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この世界に訪れて

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人と人はきっと繋がって生きている。

俺がそう思った。ならきっと繋がっているんだ。

俺の名前は……

目の前に大きな岩が……あぁそうか。うん。

あぁ、死ぬんだな。

そう思った。




~~~



次に目が覚める時が来るとは思っていなかった。

見えたのはこれまでと全く違った世界。

緑が豊かで大きな樹の下に気が付けばいたのだ。

でもどうしてこんなところにいるのか普通に傷だらけなはず、満身創痍になっているだろう。

体は普通に動くし、痛みだってない。適当に見繕った変なロゴのTシャツにジーパンで私服ついさっき大きな岩にぶつかったときと同じだ。

ならば俺は天国に来たのではないかと思った。

そう、俺は……

「あのー、すみません」

そこに少女の声が聞こえた。

髪の色は赤色で、目の色も赤、目がぱっつり開いているスタイルも良好だ。

なんというか、やはり綺麗な女の子なんだなって思う。

「あぁ」

適当すぎる返事に、彼女はどう思ったのだろうか。

「ずいぶん変わった格好をしているのですね」

そう思うのも当然だろう、彼女の服装はかわいらしいドレスとマント、まさしく異国の女の子なのだ。

「いや、俺から見れば君が変わった格好に見えるよ」

頭を掻きながら言った。

「もしかして、遠くの国から来た人ですか? そうでしたらすごいですよね!」

「きっと、そのまさかだと思うよ。俺、ここがどこだかさっぱりわからないから」

「そうですか、ここはマルクコロンブル王国の草原ですね。そうだ! あなたは冒険者ですか?」

ここは本当に地球なのかと思ったが、もうこの際どうでもいいか。ゲームに出てきそうな地名だな。

「マルクコロンブル……王国とな」

「初耳みたいな顔していますね、もしかして、あなたは……」

何か疑うような目にぞくりと来てしまう。そんな目で俺を見てはいけないよ。

「……それと。私の名前はアイーデ・アーイエ。職業はパンチウィザードをやってます。気軽にアイーデと呼んでくれると嬉しいです」

パンチウィザードってなんだ。殴る魔術師?

「そうだ、俺の名前はーー」

その時、草むらから物影が。

「きゃあー!」

オオカミの大きい怪物だ。普通に見るやつよりも断然大きいから日本でそういう大会やったら絶対に優勝できるだろう。

アイーデはやはり女の子だ。声を上げている。パンチウィザードというのが少し気になったが棒立ちしているとどう考えても殺されてしまう。なんかこれは違うからオオカミに戦いの構えをとる。

「あなたも逃げないと! あれはマルクコロンブルの死神達として有名なキングファンガーズの手下! 私達ウィザードを何人も怪我してきました! 私では太刀打ちできません! 怪我しますから! 痛いですよ!」

逃げようとすると、キングファンガーズの手下がもう一体増える。

「やばいだろ、これ、二体もいるぞキングファンガーズの手下が!」

二体が同時に俺に向かって襲い掛かってくる。ちょうど折れた枝があったので俺は力を入れてキングファンガーズの手下……長いな、手下を殴る。

「喰らえ! 倒してやるぞ!」

枝が折れるとその折れたやつが手下に刺さって痛そうにしていた。

「ぁあ! 今のめっちゃ痛そうですよ……絶対に痛い」

アイーデは耳をふさいで現実から目を背けていた。

「もう一体! あとはお前だ! お前も殴ってやるぞ!」

そうすると怪我してない手下のほうはビビったのかすぐに逃げていく。結局キングファンガーズはなんなんだ。手下にくらい名前つけてやれよ。

「はぁ、助かった」

「……」

アイーデは俺を見ていた。その眼の色は遠い過去、そう、俺があの時……

「すごい! あのキングファンガーズの手下が恐怖で逃げ出すなんて、あなたは一体何者なんですか」

敬意を見せてもらえたのだ。

「そうだな、俺は……」

「私と一緒に冒険しませんか!」

そして俺の目の前に、経験値みたいなものが増えたのであった。

(キングファンガーズの手下撃破 習得経験値多分86くらい)

ずいぶん中途半端だな。




~~~




マルクコロンブル王国の街に俺とアイーデは訪れる。

どうやらここはパンランデ村、すごく商売繁盛がモットーの店が多いらしい、少し錆びて臭い剣とか、ピカピカに磨いたガラス製の盾とかも売っているらしい。

俺はこの街に、いや、ここに来てから薄々気づいていたが、ここは元居た世界ではない。

ならばここは、マルクコロンブル王国とはなんなのか、

どうして俺は死ねたと思ったらここに来ていたのか、そんな疑問がたくさんある。

「アイーデは、冒険者なんだよな。武器とかには詳しいのか? 教えてくれると嬉しいが」

「まぁ一応は、あなたはこんなに強いのにどうしてなんも知識がないのですか?」

不思議そうな顔をされる。

「だから俺は……」

「おいおい、アイーデじゃないか、私の愛しいアイーデよ」

そこには高そうなキラキラした鎧を着た男がアイーデに話をかけてくる。

「いったいどこをほっつき歩いていたのか」

「ゲトラ!」

ゲトラという男は売ったら結構金になりそうな兜を外して金色の髪が見える。鎧を見た時から思っていたがいいとこ育ちのボンボンとかその辺なんだろうきっと。

「私の愛しいアイーデよ。どうしてそんな顔をするのだい? それに隣にいるちんけな男は誰だ。変な格好をして私の愛しいアイーデはこんな男がタイプなのか」

俺に矛先が向いた。これは喧嘩を売られているな!

「悪いが俺はーー」

「貴様に聞いてなどいない!」

まただ。流石にいらいらしてくる。

「ふざけんな! 名誉棄損だ! なんで俺のことそんな悪く言うんだよ! 見た目で人を判断する! だから金髪は!」

言ってやった。

「……いや、貴様も今金髪とかと罵ったではないか」

「あ」

つい声が漏れてしまう。

「確かに」

アイーデも同じようにパッっとした顔になる。

今日、口喧嘩に負けました。

空気が一瞬死ぬ。

「アイーデ、行くぞ! こんな奴なんか放っておけ!」

しかし、アイーデは拒否した。

「いやです! 私はパンチウィザードになりたくて冒険者になりました。確かに私の家は貧しくてゲトラがいなかったら冒険者になれたか分からなかったでしょう。でも、この人はあのキングファンガーズの手下を二人痛い目に合わせて感じたのです!」

「俺ならキングファンガーズの手下を四人くらい左足の小指と右手の親指くらいで泣かせられる!」

手下ずいぶん弱かったんだな。日本のオオカミのそういう大会で優勝できるか分からないな。

「そもそも俺はこのバンランデ村の村長の息子の友達として生まれて仲良くなって、お金貰ってマルクコロンブルの公認騎士として認められた。それがどういう意味が分からない貴様でもない」

全く分からねえよ。村長の友達ってそれ一般人じゃん。なのにこんな鎧つけてるのは普通に努力したのかな。

「……この人、この国の人じゃないみたいで。でも、結構強いんです!」

「貴様ぁ! アイーデに色目を使ったな! 決闘だ! 決闘! 貴様を許すには決闘で痛めつけるしかないのだ!」



~~~


で、

俺と名前なんだっけ……ゲトラが喧嘩をすることになってしまったのだ。

結構広い決闘場で歓声とかブーイングとか飛んでいる。

「泣かせろー!」「ゴミがー!」「小指の爪剥がれろ!」

「ルールを確認しておく、使用武器は剣か武器。魔法の使用は危ないし痛いから禁止する」

剣と武器って何が違うんだ?

「ファイ!」

審判かレフェリーかなんか戦闘の合図。つまり喧嘩の始まりだ。

「喰らえ! 剣星流星剣!」

ゲトラは剣を振り回す。

「危ないだろ! 剣を振り回すな!」

ゲトラの剣筋は綺麗で切られたら血が出て痛い。

そもそも一体俺はどうして戦っているのか。

そう、それはあの時……

「隙を見せすぎだぞ!」

剣が躱した。

そもそも俺は武器も防具も持っていないのに、なんでゲトラはオークションで出したら売れそうな剣と子供にクリスマスプレゼントしたら喜ばれる鎧。こんなの勝ち目ないだろ!

「泣かせー!」「土下座したら許されるんじゃねぇか!」

そんな声に、俺は負けたくなかった。

俺は一歩前に踏み出す。

「喰らえ! そして震えろ!」

「武器を持たない貴様に私が倒せるわけない。私は伝説のドラゴンに擦り傷をつけた男だぞ!」

剣で切られるフェイントをかけられて、腹を蹴り飛ばされる。痛みは我慢できた。

「どうだ。恐れたか! 痛かろう! 所詮武器のない貴様は変な男だ。その恰好のまま変な負け方で泣いてしまえ!」

俺は負けてしまうのか。武器、武器がないから。

「武器がない……魔法も使えない。こんな俺は……無力なのか」

「魔法も使えないのかー情けねー」「武器もないとかもうマジ弱いじゃんーハエ男!」

そんな声が聞こえた。

「魔法っていうのは、念じれば使える俺……いや私がすごいってことだ。ファイアーフレアーバーニング!」

炎が巻き起こり、決闘場の土を焼いた。よし勝てる!

「あっ! 今魔法使った危ないから反則だ!」

俺が言うとすぐにゲトラが反論する。

「これは決闘だ。貴様が泣くまで戦いは終わらない!」

「ふざけるな……!」

俺は起き上がる。

魔法の使用が禁止なのに魔法を使うやつだ。

それにアイーデの意思に背く言動……こんな奴のアイーデを任せるわけにはいかない!

「アイーデを! それにこれ以上魔法使われると危ないんだ!」

その時、俺の心が飛躍した。心とともに身体も跳躍。

身体は軽く、ゲトラの前に一瞬で近づいた。

「お前、今何をした!」

「これが! あの人の強いところ! どんなピンチにも絶対に諦めない。どんな否定的な声すら気にしないこの精神力!」

アイーデは俺を信じてくれた、ならば俺も負けるわけには行かなくなってしまったのだ。

ゲトラは反射的に剣を振るうも、当たったら危ないから躱して、鎧にそのままKOBUSHIを叩き込もうとする。

「馬鹿な! この鎧は暗黒中間管理職ハイパーダークの拳ほどの強さでないと壊されな! っが!」

しかし、その鎧は砕け散る。

「ハイパーダークの拳を超えたああああ!」

ゲトラの叫び。

更にもう一度、脛に蹴りを何度か入れる。

「痛い! うわ! 痛いから! やめて! 痛い! 怪我するから! ほんとやめろ」

ゲトラは怪我をしそうになり、後ろに下がる。

「とどめだ!」

俺は思い切りゲトラに向かい怒りの張り手を食らわせる。

「うわっ! 無念……」

ゲトラは倒れる。

「ゲトラが負けたーーーーーーー!」

観客はブーイングや賭博やってたのかマジで俺に切れるやつもいた。

そう、これがこの世界に来て、俺が初めて倒した男の名前はゲトラであった。

(経験値が入りました、たぶん9くらいです)

いつレベルアップするの?


~~~


っで、決闘は終わり鼻水ついたティッシュのごみとか投げつけられ心が少し落ちこむも、アイーデが来てくれた。

「ありがとうございます。ゲトラは負けました。負けて嫌な思いをして、私にもう自由に生きろとだけ言って、マルクコロンブル王国を去っていったそうです」

もう多分出てこないだろうな。ゲトラ。たぶん忘れちまうぜ。

「そうなのか、嫌な思いしたんだな」

「それで、あなたは私と冒険してくれますか? こんな貧乏でお金のないパンチウィザードですが、あなたの力はゲトラを倒した瞬間からマルクコロンブル王国でかなり強い部類になりました……」

そんなにゲトラは強かったのか。

「だからこそ、そんなあなただかこそ、一緒に行きたいのです」

そして俺のほうを見てかわいらしい笑みを浮かべた。

「私と一緒に冒険しましょう。そして……きれいな世界を見ていきましょう」

俺は考える間もなく頷いた。

そして俺は一つの真実に気づいてしまった。

俺……名乗れてないじゃん。

そう、これは冒険の物語、俺がこれから進んでいく、天気予報みたいな物語だ。

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