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1.罪


「ごめん…ごめんね…」


身体中熱くて、気持ち悪くて、薄れていく意識の中で謝罪の声だけが静まり返った森に反響している。


俺を殺そうとしておきながら、謝るのかよ。そんなんじゃ憎めないよ。だって俺はお前のこと、嫌いじゃないから。

この数日でお前が、悪いやつじゃないってことぐらい分かってるから。

お前だって一緒に遊んで笑ってたじゃんか。

なのに、どうして―――。


どうして泣きながら俺の首を絞めるんだ。

本当はやりたくないって顔に書いてある。

くしゃくしゃに歪んだ顔を見るのは辛い。

理由を教えてくれ。

じゃないと、逝けない。


伝えたいことが無情にも消え去っていくことで、もうすぐ自分は死ぬんだと理解した。


泣きながら謝るコイツに対して怒りでも悲しみでもなく、ただ疑問だけが浮かんでは消えていく。

仲良くなったばかりなのに。

また来年会おうと、約束したのに。

別れ際の挨拶を2人でって、それだから俺は。

1人でこの森に来たのに。



たった数日でここまで心を許せる奴がいるなんてという驚きと、コイツなら俺のことを話しても友だちのように接してくれるかもしれないと距離を測っていた。


なぁ、俺を殺してお前に得、ある?

それとも俺の正体知ってたか?

でもさ、それは悪手だ。

お前は逃げられない。

俺はそういう立場だから。

話そうかなって思ったけど、話せなかったな。

それだけはごめん。

身分を偽って遊べる相手って貴重だったんだ。

あんなに走って喋って遊んだのなんて初めてだった。

そう、お前は俺の初めての友達だったんだ。


お前には理由があって、だから俺は死ぬ。

本当は嫌だけどこれはもう仕方ない。

それは紛れもない事実だから。


でもさ、お前、俺を殺したっていう罪を背負いながら、生きられるのか?

お前みたいな優しいやつが、そんなことできるのか?

まぁ殺されそうな立場で言えることじゃないけど。


お前に殺されそうなのに、どうしても俺は、お前を救いたいみたいだ。


たった七日。

一緒にいた日々が俺にはかけがえのない宝物だったから。

―――、俺を殺しても死なないでくれ。

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