私専属の従者が来る日だから。本当はもっと早くに従者をつけなきゃいけないんだけど、お父様が一向につけてくれなかったから私に従者は要らないのかと思っていた。


今になって従者をつけるなんて、どういう風の吹き回しだろうか。…私の従者になる人は、私の事を認めてくれるかな。大丈夫って笑ってくれるかな。


そんなことをモヤモヤと考えながら皆の居る居間に向かった。なんかさっき侍女が今日は集まりがあるとか話していたから、多分行かないと怒られるのだろう。そんなこと初めて知ったわ。

居間に着くと、使用人は嫌々ながら扉を開けてくれた。


「やっときたのかマリーローズ」


…ほら。呼んでいないくせに、どうしてそんなことを言うんだろう。心に棘が宿る。でも、心を無にして、ひきつらないように頑張って笑った。


「遅れて申し訳ありません。お父様」


「お前は笑うことしか出来ないんだな」


見下したようにお父様が言った。私が笑わなかったら出来損ないと言って罵るのに、笑ったら笑ったで何か私に言ってくる。


……悔しい。こんなことを言ってくるお父様に、抵抗できる力が何もない無能な私が。


「…申し訳ありません」


私の選択肢は謝ることしか出来ない。


「遅れて申し訳ありません、お父様」


お姉様がしずしずと入ってきた。


「いや、いきなりシルーナを呼んだ私が悪かった」


「ありがとうございます」 


お姉様は、にっこり笑った。私にも優しくて、美しいお姉様。私も、美しく無いわけではないけど、雰囲気が違う。


こんなに素敵なお姉様なのに、憎く感じてしまうのは、私の心が黒くなっていっているからだろうか。でも、お姉様が笑っただけで、場の空気が華やかになった。私が笑っても、嫌な顔しかしないのに。


お姉様は、呼び出されていて、遅れて、私は呼ばれていないけど怒られた。完全なる理不尽だと思う。世の中は醜い。……こんなこと、9歳の私が考えることではないのに。


「父上、本題に入った方がいいかと」


「ああ、そうだな」


やっとか。早く終わらせて欲しい。終わったってすることはないけど。習い事だって少ししかないし。二人は沢山あるけど。


「マリーローズ、喜べ。お前に専属の従者が出来た。入って来なさい」


お父様がそう言うと、扉が開いて茶髪に茶眼の美少年が入ってきた。


「初めまして、マリーローズ様。これからマリーローズ様に仕えさせていただくユリウスと申します」


ユリウスは私にかしずいて手に軽くキスをした。……この王子様のような美少年が、私の従者…?


神様は私に味方したのか?と思ってしまうほど私には勿体ない従者だった。


「…マリーローズ、話は以上だ。用がないなら出ていきなさい」


お父様の冷たい言葉も気にならないほど、私はユリウスに何故か夢中になった。

私達が居間から出ていくと、ユリウスが私に話しかけてきた。


「マリーローズ様、嫌なら答えて頂かなくて結構なのですが、いつもあのような感じなのですか?」


まぁ、初めてこの光景を見た人は誰もがそう思うだろう。


「そうです。いつものことなので、気にして頂かなくて結構ですよ」


私はとりあえず笑った。そんな私を、ユリウスは睨んだ。何かしてしまったんだろうか。はぁ、何しても駄目だなぁ、…私。


「マリーローズ様は主人なのに、どうして僕に敬語などをつかうのですか。それに、あんな扱いをされて、どうして笑っていられるのですか?」


そんなことを言われたのは初めてで、どうしていいのかが分からなかった。でも、私が悪かったのなら、謝らないといけない。でなければ見捨てられてしまう。見捨てられてしまうのが、…とても怖い。


「ご、ごめんなさい、私…あの、悪いところがあるのなら直しますから…お願いです…見捨て…ないで」


「え……?えっと…」


ユリウスは、困ったような顔をした。もう、駄目だ。弱い私は耐えきれなくなって部屋に走った。


「マリーローズ様!?」


ああ、ユリウスが追ってくる。何でだろう。私みたいな子の従者だから、嫌々追いかけてくれているだけか。

迷惑をかけさせて、ごめんなさい。私が主人なんかでごめんなさい。


部屋に入った私は、誰も入って来られないように鍵をかけた。




また新連載です。お読みいただきありがとうございました!感想や質問などありましたら是非教えてください。

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