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巌窟の外

「さて、嬢ちゃん達にはこれを着て貰うかね」


 村の入り口近く、ティヴァはそう言って魔族達に大きなローブを手渡した。簡素なものだが、体を覆う大きさのそれを彼女達は肩にかけていく。すると有翼族は背中の翼が殆ど見えなくなった。人魚と蛇人の二人は、まるでスカートのようにその腰から下が覆われる。


「悪いが、嬢ちゃん達には村に入る際はこれを着ていてくれ。人魚や蛇人に友好的なのはあくまで東国(アンリ)周辺だけなんでな。この辺りはまだ水棲の魔族にそこまで良い印象を持ってない。小さな村だし、バレても大きく問題にはならんだろうけどな……まあ、念のためってやつだ」


 確かに、サティリス達がいる東国周辺においては人魚族との友好があったというのは聞いていたので心配はしていなかったのだが、やはりというか、ここはまだ中央大陸にほど近い場所故の事なのだろう。東国領地であるために人間至上主義ではないのが救いか。


「動きにくいのう……可愛くもないのう……」


 シュリファパスが渋い顔をしながら、自分の腰回りの布をつまみ上げている。あまりデザイン性に富んだものでは無く、本当にただの無地のスカートの様なものであるので可愛くないのは仕方ない。


「あら、それなら……」


 そんなシュリファパスに、アソルがティヴァからもう一枚布を貰うと、それをシュリファパスの腰回りに少しよれを作りながら巻いていく。するとうまい具合にフリルのようになり、さっきよりもスカートらしくなった。


「ほら、さっきより可愛くなったでしょ?」


「ほう! 中々やるではないか。流石だな、龍の娘」


 気に入ったらしいシュリファパスはクルクルと回りながら、アソルと笑い合っている。



 ……良い感じであるのだが、気になることがある。ネムル達はさほど翼は目立たなくなっているし、シュリファパスに至っては見た目は完全に可憐な女の子だ。しかしシラシュィはその長い蛇の部分を隠し切れていない。流石にスカートでどうこうできる体格ではない。


「シラシュィはどうするんだ? 流石に隠し切れてないけど……」


 ティヴァに思った事をそのまま伝えると、彼は目を丸くしながら、いつものアメリカンな肩のすくめかたをする。なんだと思っていると、彼は俺の肩をポンと叩き、川下りの時にも見せた真っ白な歯を再び見せつけてくれた。


「…………」


 そこはかとなく、嫌な予感しかしない。





 入り口にいる見張りの村人にティヴァが東国騎士団の証を見せ、そこから村の中に入り少しすると、なだらかな坂を下る形で村の中央へと向かう。

 しかし、まだ少し、ほんの数百メートルほど歩ったくらいで俺の膝は既に悲鳴を上げつつあった。


「……ぜえ、ぜえ……」


 汗を滲ませながら、俺は村の中にある、村人に案内された宿へと足を進める。もとい引きずる。

 というのも、俺は今とても重――くなどない羽根のように軽いが何故か膝が悲鳴を上げたくなる重量の荷物を運んでいるからだ。


「……大丈夫ですか〜?」


 耳元で、シラシュィの囁き声がする。いや、全く重くなどない。全体で考えれば人間三人分ほどはあってもおかしく無いだろうが、重くなどない。


「だい……じょうぶ……!」


「そうですか〜」


 ここで重いとか口走ろうものなら男が廃る。半分ティヴァに煽られて意地になってる部分もあるが、絶対に重いなどと言ってやるものか。羽根のように軽くてしょうがないくらいだ。本当に。


 どうしてこんな状況になっているのかと言うと、ティヴァの発案によりシラシュィを一旦荷物にみたてて、宿屋に運んでしまおうという事になったからだ。彼女に全身を丸めてもらい、おんぶする様にして俺が先頭。ティヴァが後ろの蛇部分を支えるという形でだ。

 勿論、他の仲間も手伝ってはいるが、ティヴァと俺二人での荷物持ちとなる。サティリスはティヴァが元々持っていた荷物を預かり、他の仲間は皆そこまで重いものを持てるわけではないし魔族達は何人か身動きのしにくいローブなので、必然と俺が一番重量のかかる背負い係となったのだ。

 シラシュィに覆いかぶさっている布には「騎士団戦利品」と書かれた札を吊るしてあり、村人が容易に触れにくくしてある。俺たちに台車があるわけでは無く、また村の台車を持ってきてもらっても村人がシラシュィを乗せるのを手伝ってしまう可能性があるため、こうして人力で運ぶこととなったのだ。


「大丈夫? シドウ、汗すごいよ?」


 隣で一応シラシュィを支えてくれているアトスが俺の顔を見て心配そうにしている。


「大丈夫だ、アトスネーヴ。王たる者、女の一人くらい担げて当然だろう?」


 アトスの横から、ティヴァの大剣を預かっているサティリスが、悪戯っぽい笑みを浮かべながら俺を見てくる。一体なんの仕返しだというのか。俺は怖がっていた彼女の為に手を差し出したというのに。


「……頭部に強い衝撃を加えると記憶を失うそうだな……」


「やめて……まだ何も言ってない……」


 あいも変わらず表情だけで悟られた俺は、なんとか足を上げながら、村中央の広場まで頑張った。最初、シラシュィをおぶった時には背中に柔らかな感触や彼女の長い髪のいい匂いに少し役得感を味わっていたのだが、今ではそんなことを楽しむ余裕など無いくらいに足が辛い。奴隷の時などこれ以上であったろうに……どうしてか人間というものは、状況によって結構変わるものだ。


 何事かと遠巻きに村人達に見られながら、なんとか中央広間にある宿……と言っても騎士団が利用する時のみに解放される、誰も住んでいない民家ではあるが、無事シラシュィを運ぶことができた。

 だからと言って、勢いよく彼女を下すことなど出来るわけはなく、そのまま最後の一踏ん張りでしっかりと担いだまま民家の扉を開けて入った。


「あら、結構広くて綺麗じゃない」


 アソルが民家に入ると、周りを見渡して感想を言う。彼女の言うとおり、確かに人が住んでいないにも関わらず綺麗にされている。よくあるログハウス的な構造の家は二階建てで、木の香りとかすかな甘い花の匂いが鼻腔をくすぐる。芳しい木の香りは杉に似ているだろうか。この世界にも杉があるのかは分からないが、懐かしい感じのする匂いだ。


「さて、坊主。シラシュィちゃんを二階に運ぶぞ」


「…………」


 なんのことは無しにティヴァが言う。彼もシラシュィを支えてきた筈だが、全く息切れしていないどころか元気そのものだ。


「おいおい、まさかお姫様を床に降ろす気か? お姫様はベッドまで運ぶのが常識だろ?」


 にかっと笑うティヴァに、俺ももうヤケになり、同じような笑顔を作った。


「……あ、当たり前だろ?」


 精一杯の笑顔は、確実に引き攣っていた。






 二階に到着した。やっと到着した。

 シラシュィをゆっくりとベッドに降ろす。と言っても彼女は身体が長いので最初に足、というか蛇の部分をベッドへ横たわらせ、最後に俺が彼女を背負ったままベッドに腰掛ける形になった。


「し、シラシュィ……着いたよ……」


 息が切れそうになってるが、それを気合いで隠しながら彼女に手を離す様に伝える。いや、役得感はあったけど疲労感もすごい。女の子を運ぶのって大変だ。

 ちなみにしばらく大人しかったナーゲルは脚を攣ったため隣の部屋でサティリスとアトスにマッサージを受けている。


 なんとか腰を落とし、彼女の腕を首元から外そうと手を伸ばした、そんな俺の前に、水の入った木のコップが差し出された。


「…………ぅ」


 どうやらネムルが水を下から持ってきてくれていた様で、小さく声を出している。


「あ、ありがと。助かるよ」


 正直喉が渇いて仕方なかったので助かった。ナイスなタイミングでの給水に感謝をしながら、一気に飲み干す。水道水と違い、独特の鉄臭さが無く、滑らかと言うと変だが、するりと喉を通る水に全身を癒される気分になる。


「――ぷはっ!」


 喉を潤し、一息ついた。もう一度ネムルにお礼を言いながらコップを返す。

 さて、この後はこの村に一泊しつつ、保存食や旅の準備、そしてこちらに向かってきている筈の東国騎士の馬車を借り受け、途中いくつかの村や町を経由しながら東国の王都であるアンリを目指す。という手筈になっている。

 この後は主に休憩と買い出しになり、外の世界を知らない俺はそれについて行って、色々と見て学ぼうと思っている。村の文明レベルや通貨、他にも食生活や料理のタイプなど、知りたい事が結構ある。なので俺も一息ついたし、行動を開始しようと思うのだが……。


「あの、シラシュィ? 早く離れてくれると助かるんだけど……」


 さっきからシラシュィが俺の首に手を回したまま動かない。背中の柔らかい感触や甘やかな香りを再び意識出来るくらいまで体力も回復しているので、あまりくっつかれると動悸が激しくなってくる。買い出しにも行きたいし、そろそろ離してくれないかと、横目で俺の肩に顎を乗せている彼女を見やる。

 しかし問いかけるも返事がない。腕から力を抜く気配すらなく、余りにも俺の背中でじっとしているので何処か運んでる途中に何処か痛めてしまったのかと少し焦ったが、そんなことは無く、規則正しく呼吸をしていた。


「……すぅー……すぅー……」


 呼吸というか、寝息を立てていた。


「あの……シラシュィさん?」


 俺の首に回っている彼女の手をトントンと叩く。反応無し。

 今度は顔に被っている布を取り払ったが、やっぱりそこにあるのはとても安らかな、幸せそうな顔でよだれを垂らしているシラシュィの顔があった。


「――ナーゲルのケアが終わったぞ。そっちは準備できて――?」


 呆気にとられていると、部屋のドアを開けてサティリスとアトスが、ナーゲルのいる隣の部屋からこっちに来た。未だにシラシュィを下ろしていない俺に少し怪訝な顔になるサティリスとリスのように頬を小さく膨らますアトス。そんな二人だが、シラシュィの寝顔を見ると納得したように頷いた。

 

「……村の中央広場までは起きていたと思ったが」


 サティリスが近づいてきて、シラシュィの顔を覗き込む。彼女の言う通り、シラシュィは中央広場くらい、つまりこの宿屋の前くらいまでは起きてた筈なのだ。「大丈夫ですか〜」と、聞いてきていた筈なのだ。


「寝つきがいいのね」


 アソルはずっと部屋の隅の椅子に腰掛けており、俺たちの様子を見て笑っている。

 いや、確かにこの状況は微笑ましい限りなのだが、いかんせんこのままでは俺が身動き取れなくなってしまう。ティヴァはもう彼女を降ろした後は下でこの家の管理人と何やら話しているらしい。俺一人では彼女を持ち上げることもできず、何とか起きてもらうしかないのだが、さっきから腕をつついたりタップしたりしても全く効果がない。どころか徐々に俺の首が絞まってきた。


「おーい。何をやっとるんだ若造ぅ! もう妾達は準備が終わっているぞ!」


 そんなことをしていると、下からティヴァとシュリファパスが空いているドアから顔だけを出してきた。すると状況を見て納得したのか、あー、なんて言っている。

 シュリファパスでもティヴァでもいいので、起こすのを手伝ってくれないかと助けを求めようとした時、俺が声を出す前にシュリファパスはドアを閉めてしまった。


「いや、手伝ってくれって!」


 去って行く二人に声をかけると、またドアを開いて顔だけ出したシュリファパスが現れた。


「別に小僧がいなくとも買い出しくらい出来るわ。そこでそうしておっても問題ない」


「買い出しの是非じゃ無く俺が困るんだけど……」


 これからシラシュィが起きるまでこの背中の感触を味わい続けると言うのは、こう、思春期を過ぎたとはいえ十代の男には辛いものがあるというか。

 などと、女性も多いこの場で言えるはずもなく、口ごもってしまう。アトスと違って、明らかに女性的な部分がある人の感触に慣れていない。彼女を起こして、俺も買い出しに行きたい。


「疲れておるんじゃろうて。暫く身体を貸してやるくらいの甲斐性見せんか。男じゃろ」


「うぐ……」


 そう言われると何も言えなくなる。いや、むしろ男だからこそ困っているわけでもあるのだが。

 色々と逡巡していると、シュリファパスはもう既にドアの向こうから居なくなっていた。するとそこに残っていたティヴァが、こちらに無言で笑顔を送ると彼女を追いかけて行ってしまった。


「ま、シュリファパス殿のいうとおりだな。頑張ってくれ。さあ、アトスネーヴ。私たちは食材を調達しに行くぞ」


 サティリスも一言言うと、アトスの手を引いてそのまま彼らの後を追ってしまった。部屋を出て行く前に「変なことはするなよ」と念だけ押して視界から消えた。アトスはアトスでこちらをチラチラと心配そうに見ながら、半ば引きずられるようにして連れていかれてしまった。


「――――」


 アソルを見ると、彼女も立ち上がり「ごめんなさいね、王様。私はナーゲルさんの脚の様子を見てこなくちゃいけないから……でも、変なことする時は呼んだちょうだい? いつでもいいわよ?」と、色っぽい声を耳元に囁いていった彼女は妖艶な笑顔を浮かべ、そのまま隣の部屋へと消えていった。


 ネムルはじっとこちらを見ている。彼女に手伝ってもらえるだろうか。この中々目を覚まさない蛇のお姫様をどうにか起こしてくれないだろうか。


「ネムル。下で夕飯の下準備をしてしまおう」


 目線で訴え続けたが、ドアから顔を出した有翼族のお供に連れていかれた。


「…………」


 部屋に残ったのは俺一人。正確には背中のシラシュィも入れて二人だが、さっきから腕を叩いても全く起きる気配がない。試しに身体をゆらゆらと振って見るが、全く効果が見られなかった。少し寝苦しそうにするとか、起きかけるといったことも微塵もなく、より深く寝息を立てるだけだった。揺り籠のつもりでやったのではないのだが、彼女にはそうとられたようだ。


「起きてくださーい」


 もうこうなったら最終手段だと、シラシュィの頬をぺちぺちと軽く叩いて見た。すると少しだけ反応が返ってきたが、それもすぐに安らかな寝顔へと変わってしまう。流石にこれ以上強く叩くのはどうかとも思うので、そのまま頬をぺちぺちとし続けていた。その時――。


 ぱく――。


 迷惑そうな顔になりつつあったシラシュィは、何を思ったのか、何かの夢でも見ているのか、言ってしまえばカエルを捕食する蛇のような素早い動きで、俺の指二本を咥えてしまった。


「え――」


 呆気にとられていると、人差し指と中指がどんどん彼女の口の中の、かなり奥の方へと飲み込まれて行く。

 それこそ蛇が獲物に食らいつくような素早さに避けられるはずもなく、俺はそのまま結構な力で飲み込もうとする彼女に対抗しようと指に力を入れる。

 しかし、指には彼女の蛇のような細く長い舌がぐるりと絡まり、しっかりと絡め取ってしまっているようだ。口の中なので見えないが、指に伝わる感触からありありと理解できてしまう。

 痛くなど無く、むしろヌルヌルとした舌が、ピチャピチャと音を立てて俺の指を這い回る感触は言い様のない、背筋を撫でつけるような感覚を味合わせてくれる。決して不快と言えないその感触に、俺は手に力を入れられなくなってしまった。


「ちょ――シラシュィ?! 何やってんの?!」


 そう言っては見るが、彼女には届かない。というかここまで激しく舌が動いているのに寝ているというのか、この少女は! さらに寝ぼけているのか、腕に力を込めて俺の背中に身体を押し当ててくる。幸せそうな寝顔を浮かべたままで。

 ざらりとした舌が指を這い回る。人であればえづいてしまうような深さまで指が入っているはずだが、蛇だからか、全く苦しくなさそうに俺の指を頬張っている。赤ん坊がおしゃぶりをしているように、穏やかな顔のまま、シラシュィは俺の指をねぶり回す。


「流石に起きて! ダメだって!」


 結構大きな声で言っているつもりだが、それでも彼女は起きない。むしろその蛇の体をくねらせて、終いには俺の脚や腹部にからめてしまった。

 締め付けは緩く、痛くはないが決して剥がせない。そのままベッドに押し倒され、まるで抱き枕のような状態にされる。脚の間や脇の下などにスルスルと蛇の体が纏わり付いて行く。もう一人の力で抜け出すことなどできないまでに絡め取られてしまった。


「シラシュィ?! シラシュィさん?!」


 呼びかけるが、寝言で「は〜い」と返ってくるだけで一向に起きない。彼女の体に密着するように巻き取られているおかげで、背中に感じていた柔らかな感触は、服越しにでもはっきりと分かってしまうくらいにまで押し付けられていた。二の腕や人でいう太ももあたりの感触も、負けず劣らず柔らかく、男として抵抗する意思がどんどん弱くなってしまう。抵抗しようとはするが、何故か力が入らない。


「助け……」


 大声を上げようとして気づく。今この状況を見られたらどうなるか。襲われているようにしか見えないが、それでも、俺は男でシラシュィは女の子だ。おそらく折半とはいかないだろう。というか、この状況を人に見られる方が俺は――。


「――――」


 声を上げるか上げないかの葛藤の中、ふと気配を感じドアをみやると、そこにはサティリスがいつのまにか立っていた。


「――――」


「……お早い、お帰りで……?」


「――――」


「いや、違うんだって。訳を聞いてくれ。話はそれからだ」


 無表情で見つめてくる彼女の氷のような眼光に耐えきれず目をそらす。未だぺろぺろと俺の指を舐めているシラシュィは幸せそうに寝ているが。


「――はぁ。忘れ物を取りに戻ってきたら……」


 頭を軽く抑えて溜息をついたサティリスは、こちらに近寄ってくると、腰に差した剣の柄と手甲を打ち合わせて甲高い音を出した。するとシラシュィの舌の動きがピタッと止まり、「ふぇ?」という可愛らしい声と共にその目をやっと開いてくれた。


「……蛇人族はこういう高音を聞き取りやすいらしい。次からは気を付けろよ」


 サティリスはもう一度溜息をつきつつ、シラシュィの肩を揺すって覚醒させた。シラシュィも自分が寝ぼけて何をしていたのかを理解したようで、真っ赤な顔をして俺の指から口を離していった。


 ……ねとーっとした唾液が、彼女の口元から糸を引いている。その扇情的な光景に目を逸らしてどうにか対抗していると、シラシュィは自分が被っていた布で俺の指を拭いてくれた。


「えっと、ごめんなさい〜。寝ボケちゃってたみたいで……」


 えへへ、と笑いながら恥ずかしそうに俺の指をふいていく。こっちもまあ、悪い経験ではなかったから強く叱るなどはしない。可愛いもんじゃないか。寝ぼけてしまった割には少し激しかったが……うん。俺は許す。


「――――」


 


サティリスがその髪色のような氷の目線を俺に向けていた。やっぱり俺は表情に出やすい質らしい。気を付けよう。

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